20080326 日本経済新聞 朝刊



 二十五日の債券市場は米国債安・株高という材料への反応は乏しく、債券を売る動きは限定的だった。米国の中央銀行や政府機関による金融市場対策が着々と進むが、市場参加者は安全資産の国債を手放そうとしない。好需給、景気後退懸念、日銀の利下げ観測という三つの要因が、今後も相場を下支えするとみているからだ。


 ▼…長期金利の代表的な指標である新発十年物国債利回りは二十五日、前日と同じ一・二五〇%で取引を終えた。一・二%台での取引終了は四日連続で、量的緩和解除前の二〇〇五年七月以来のこと。前日の米国債券相場が大幅に下落し長期金利が急上昇したのとは対照的な動きとなった。
 背景にあるのが生命保険会社や年金基金など機関投資家の強い需要だ。例年四、五月は期初の買いが入り、相場が崩れにくい。信用不安で株や証券化商品などリスク性の高い資産への資金配分は増やしにくい。「期初の債券買いで金利が低下しやすいという季節性は強まる」とリーマン・ブラザーズ証券の山下周チーフJGBストラテジストは指摘する。


 ▼…米国の景気後退懸念も高まっている。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストはシカゴ連銀が二十四日に発表した全米活動指数(CFNAI)に注目する。同指数は八十五の経済指標から足元の経済情勢を判断するもので生産・所得、雇用、消費・住宅、販売・受注など主要指標を網羅している。
 潜在成長率に対応する水準をゼロとしているが、二月はマイナス一・〇四に急低下した。直近三カ月の平均はマイナス〇・八七でリセッションかどうかの分岐点、マイナス〇・七を三カ月連続で下回った。この場合「過去の事例をみると、米国のみならず日本の景気も、例外なく後退している」(上野氏)という。


 ▼…景気後退懸念に加え、米連邦準備理事会(FRB)の急速な利下げもあり、日銀の利下げ観測も根強い。翌日物金利スワップ取引の金利は、今秋の利下げを五割程度織り込む水準。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「日本もすでに一―三月期に景気後退入りした可能性が高い」としたうえで、五月に〇・二五%、七月に〇・一五%の利下げを予想する。政策金利に影響を受けやすい二年債の利回りは二月二十八日以来一貫して〇・五%台に張り付いている。市場が利下げを織り込まなければ政策金利の〇・五%より利回りが低くなることは考えにくい。


 二年債と長期金利の利回り差は〇・六%台。量的緩和解除以降では最も縮まっており、これ以上縮小する事態も想定しにくい。つまり二年債利回りが利下げを織り込んで下がらなければ、長期金利もこれ以上は下がらない水準まできている。ただ、利下げ観測の高まりで二年債〇・五%の「壁」が崩れるようだと、長期金利にも低下余地が出てくる。(Y)





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