20080330 日本経済新聞 朝刊
二〇〇七年度の公的年金の運用成績が五年ぶりにマイナスになると聞きました。私たちの大切な年金資産はどういうふうに運用されているのでしょうか。
国民年金や厚生年金などの公的年金は、国民が高齢者や障害者になったとき、本人やその家族の生活を守るために国がお金を支給する制度です。現役世代や企業から集めた保険料の一部は現在の年金給付に充て、残りは将来の給付に備えて積み立てています。
年金の積立資産は約百五十兆円と世界最大です。資産を増やすために運用していますが、専門能力が必要なので年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に任せています。厚生労働相が示した運用の中期目標をもとに同法人が具体的な運用計画を決め、信託銀行や投資顧問会社などに運用を委託しています。
二〇〇〇年度までは積立金は旧大蔵省資金運用部(現在の財政融資資金)に全額預託し、政府系の特殊法人への低利融資などに回していました。融資は国の保証付きのため貸し倒れの懸念はありませんが、利回りは低めでした。その後、特殊法人の肥大化への批判から預託義務が廃止され、GPIFの前身、年金資金運用基金による自主運用が始まりました。
財政融資資金への預託金は徐々に償還されてGPIFの手元に戻っています。〇八年度末には全額が自主運用に移る予定です。昨年末時点でGPIFの運用資産は百二十兆円強あり、株式や債券など金融市場に回っています。
今の制度では、公的年金積立金に運用損が出たら、つけは将来の世代に回ります。現在保険料を払っている人々が受け取る年金の額が減るかもしれないのです。
公的年金の硬直的な運用体制を見直すことは必要です。しかし、いきなりヘッジファンドの活用まで検討するのは話が飛びすぎています。どんなに優秀な運用担当者でも「損失を出さない」と確約できる人はいません。まして数十兆円もの資産の運用は市場自体に大きな影響を与えます。難しい運用を迫られることは間違いありません。
年金の保険料は強制徴収である以上、誰に運用を任せるかについては国民を巻き込んだ議論が必要です。
もし安全性を追求するのなら、米国のように積立金を国債で運用することになります。
個人や企業に資金運用を任せたほうが効率的だと判断するのなら、企業が保険料を拠出し従業員が運用する確定拠出年金の非課税限度枠の引き上げなどが選択肢になります。そうした制度を設ける際は「年金は厚生労働省」「税金は財務省」といった縦割り行政が邪魔にならないように気をつけるべきです。
GPIFによると、公的年金の昨年十―十二月期の運用利回りはマイナス一・六七%に落ち込みました。金額ベースで一兆五千三百四十八億円の損失が発生したことになります。
これは、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題をきっかけに国内外で株安が進んだためです。では、株安になるとなぜ運用利回りが下がるのでしょうか。
金融市場での運用は、大きな利益が出る可能性がある半面、損を出す懸念もあります。こうしたリスクのある資産を種類別にみると昨年末時点で国内債券六七・六%(財投債含む)、外国債券八・一%、国内株式一三・七%、外国株式一〇・六%という比率です。国内外の株価下落は、二割強を占める株式を直撃します。
十―十二月期に債券は利益をあげたのですが、国内株式の運用利回りがマイナス九%と特に悪く、全体として損が出たのです。一―三月期も株安が進んでおり、〇七年度通期もマイナス運用になる見通しです。
こうした運用難は公的年金だけの問題ではありません。企業が従業員のために設けている企業年金の運用利回りもマイナスに落ち込んでいるようです。企業年金は株式の構成比率が高いため、運用利回りの変動幅が公的年金以上に大きくなる傾向があります。
現在の公的年金制度は年三・二%の運用利回りを前提に設計しています。〇五年度は一四%、〇六年度は五%の利回りを達成しており、〇七年度の結果だけで制度が崩壊することはありませんが、マイナス運用が長引けば、保険料上げや給付減額などのしわ寄せが国民に及びかねません。
高利回りを稼ぐため、もっと積極的に運用すべきだとの声も強まっています。山本有二前金融担当相が昨年末に立ち上げた議員連盟は、積立金の一部の運用を金融のプロに任せることを検討しています。
舛添要一厚労相はGPIFの体制を改め、学識経験者が大半を占める運用委員会に金融の現場の人を入れる考えを表明しています。GPIFの職員はわずか八十人と、ヘッジファンドなどに積極投資する海外の年金基金とは雲泥の差があります。
しかし、企業年金との比較でもわかるように、現在は債券中心の手堅い運用のため、株価急落の割に損失が少ない面もあります。今後、株式やヘッジファンドなどで運用すれば多額の損失が出る恐れがあります。
累積赤字が六兆円に達した〇二年度には国会で株式運用廃止論なども出ました。損失が膨らんだら誰が責任をとるかという点も含め、冷静な議論が必要です。(関口慶太)
二〇〇七年度の公的年金の運用成績が五年ぶりにマイナスになると聞きました。私たちの大切な年金資産はどういうふうに運用されているのでしょうか。
国民年金や厚生年金などの公的年金は、国民が高齢者や障害者になったとき、本人やその家族の生活を守るために国がお金を支給する制度です。現役世代や企業から集めた保険料の一部は現在の年金給付に充て、残りは将来の給付に備えて積み立てています。
年金の積立資産は約百五十兆円と世界最大です。資産を増やすために運用していますが、専門能力が必要なので年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に任せています。厚生労働相が示した運用の中期目標をもとに同法人が具体的な運用計画を決め、信託銀行や投資顧問会社などに運用を委託しています。
二〇〇〇年度までは積立金は旧大蔵省資金運用部(現在の財政融資資金)に全額預託し、政府系の特殊法人への低利融資などに回していました。融資は国の保証付きのため貸し倒れの懸念はありませんが、利回りは低めでした。その後、特殊法人の肥大化への批判から預託義務が廃止され、GPIFの前身、年金資金運用基金による自主運用が始まりました。
財政融資資金への預託金は徐々に償還されてGPIFの手元に戻っています。〇八年度末には全額が自主運用に移る予定です。昨年末時点でGPIFの運用資産は百二十兆円強あり、株式や債券など金融市場に回っています。
今の制度では、公的年金積立金に運用損が出たら、つけは将来の世代に回ります。現在保険料を払っている人々が受け取る年金の額が減るかもしれないのです。
公的年金の硬直的な運用体制を見直すことは必要です。しかし、いきなりヘッジファンドの活用まで検討するのは話が飛びすぎています。どんなに優秀な運用担当者でも「損失を出さない」と確約できる人はいません。まして数十兆円もの資産の運用は市場自体に大きな影響を与えます。難しい運用を迫られることは間違いありません。
年金の保険料は強制徴収である以上、誰に運用を任せるかについては国民を巻き込んだ議論が必要です。
もし安全性を追求するのなら、米国のように積立金を国債で運用することになります。
個人や企業に資金運用を任せたほうが効率的だと判断するのなら、企業が保険料を拠出し従業員が運用する確定拠出年金の非課税限度枠の引き上げなどが選択肢になります。そうした制度を設ける際は「年金は厚生労働省」「税金は財務省」といった縦割り行政が邪魔にならないように気をつけるべきです。
GPIFによると、公的年金の昨年十―十二月期の運用利回りはマイナス一・六七%に落ち込みました。金額ベースで一兆五千三百四十八億円の損失が発生したことになります。
これは、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題をきっかけに国内外で株安が進んだためです。では、株安になるとなぜ運用利回りが下がるのでしょうか。
金融市場での運用は、大きな利益が出る可能性がある半面、損を出す懸念もあります。こうしたリスクのある資産を種類別にみると昨年末時点で国内債券六七・六%(財投債含む)、外国債券八・一%、国内株式一三・七%、外国株式一〇・六%という比率です。国内外の株価下落は、二割強を占める株式を直撃します。
十―十二月期に債券は利益をあげたのですが、国内株式の運用利回りがマイナス九%と特に悪く、全体として損が出たのです。一―三月期も株安が進んでおり、〇七年度通期もマイナス運用になる見通しです。
こうした運用難は公的年金だけの問題ではありません。企業が従業員のために設けている企業年金の運用利回りもマイナスに落ち込んでいるようです。企業年金は株式の構成比率が高いため、運用利回りの変動幅が公的年金以上に大きくなる傾向があります。
現在の公的年金制度は年三・二%の運用利回りを前提に設計しています。〇五年度は一四%、〇六年度は五%の利回りを達成しており、〇七年度の結果だけで制度が崩壊することはありませんが、マイナス運用が長引けば、保険料上げや給付減額などのしわ寄せが国民に及びかねません。
高利回りを稼ぐため、もっと積極的に運用すべきだとの声も強まっています。山本有二前金融担当相が昨年末に立ち上げた議員連盟は、積立金の一部の運用を金融のプロに任せることを検討しています。
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