自然状態の炎天下で人の選択することは、樹の陰に入ることだろう。できたらその下に冷えた岩があってその上に座る。
そこで動かずに何をするか。陰とは言え、周囲の気配は猛烈に暑い。動けば汗が噴き出る。
目を閉じてじっとしている。外界を遮断して、暗黙の世界に入る。何かを念じたような状態に入る。
すると、樹からは酸素やイオンが注ぎ、大地からは岩を通じて気が上がる。
これは快いので続けると、自己の体内に変化が訪れ、脳がかつてない活動を始める。
我々が生命活動を維持するために最低限必要なものは、空気と水と食料である。
空気は、太初より王、市民、奴隷に関わらずタダ。
本来水も「タダ」なのであるが、現在我々は、税金で堰き止めたダムから水道局が引いてきたパイプの末端から、有料とは言え、簡単に手に入れることができる。
米や野菜や肉は、農業者が生産した物を、運送者が運び、街に届いた物をすぐに買うことができる。外国から運ばれてくるものもある。
あとは快適な居場所であるが、広さは別としてエアコンを持たぬ者はまずない。なければ都会では生きていけない。
たくさん労働してたくさん消費して、さらに暇つぶしに娯楽・情報吸収などの気分転換に自分の時間を使う。
どこかヘンな気がする。
涼しい樹の下にじっと座って脳内を調えるようなことの方が優先されるべきことなのではないか。
今日からオリンピックが始まる。コロナ下で、しかもこの暑さの中、本当に信じられないことである。選手だってこんな気候状態で試合なぞしないで、家の中で涼んでいたいことであろう。でも「お客」はスタンドにおらず、涼しい家の中でこれを見る。その暇つぶしのために選手たちは海外からやってきて、炎天下の時期のこの国でプレイする。
どこかおかしい気がしてしまう。
トヨタがリタイヤするのもわかる気がする。
この夏はもっと瞑想するようにしようと思う。