天国からの贈り物 第三話
「質問してもイイですか? どんな時、何をしている時に貴方は楽なのでしょうか?」
「ん~.... それは、たぶん自分の好きな事をやっている時でしょうか」
「今の貴方はその好きな事に取り組んでいますか?」
「仕事と子育てで目一杯で... 自分の事なんかあまり考えてきませんでした.... 」
「自分を犠牲にしてきたのですね。がまんをして.... あきらめて..... 子供達もそうやっているんじゃないですか?」
「そうかもしれません」
「今、何かやってみたい事はありますか?」
「はい、実は看護婦の資格を取りたいのです」
旦那さんが入院していた時にその病院の看護婦さん達が一生懸命お世話をしてくれたという事を話してくれました。
心細い時に励まし支えてくれたあの恩を忘れない、私もあんな人になりたい、そう思ったそうです。
しかし看護学校に通って仕事をするとなると家にいる時間が余計になくなってしまうと思いその夢をあきらめていたそうです。
「じゃそれ、やってみませんか?」
「えっ、どうやってやればイイのですか?」
「旦那さんの保険金があるじゃないですか」
「ダッ、ダメ。あれは夫が命と引き換えに残してくれたお金です」
「だからこそ貴方と子供達の為に使うのです」
この場合、生命保険のお金というのは少しやっかいなものなのです。
夫の命と引き換えに入ったお金ですから、それを使うのに罪悪感がともないます。
その結果、残された人達がそのお金を使えない。
もしくは、保険金を持っている事が悪いような感じがするので湯水のように無駄使いをしてしまう。
だから、心霊商法などにも引っ掛かりやすいのです。
「夫は許してくれるでしょうか?」
「何の為に旦那さんが保険金を残されたと思いますか? きっと許してくれると思いますよ」
「ホントに?」
「じゃ、聞いてみますか?」
「えっ、どうやって天国の夫に聞くのですか??」
「たしか貴方は孝之さんの奥さんですよね?」
「もっ、もちろんそうです。変なこと聞かないでください!」
「すいません。だったら旦那さんの事はよ~く知っていますよね?」
「はいっ、知っています」
「では、今から貴方が天国の旦那さんになってください」
「私が夫になるんですか??」
つづく