傍聞き (双葉文庫)/長岡 弘樹

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-読書ノート-
◎表題作で08年に日本推理作家協会賞短編部門受賞
◎「おすすめ文庫王国」2012本の雑誌増刊国内ミステリー部門 第1位
◆目次
・迷走
・傍聞き
・899
・迷い箱
◆迷走
◎患者の搬送を避ける救急隊員の事情が胸に迫る
・体調である室伏光雄の携帯電話が大きな鍵を握る
・なぜ同じ道を通らずに救急車を走らせるのか
・「マニュアル虫の責任を一人で負ってもらえれば,それはありがたいですよ。ですが,ずっと黙っていられるのは,やっぱり困ります」
◆傍聞き
◎娘の不可解な行動に悩む女性刑事が我が子の意図に心揺さぶられる
・『傍聞き』…漏れ聞き効果。どうしても信じさせたい情報は,別の人に喋って,それを聞かせるのがコツ。
・娘の菜月が送る絵はがきが鍵を握る。
・なぜ住所の9を7のように書くのか。
・近所のフサノの家に居空きに入った,犯人とは。
◆899
◎女性の自宅を鎮火中に,消防士のとった行為が意想外
・諸上将吾が隠したレンチが鍵を握る。
・3日間にわたって隠したのは,小さな備品一つにどれほどの価値があるのかを,部下の石崎に気づいてもらうためだった。
・笠間のとった意想外な行為の真意とは。
◆迷い箱
◎元受刑者の揺れる気持ちが切ない
・出所直後の元受刑者に住処を提供する更生保護施設を営む中年女性,設楽結子が主人公。
・迷い箱の中身は,一日一回でいいから目に触れるようにする。そうして数日も経てば,捨てる決心がつく。
・いきなり本当に捨てないで,まず仮に廃棄してみる。その状態に慣れてくれば,迷ていた気持ちに整理がつき,処分してもいい,との覚悟ができてくる。
・この迷い箱とテレビが鍵を握る。
◆解説 大森望
・傍聞きとは耳慣れない言葉だが,『大辞泉』によれば,読んで字のとおり,「かたわらにいて,人の会話を聞くともなしに聞くこと」
・四編に共通するのは,自分を犠牲にしても他人を助ける職業の現場を舞台にして,ある登場人物がとった不可解な行動がミステリの核となること
・「真相に至るキーワードを堂々と題名に掲げながら,なお読み手を欺く腕前に感服した。私自身,眉に唾して読んだのだが,まんまといっぱい食わされた。きれいな投げ技である」(有栖川有栖)
<こんな人にオススメ>
○ 短編を読みたい
○ ミステリに挑戦してみたい
○ まんまと出し抜かれてみたい
○ いろんなお話でお腹いっぱいにしたい
<オススメ度>
★★★★★ +(短編なのに長編並みの読み応え)
-COFFEE BREAK-
この本を手に取ったのはたまたま消防の出初式を友人と見たのがきっかけでした。
なにげなく寄った本屋でなにげなく存在感をあらわにしている本が一冊。
なにげなく手に取って裏のあらすじをみてみると,消防のお話。タイムリーすぎて気が付いたらレジへと持っていっていました。
読んだあとの率直な感想はまんまとやられたな~という感じです。短編なはずなのに長編の本を一冊読み終えた後のような達成感。そして一瞬にして長岡ワールドへと引き込まれ知らず知らずのうちに物語はクライマックスへ。
なんで?どうして?と問いかけながら読み進めていくと最後にはそっか~だからか。と一人納得。
まんまとこの本の虜となっているわけです。
そして4編読み終えた最後には,あれ待てよ?これらの本になにか共通している点があるような。
そこにピンときたときのすっきり感と出し抜かれ感はたまりません。堂々と題名に答えが書いてあるのに,いつのまにか迷路で迷っている。でも最後にはきちんとゴールについている。
そんな満足度の高い本でした。久々に買ってよかったと思える本に出会えました。
興味のある方は是非お手に取ってみてください!




