南青山のライブスポットMANDALAでキリロラ☆のライブを観た。
キリロラ☆は、早くからカタカムナ音読に関心を持ち、これを筆者から直接学習した上で、さらにそれを昇華させ、クリアヴォイスセミナーを開催し、多くの人に自分本来の声の発見の大切さを説いているアーティストである。曰く、「自分の本当の声に出逢う」。
キリロラ☆は、カタカムナを初めとして縄文、アワ歌、君が代、ヤマトといった和の要素を繋ぎ合わせ、独特の音楽パフォーマンスを実現している。バックで演奏するミュージシャンは、ヒュージョンピアノ界の巨星ホッピー神山、火花を散らせノコギリも弾きこなす天才チェリスト坂本弘道などそうそうたるメンバーであるが、この人たちは、あたかもF•ベーコンのごとく、敢えてこういうことをしているという観客の認識を拒む最先端のアーティストたちであり、結果的に舞台は、一見分けが分からんが非常にオモロい魅力的なものになっている。驚くべきことに、この「前衛」ともいえるコンサートは満員御礼の盛況ぶりである。これほど特殊なものを広く一般の人に伝えてしまう彼女の力量にはつくづく感心させられる。いったい、君が代とカタカムナとアワ歌を同時に歌う歌手がどこにいるであろうか。
聴者は、ベーコンと同じで、芸術家が何かをやってからかっているのかもしれないことを味わう。私は秘かに、これがこれからの芸術の味わいの一つの方向性だと感じている。いいものを味わうのでもない、分けの分からぬものを無理に押し付けられるのでもない。まるで子どもの時に、大人が仕掛けて来ることをなんだかわからないながら楽しんでしまうような自分がいる。そこには、価値付けを拒む芸術性がある。それはまるで、自分たちこそが新しい価値判断のもとを提供しようとするかのような真の芸術活動である。キリロラ☆は「ロック」ではなく、「磐系」と自称していたが。
これで彼女のコンサートを聴くのは5回目くらいだが、回を重ねるごとにパフォーマンスがこなれて「芸」の高まりを感じさせる。
これからも益々期待したい。