岸田氏が早大出身者であることについて | JOKER.松永暢史のブログ

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次期首相にほぼ就任が決まった岸田文雄氏は、1957年生まれで筆者と同学年である。

氏は二浪して東大受験に失敗し、早大法学部に進んだ。筆者も77年入試で同法学部に合格しているので、早稲田に進学すると岸田氏と「学友」になったことになる。

二浪もして東大に落ちるとはどういうことか。二浪もすれば英語や社会はなんとか合格点を超えるので、問題は数学と国語記述で得点できなかったことになる。

量をこなせば暗記学習はそれなりに知識が積もれば成果が出るのは当然であるが、そのやり方がまずいと、考えなければ解けない数学ができなくなり、ふつうダイアローグが必要な国語の選択肢の得点力が弱まる。これを解決するのが文章記述力の整備であるが、これは小学高学年から着実に伸ばしていく方が良い能力である。受験勉強で伸ばす能力とはちょっと違う。というより予めこの能力が備わるからこそ、東大の二次試験の記述のための学習ができるのである。中高一貫校が東大入試に強いのもそうした生徒を多く抱えるからである。

すると、岸田氏は、筆者と同様、厳しい高校受験勉強後の生活を楽しんで高校での勉学を疎かにし、公立中出身者らしく国語記述の能力をつけ損なったまま高校を卒業したということになる。もちろん、氏がその後、読書や大学での活動、それ以降の仕事を通じて言語力を高めてきたからこそ「政治家」に成れているのであり、現在の氏にその能力が劣るということではない。また早大法学部に合格するには、国内最難問と言われる早大法学部系レトリックを駆使した国語選択肢問題に勝たなければならないが、岸田氏には「聞く力」があるそうだから、それで選択肢も読み切れたのであろう。筆者は聞く耳を持たないタイプであるらしいが、自己開発した国語選択肢得点技術のおかげで、後で調べるとほぼ満点の得点だった。これも20歳と18歳では違うということだけなのかもしれないが。

サンデルではないが、日本でもポピュリズムがジワジワと確実に強まっていると感じる。これは、社会的不運のために高学歴を得ることができなかった中層下層の人々が、自分たちに益を齎さず、逆に蔑視し、劣等感を植え付けてくる「高学歴者=エリート」に対する深い憎しみの念から起こっていることだと思う。米国における「トランプ大統領登場」、英国における「ブレグジット」、フランスにおける「黄色いベスト運動」などはこうした社会意識の発現であろう。

岸田氏は、米国からの帰国子女で、千代田区の麹町中から、日比谷でなくて開成に進んでいる。それで東大に入れない。するとこれは、「超エリート」からは外れることになり(岸田氏の親族は父親も祖父も東大卒官僚だらけ)、ポピュリズムの人たちからはやや受け入れやすいことになるのか。

自民党内閣でここのところ首相になるのは、小泉純一郎(慶大)、安倍晋三(成蹊大)、福田康夫(早大)、麻生太郎(学習院大)などであるが、これらは全部世襲議員であり、予め選挙基盤を持った「貴族」であるが、東大法学部卒は一人もいない。国会議員には東大卒は約2割もいるのに(しかも法学部出身者が多い)である。もしくは国会議員の息子は東大に進学しないとも言えるか。

我が国最高レベルの東大法学部出身者は、首相になれない。

このことは、東大法学部が政治的指導者になる人材を養成しようとしてはいないことの「証左」だとも言えるのではないか。彼らは行政官としての仕事には長けるが、世を先取りして、新規の観点で国を導いていく力がない。それは、東大法学部に入るための、そして東大法学部で受けた教育のために、イメージ力を減退させられ、発想力や構想力と言った能力が弱く(なく)なっているからではないのか。そしてそのことは、学歴的驕りのために意識的に無自覚化されているのではないのか。直感に長けた「ポピュリスト」たちが本当に憎んでいるのはそういったことに中心があるのではないか。

岸田氏は、東大に3度落っこって、ワセダに行きました。名門一家の中では落ちこぼれです。だから謙虚で人の話をよく聞き、にこやかで敵を作らない目線が可能です。こうしたイメージを大衆に与えることが必要である。しかも今回の選挙はやや勝ちが見えていて、「ヒーロー」が必要な危機的な状況ではない。

要領が良い、人当たりが良いというのは、必ずしも判断力が高いということにはならない。よく耳を傾けるのはいいが、そこで収集した「情報」でいかなる判断実行をするのかが政治家の仕事である。そのためには、「ヴィジョン」がなければならない。「イメージ力」がなければならない。だが、それをこの人に期待することはできない相談だろう。

しかし一人の人間にいくつもの能力を求めることも無理なことだろう。岸田氏は「聞く力」つまり調整能力をその武器とする政治家であるということになる。そしてその左耳側には麻生さんが、右耳側には安倍さんが、「自分の損得をよく考えて、こちらの仲間になれよ」と囁きかけてくる。「聞く耳」とは、単なる聴解能力のことを指すのではないだろう。いったい誰の言葉を一番よく聞くのかということに関わることなのではないか。

ポピュリストに嫌われる役は東大卒に限る。東大卒でない政治家がそう思うと想像するのは容易い。

そしてこれからの自民党は、国民の皆さまの声やご意見を真摯に受け止める政策を行う姿勢を示して選挙に勝利する。

でも多分何も変わらないからね。意見は聞くけど政策は提案しないからね。

総裁選で教育の危機に触れた候補者は一人もいなかった。

 

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