いつ,言うか? 何を,言うか?(by Paul) | JOKER.松永暢史のブログ

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 5月1日(日)に開催されたパーティーにおいて,貴重なご助言を下さったすべての方々に,厚く御礼申し上げる。今回は,いただいた様々なご助言をもとにして,共有化させていただきたい内容をまとめてみる。

 海外旅行時に特に重要なことだが,主張すべきことは相手が正確に理解するように主張して,得たいものを確実に得る,ということの大切さを,セッツ氏から伺った。
 その大切さを示す一例として,以下の話が思い出される。

 十数年前,三月初頭,曇り空のパリでのことである。
 黒のサングラスをかけた,四十代と思われるタクシーの男性運転手は,卒業旅行中の数学専攻の学生の「東駅まで,お願いします」という指示を確認後,ホテルを出発した。
 走行中,車内から街中のデモ行進を目にした学生は,運転手に尋ねた。
 「すいません。これは,いつも行われているデモなのですか?」
 「ああ。だけど,何について要求しているかはわからないね」
 「ところで,お使いの車は,BXですよね? 特殊なサスペンションのお蔭で,パリの街中でも,とても快適な乗り心地を維持しながら,走行できますね?」
 「そうさ!」
 「しかも,シトロエンは,フロントエンジン・フロントドライブですよね?」
 「ああ!」
 「なら,降雪時にも向いていますよね?」
 「勿論!」
 話がどんどん盛り上がる間に,東駅に到着。運転手は,学生が買い集めたお土産の入った紙袋をトランクからササッと車外に搬出する。袋の底がかなり破れたことに少々ショックを受けた学生には目もくれず,学生の肩を軽く叩き,車の正面に来るよう指示した。
 「こいつなんだが…」
 運転手は,エンジンルーム内のサスペンションを指さす。
 両手で颯爽とボンネットを閉じた後,「おいくらですか?」と尋ねる学生に,「80Fお願いしよう」と請求する運転手の洒落た仕事術に感動した学生は,現在,数学の指導者として,ヨーロッパの車社会についても,随所で後進に語り続けている。

 「(『モンテ・クリスト伯』の)ここの描写って,原文で読むと,どうなんだろう?」
 これは,4月23日(土)のリベラルアーツにて,Joker氏から提起された難問である。
 この旅行記は,この難問の解決に向けても,ささやかではあるが,確実に一つのヒントにしていただけるものと確信している。

 演習1 「サスペンションを見せていただけますか?」とは言わずに,エンジンルーム内のサスペンションを見ることのできた学生の会話は,どこが優れているのか,分析せよ。