記憶11 ジャンキー | アダルトチルドレン時々日記

アダルトチルドレン時々日記

機能不全の家族の中で育ち、その後遺症を人生上に色濃く残し、一般常識とまともな生活を知らず、悲観的なことを言いつつ能天気な性格でふらふら気ままに流転の人生を送っております。魂の病気と共存し狂気と正気を往ったり来たりする日常を徒然なるままに書き綴ります。


 その頃、ちまたではすでに私の存在は知れ渡っていた。

いつものバーに暇つぶしに行くと、外国人に声をかけられた。 「お前はアイツを知っているよな」 

「・・・知ってるけど・・・」   「俺はアイツと取引をしたいんだ」  アイツを紹介して欲しいと・・・。  

驚いた。 外国人の売人だった。 

アイツは有名だった。 特にドラッグをやる人間の間では知られていたのではないだろうか。

それとも、私の世界が狭くなり過ぎていただけなのだろうか。 

過去を客観的に見たところで、あんなキチガイじみた過去をきちんと分析するのもくだらないので、

未だに解らないままだ。


その世界に慣れきった私は、堅気の人間よりも、ヤクザの方が話しやすかったし、ヤクザを彼氏や旦那に

持つ女か、黒人のケツを追いかけている精神が性病化した女との付き合いの方が楽だった。

毎晩、誰かしらが酔い潰れる。 毎晩どこかでドラッグのパーティが行われる。 毎晩、誰かしらの男が

知らない誰かに奪われる。 毎晩、誰かしらが喧嘩をおっぱじめる。


暇つぶしに最適な生活。 時間だけが過ぎるのをただ待つよりも、何かしらのトラブルを現実という名の

映画館で、おまけにコ〇インを吸いながら観ていた方が面白かった。


こんな生活は楽だったが、決して楽しくはなかった。 奴らには・・・細やかな感性と、芸術を愛する

感性が欠けていた。 いや、もしかすると、やはり私の様に麻痺させていたのかも知れない。

でも、その頃はそいつらと突きつめて話すことなんか無かったし、話したいとも思わなかった。

メシの話と、酒の話と、服の話と、異性の話と、セックスが上手いだの下手だの・・・あとは車の話に、

クスリの話、自慢話に他人の噂話だった。

金と快楽と見栄が好きだった連中に、表面的には合わせてはいたが、いつも心に・・・何か足りなさを

抱いていた。 それがどうしてだかを気付きたくなくて、暇さえあれば、ドラッグで頭を麻痺させていた。

つまらない月日が過ぎ去っていった。 どうしようもなく退屈な月日が・・・まとわりつく湿気の様に

不快な粘性を帯びて私を覆っていた。





私の開いた瞳孔は太陽の光が恐くて、サングラスが手離せなかったが、サングラス越しに見える世界は、

さらに異時限の虚飾の世界の様で、それも恐ろしく・・・。だから暗くなって、黄昏の向こう側から人の皮を

被った友人と称する魑魅魍魎たちが繰り出してくる時間にならないと外に出れなかった。 

やせ細った体は痛々しく、それを見るのは快感だった。  


知らない奴らが私と知り合いたがっていた。 私はドラッグを持っていると思っていたんだ。

大体、あんなのをやる連中なんてのは、自分さえ気持ちよくなりゃいいだけの奴らでしかない。

知らない快楽を欲しくて、それを持っている人間を探したい。 なんとか楽して手に入れたいだけなんだ。

あんなインスタントカーマ的な快楽に依存している野郎どもの心理なんて・・・こんなもんだ。

 



ある晩、いつもの如く剃刀でコ〇インを潰していたアイツが、ふと私を見てこう言った。  


「売ってもいいぞ」


「・・・・・は・・い???・・・」




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