20080415 日本経済新聞 朝刊

 福田康夫首相は十四日、産科や小児科の医師不足で不備が目立つ救急医療体制の改善策づくりを急ぐと表明した。政府が七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の対応で強い批判を浴び、失地回復に乗り出した。政策の財源をどう確保するかなど不透明な点もまだ多い。年金に続き、医療に対する国民の不信増大を防ぐメドは立っていない。
 「早急に手をつけなければならない」。首相は国立成育医療センター(東京都世田谷区)を視察した後、記者団にこう語り、来月中に救急医療体制の強化策を打ち出す方針を表明した。
 救急搬送システムの整備など、政策の実行には財源が必要。首相はこの点について同日夜、首相官邸で記者団に「どういうふうなことができるか、色々工夫してまいります」と強調。二〇〇六年の「骨太の方針」に盛った歳出・歳入一体改革の「基本方針は変えない」と繰り返した。
 だが、厚生労働省内には社会保障費の自然増を年間二千二百億円削減する歳出改革について「もう限界だ」との声があがる。同省内では首相が来年度からの一般財源化を打ち出した道路特定財源について「数千億円規模で社会保障に回ってくる公算がある」と期待する見方もある。首相方針を具体化する段階で、財源論に火が付くのは避けられない情勢だ。
 首相が唐突ともいえるタイミングで対策をアピールした背景には、年金記録問題や後期高齢者医療制度など社会保障を巡る不手際が政権運営の火種になりつつあるとの危機感があるとみられる。
 特に、十五日に年金から保険料の天引きが始まる後期高齢者医療制度を巡っては野党や世論の反発が強い。政府の周知不足から「四月以降、負担が急に重くなるのでは」と高齢者の不安を増幅し、全国の自治体の窓口には問い合わせが殺到した。
 政府は制度開始と同時に「長寿医療制度」に名称を変更し、広報体制強化に向け舛添要一厚生労働相を中心とする実施本部を新設したが、対応は後手に回っている。
 与党内では天引き開始と同じ日に告示する衆院山口2区補欠選挙に影響するとの見方も浮上。自民党の伊吹文明幹事長も十四日の記者会見で「わかりやすい説明が不十分じゃないか」と述べた。
 首相は同日の視察後、後期高齢者医療制度について「もう少し早く段取りよく十分な説明をすべきだった。反省している」と記者団に述べ、政府の対応を陳謝した。
 今後、後期高齢者医療制度の対応改善と救急医療体制の強化で、社会保障の信頼回復を図るが、具体策の検討はこれから。実効性は未知数だ。

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