4日夕。リベラルアーツ上級コースは新テキスト、ルソー『エミール』(今野一雄訳/岩波文庫)を読み始めた。
1762年に書かれたこの本を読むためには時代背景知識の共有が必要なので、イギリスピューリタン革命、名誉革命、アメリカ独立革命、そしてアンシャンレジームフランス革命、そして明治維新革命について解説した。
ただ、どれもこれも今は漫画で読めるそうで、それなら尚更その捉え方の確認と修正が必要である。
1688年に「権利章典」を生み出してイギリスを立憲君主制国家とした名誉革命は、プロテスタント議会とカトリック国王との軋轢の結果で、新たに王となったのはオランダ総督ウィリアムとその妻となっていたジェームズ2世の娘アンだった。オランダはもちろんプロテスタントの国である。これは産業革命前のイギリスで、商工業や貿易で経済的力をつけた市民階級によるものだった。
対して、フランス革命が起こるのはその100年後の1789年であり、その直前にはフランスが援助したアメリカ独立革命があり、ルイ14世以降の対外軍事政策のために国庫が空になり、その結果、課税のための3部会を招集したところ、第一身分の聖職者、第二身分の貴族といった既得権益保有層には課税しないで、第三身分の平民階級に課税する決定に対して、市民が暴発して革命が起こり、封建制が崩れ、共和政が樹立される。ルイ16世はギロチン処刑された。
明治維新は、薩長主体の軍事クーデターであるが、これを主導したのは、商工業が盛んになる中、経済的に困窮した下級武士たちであった。
なぜ「革命」が起こるのか?「革命」は一形態ではない。
だが、やはりその背後に共通してあるのは、既存の経済システムが新しい経済動向に対応できなくなるということであろう。
名誉革命後、下院議会が主導権を握ったイギリスでは、その後大規模な海外進出、産業政策が行われていくことになる。
フランスでも同様のことが進んだが、封建体制と徴税システムは既存のままだった。フランス革命の中心的役割を担ったのは新興階級「ブルジョワジー」であった。彼らは、商工業経営、金融業者、あるいは植民地経営で貴族と同様の収入を得ることになった者たちであるが、彼らの考えを後押ししたというか、先導したのが、ロックやホッブス、あるいはヴォルテールやルソーやモンテスキューの思想書だった。ヴォルテールは無神論者である。
そして、これらの革命の背後には、「では人々を動かすその資金はどこから出たのか?」という疑問が常に付き纏う。
明治革命は「特殊」であるが、その「資金」の出どころは同じであると思われる。
坂の上まで行ってその地面に映る雲の影を見てみたいものである。
「革命」あるいは騒乱が起こると得する人たち、それは誰なのか。
グラバーはフリーメイソンと言われるが、なぜ彼はそして誰の命令で、南北戦争直後のアメリカから上海に7000丁の銃を運んだのか。
近代国家成立の過程を知ることは、現代社会の様子やその行末を判断する上で欠かせない教養である。
そしてその元となった思想を食べてしまうことはさらに有益である。
以上、とてもではないが一言では書き尽くせない。近代国家の成立のための宗教的、あるいは経済的対立、そしてその資金。
詳しいことは各々本に当たってもらうことにして、フランス革命直前に書かれて大いに読まれたと言う『エミール』を読み始めた。