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音楽見聞録

単なるリスナーが好きな音楽について勝手きままに書き散らかし。
CDレビュー中心のつもりが、映画や書籍など他の話題も。

 

 

物語には「脇役」が出て来る。基本的にはどんな映画でもどんな小説でも通り過ぎるだけの「脇役」が登場する。
残念ながらその人たちの人生なんて見えないし、その存在に注意を払う人はいない。

その他大勢、、但し、世の中はこの「その他大勢」で出来ています。

主役以外は注目されない、どうでも良い、では本当は済まされないのがこの世の実情でしょう。

桜木紫乃さんの小説では「その他大勢」が存外、丁寧に描かれます。
ある章では内部の感情描写がされなかった脇役的登場人物が次の章では主役級の存在となり。

そうして一人一人の内面が丁寧に描かれていく。

また、その人物が次の章では単なるその他大勢で登場したりするのだが、前章で内面を知ったその人物は読者にとってはどれだけに客観的に描かれていようとも最早単なる「その他大勢」ではあり得ません。
その後辿った人生が気になるし、どのような経緯でそこへ至ったのか、ついつい思いを馳せてしまう。

誰もが悩みを抱え、蛇行しながら生きている世界。
そこら中にいる一人一人の「重み」というものを思い知る。

自分が通期途中で出会う多くの「その他大勢」、その一人一人にも物語がある。
重い人生がある。そう考えるとこの世界はあまりにもあまりにも重いです。キツイなあ、、、神様いるならホント大変です。

桜木紫乃さんの『蛇行する月』(2013年)は連作短編です。

高校時代、図書部で共に過ごした順子、清美、桃子、美菜恵、直子
卒業後、順子は20歳以上年上の職人と結果的に駆け落ちし、極貧な生活を送りながらも自身を「しあわせ」であると語る。

この順子を軸に、他の同級生たちの人生が描かれて行く連作集。
 

「順子は何故幸せなのか?」誰もが客観的に見てもとても幸せとは思えない状況に居ながら自身は「幸せ」であると確信している順子。それは誰も羨むことの無い「幸せ」です。

人生、誰もが決して順風満帆ではない。
ならば「足るを知る」ことが幸せであるのか?
結論は出ない。

果たして順子は本当に幸せなのだろうか?
幸せであるかどうか、結局誰が決めるものなのか?

各章はそれぞれの女性の名前と年代がタイトルになっています。
1984年に始まり2009年までの25年間というスパンで語られます。

この物語の構成力は見事です。

一気に読まされてしまうし、非常に上手い作家さんだな~と思います。