米澤穂信さんの「黒牢城」と今村翔吾さんの「塞王の盾」
まずは2作品の紹介ページから抜粋します
黒牢城 米澤穂信
本能寺の変より四年前。織田信長に叛旗を翻し有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起こる難事件に翻弄されていた。このままでは城が落ちる。兵や民草の心に巣食う疑念を晴らすため、村重は土牢に捕らえた知将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めるが――。
事件の裏には何が潜むのか。乱世を生きる果てに救いはあるか。城という巨大な密室で起きた四つの事件に対峙する、村重と官兵衛、二人の探偵の壮絶な推理戦が歴史を動かす。
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塞王の盾 今村翔吾
どんな攻めをも、はね返す石垣。
どんな守りをも、打ち破る鉄砲。
「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極の戦国小説!
越前・一乗谷城は織田信長に落とされた。
幼き匡介(きょうすけ)はその際に父母と妹を喪い、逃げる途中に石垣職人の源斎(げんさい)に助けられる。
匡介は源斎を頭目とする穴太衆(あのうしゅう)(=石垣作りの職人集団)の飛田屋で育てられ、やがて後継者と目されるようになる。匡介は絶対に破られない「最強の楯」である石垣を作れば、戦を無くせると考えていた。両親や妹のような人をこれ以上出したくないと願い、石積みの技を磨き続ける。
秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、匡介は京極高次(きょうごくたかつぐ)より琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。
一方、そこを攻めようとしている毛利元康は、国友衆(くにともしゅう)に鉄砲作りを依頼した。「至高の矛」たる鉄砲を作って皆に恐怖を植え付けることこそ、戦の抑止力になると信じる国友衆の次期頭目・彦九郎(げんくろう)は、「飛田屋を叩き潰す」と宣言する。
大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける――。
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この両作品、奇しくも2021年下半期の第166回直木賞を同時に受賞した作品です。しかも2作品とも時代小説であってかつ描かれている時代も近いと言えば近い。
こういうパターンって珍しいのではないでしょうか?
但し、扱っているテーマ、書き方は全く異なる方向性で、それぞれ読み応えがありました。
2作品とも史実を曲げることなく、歴史的事実はそのままに、実在の人物を肉付けしていき、大きな事象と事象の穴を丹念に埋めていく作り方は共通しており、見事と言うしかありません。
「黒牢城」は設定が実に見事です。この設定を思いついた時点で成功と言えるのかもしれません。
土牢にとらえたキレキレ頭脳を持つ黒田官兵衛を事あるごとに利用する荒木村重。まるで官兵衛がハンニバル・レクター博士のようです。ただその扱いは酷いものですが、、、設定も素晴らしく、必ずしも一枚岩ではない立て籠り状態の城内の緊張感が半端なく描写されて行きます。
惜しむらくは城内で発生する事件の矮小な謎解きでしょうか、、、考えてみれば作者の米澤さんは推理作家であるので出来るものなら本業のこの部分はもっと突っ込んで欲しかったな、と。
推理という観点で読むとやや不完全燃焼な印象は残ります。
「塞王の楯」は、人物の性格付けが見事です。今村さんの作品はどれもそうなのですが登場人物が魅力的。それぞれの人物の掘り下げも深く、感情移入させられてしまう。
実際に存在した石工の集団の描写も細部までしっかりなされており、一体執筆前にどれだけの取材を行ったのか想像も出来ません。相変わらず話の展開も熱いです。
ぐーんと盛り上げるだけ盛り上げる一方、最後の最後でやや急ぎ足ぎみで出した(たどり着いたとは言えないかも)結論が少し届かない感じでそこは消化不良なのですが、展開は映像化してもいけそうなくらいエキサイティングです。
直木賞は「大衆」文学に与えられる賞で、あくまでも作品に与えられる賞なので論功行賞的な意味は無いはずなのですが、もしかしたらそうではないのかもしれませんね。
大衆文学と純文学の境目はよくわかりません。
直木賞受賞作品で印象に残っているものは、、、
高村薫「マークスの山」第109回
大沢在昌「新宿鮫 無間人形」第110回
奥田英朗「空中ブランコ」第131回
白石一文「ほかならぬ人へ」第142回
西條奈加「心淋し川」第164回
あたりです。他にも受賞した好きな作家もいるのですが受賞作品が全然面白くなかった、というパターンもあります 笑
<おまけ>
呉 勝浩さんの「爆弾」
これ、面白いです!!おすすめ。第167回直木賞の候補作だったんですねーーー(貼り付けのリンクは電子書籍です、ご注意)
東京、炎上。正義は、守れるのか。
些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。自称・スズキタゴサク。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。
さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。
警察は爆発を止めることができるのか。
爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。



