高大接続ITシステム改革会議 | JOKER.松永暢史のブログ

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11日夕に、第13回文科省高大接続システム改革会議が開かれて、その膨大な配布資料がすでにネット上でも公開されている。
中教審の答申を受けた形で文科省が、おそらくは鈴木寛氏らの主導の下に、昨年3月から毎月一度開催して来たこの会議は、言わば、
「これから新国立競技場を作りますが、その前にそれをどういったものに設計していくのかを、識者の皆さんのお声をお借りして考えて参りたいとの主旨でございますが、中央教育審議会の答申により、その中で必ず大学入試のシステム改革を柱に据えるということであります。」と言うことである。
前回第12回では、大学入学希望者基礎学力テスト(仮称)の出題イメージ案を掲げ、一応文章記述の出題をする構えを見せたが、50万人以上受験するのでは、500人の採点者で、一人が1000人分採点するとして、正しい集計を出すのに何日かかることか。だいいちそんな人を集められるのか?無理に決まっていると誰もが思うことだろう。これは一種の「誘導」だったのかもしれない。だからこそ、予め「技術的特異点(シンギュラリティ)」のことを話題にしたりするのかもしれない。
今のところ会議のネット公開上では発見できないが、一部の新聞報道では、AI採点を採用の方向性と言う。
チェスや将棋や囲碁の対戦パターンを記憶して利用できるAIのように、文章の採点もこれにさせるというのである。
なるほどね。話が見えて来た。最早完全に後戻りはない。2020年からの試験は、今よりもよりいっそうコンピューターを用いたものになるのである。これで行くと、ひょっとすると、コンピューターで受験も始まるかもしれない。そしてそれがやがて主流になる。最早人間は、字を読みはするが文字を書くことがなくなるのかもしれない。いやすでにとっくにそうなっていると感じる人も多いことだろう。実際この文章もキーボードを叩いているのであって「書いている」わけではない。
というわけでL大学でのIT教育導入も必須というムードになって行くわけである。
この会議は一般の傍聴も可能な開かれた形を取っているが、塾や学校の関係者は気が気ではないことだろう。
中高一貫公立校出題傾向はもちろん、東大A・O入試開始でもたまげるのに、これからさらにどのような変化を引き起こして行くのか、固唾を飲んで見守っていることだろう。
でも新しい時代にどんな人材が求められているかは明らかである。
それは、自ら好奇心の対象を見出す能動性、本(文)をよく読んで、自分の考えを確実に表現する言語の高度な運用能力、さらにできたら解析学に手が届く数学的思考力、その上で困難を切り開いて行く創造力や着想力があると望ましく、さらにこれにITを使いこなす能力が求められることになる。
これにより、言うまでもなく、これを与えない教育機関に通う必要はなく、自宅で教育ソフトを選んで学べばよいことにもなる。
A・Oで問われるのはそれまでの研究試行実績と、すぐに調べ始めたいものが次々にわいてくるようなエネルギーを持った人材であるから、必要なのは、好奇心に基づくフィールドワークと遊びとコミュニケーションということになる。
高大接続システム改革会議は、ほとんど予算を使わないでわが国の教育行政と教育産業に風穴を空けた「施策」であった。金を使わなくても智恵を使えばより効果が大きいものを作れる。まさに教育政策らしい政策と言えようか。しかし、これに対して、智恵を使って金を儲けようとする連中は、次はどういうアイデアを出して来るのか、興味は尽きない。