梅田 | JOKER.松永暢史のブログ

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「もう暗くなるから下に下りましょう。下に下りれば、夕日が見られるかもしれません。たぶん雲がかかっているのはこの辺りだけなんですよ。」
と、何度か下から六甲山頂を見上げたことがあるであろうウジュ君が言った。
その通り、山腹から夕日を浴びる神戸大阪の港が一望できた。

岡本から阪急電車で梅田に出た。
関西の人はよくご存知のことだろうが、ここには吉祥寺のハモニカ横町の5倍以上あると思われるごちゃごちゃ飲食店街がある。
これが不思議なくらいいろいろの食べ物屋が狭い路地の中に軒を連ねるまるでアジアのバザールのようなところなのである。
ウジュ君が案内したのは「きじ」というお好み焼き屋。理由は、いつも人が並んでいるのを目にするから。
ちょうどカウンター席の後ろがベンチになっており、そこで先頭のお客は先に注文して席が空くのを待つ。
カウンターは六席。目の前の鉄板で次々と慣れた手つきでお好み焼きと焼きそばが作られて行く。
頭をタオルで覆ってお好み焼きを作っている腕に毛の生えた42歳中年男は、その表情から明らかに家族がいるパパであること、どうも元ミュージシャンであることを忍ばせるムードが漂い、天井の低い店で毎日お好み焼きを作り続けている生活の疲れが体全体に滲み出ていた。しかし、休みの日にはこれと言った、例えば釣りとか演奏とか言う趣味がありそうで、それで仕事に堪えていられる雰囲気の男なのである。
さて筆者の座ったカウンタ-左隣には、顔や表情にまだ充分あどけなさを残した30歳くらいの二人の若者が長い時間居座っている。
彼らの話からすると、彼らは大阪府内の公立高校での成績優秀者同士で、片方は役所に、もう片方は裁判所の書記の仕事をしているらしい。彼らの話題は一貫していて、それは何と創造性ということについてである。聞けば、最近では法曹界でも「創造性的な仕事」を求める全体的な声がけがあるということである。しかし、彼ら優秀君には、言葉の意味では分かっても、いったいどのような状態を「創造性がある」と呼ぶのかはどうしても分からないらしいところが可笑しい。一方真面目な人たちであるから、創造性の意味について、お互い「いやきっとそうじゃないんだな」と際限なく堂々巡りの議論が関西弁で行われているのである。筆者がこれを耳にしてゲラゲラ笑いたくなるのはいったい彼らが何を「創造」しているからなのであろうか。
良く膨らんでパンのような「生地」のお好み焼きは美味しかったが、如何せんこれから酒を飲んだりする前にお腹がいっぱいになってしまって失敗である。二人であたりを歩き回ることにした。
歩いていると、ここはどの方角に歩いても街が尽きることがなく、大きな道路を渡って別の駅に近づいたと思ってもそこにはそこでまた店が灯りをともしている街がある。渋谷に似てる?池袋?新宿?昔の歌謡曲の歌詞ではないが、このまま梅田新道、心斎橋と御堂筋沿いを南へ歩いて言ってしまいたくなるのがよくわかる。とにかく賑やかで大きな街である。ここは博多同様、異国である。そして、関西人の様々な層の生活が簡単に観察できて非常にオモロいところである。関西で最も訪ねるべきところの一つと言えるかもしれない。でも、修学旅行で行くわけにはいかないから自分で訪問してこうして歩いてみるしかない。
知らない街を歩き回ることの大切さを改めて噛み締めた。
やっぱり旅は歩かなければならない。