それほど厚くない文庫本なのに1巻1,500円(税込みだと@1,650円)で上下2冊!高い!
それでも「傑作」でしょう。
手元に届いてあっという間に読了です。勿体ない。
今年3月にライアン・ゴズリング主演の同名映画が公開されます。
当然、鑑賞予定ではあるのですが、もし興味がある方がいれば何としても小説を先に読むべきです。
勿体なさすぎる!!
「火星の人」が映画化(「オデッセイ」)された時もそうでしたが、映画は時間の制約がある以上(ヘイルメアリーも上映時間156分という前情報あり)、内容は相当端折らざるを得ず、細かなディテールや物語の中で積み重なるべき「時間」がおざなりにされる。
オデッセイは映画も良い出来でしたが原作の充実度から考えるとあくまでも抽出されたエッセンスという感じでした。
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」はハードカバー(2021年5月)から文庫化(2026年1月)まで尋常ではない待たされ方をしました。5年、、、
これ、通常の出版感覚では考えられないくらい文庫化が遅いです。
明らかに映画公開を待った抱き合わせ商法かと。ハヤカワも俗っぽいことしますねえ。
「火星の人」の時も映画に合わせて1冊だった文庫をわざわざ2冊に分けて発売しなおしてるし。
あまり商売商売すると白けるなあ、、
それでもこの作品が傑作であることは間違いないです。
ホーガンの「星を継ぐもの」の様に謎が解明されて行く(それも理詰めで)知的興奮がある。
科学的アイディアもそれを補う理論的な展開も素晴らしい。
中にはトンデモ理論も含まれるでしょうが、作者は理系の方なので整合性のある決着の付け方には納得できます。
ようやく一つの問題を解決するとまた希望を覆すような新たな難題が起きる。
その度に挫折しながらもそれを解決していくために主人公は持てる知恵と知識を総動員する。
それにかけがえのない協働とリスペクトある役割分担。
読み進めると登場人物の表情が活き活きと見えてきます。
SFと言えども物語はシチュエーションではない。やはり人物の描写なのだと感じさせてくれる。
特に主人公のグレースの描写が秀逸です。
この方、ちょっと情けない。
だが、どれだけ絶望的な状況に陥ってもどこか飄然としている。
絶望の淵でしばらくは泣いていてもやがて立ち上がる。
キリっと立ちあがるのではなくヒョロヒョロっと、です。
常にユーモアを忘れない。
故に己を客観的に見る事ができ、そこから別の手立てを計ることにも繋がる。
アンディウィアーの作品では火星の人の主人公マーク・ワトニーもこのタイプ(アルテミスはちょっと違う)です。
明日に対して大いなる希望を抱いているわけではないが、明日になったら少しは何か良いことが起きるかもしれない、かな。
だから明日まで待ってみようかな、、、
ヒトに内在している「進む」というエネルギーを感じます。
結局こういう人が一番強いのではないだろうか?
よく引き合いに出され、同時に語られることもある「三体」とは全く異質の作品かと思います。
申し訳ないが個人的には「三体」は本当につまらなかった。
あれを読んで絶賛している人は普段SFを読まない層なのかもしれない、とまで思ったり。
「三体」は読み進めども登場人物は平板で表情が全くと言って良いほど見えてこない。
つまり人物が全く描けていない。役割の看板でしかない。
誰を誰とシャッフルしても物語が成り立つという異様さ。
それ故、設定のアイディアだけで引っ張る話(でもSFはそれだけで良いんだろうか?)なので結局面白くないのです。
設定のアイディアがもっと画期的なものであれば違ったかもしれませんが、それも既視感ありありだったので余計にそういった印象を受けました。
「三体」はハードSFだからキャラは重要じゃないなんて意見もあるようですが、ハードSFでもイーガンとか決してそうじゃないと思います。
残念ながら行動原理に整合性の無い人物がわらわらいっぱい出てくるともう違和感しかありません。
非西洋という一点のみが評価されたのでしょうか。
ちなみに「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は2022年ヒューゴー賞の最優秀長編部門にノミネートされましたが受賞はしてません。
「星を継ぐもの」に至ってはノミネートすらされてないし。求める価値観の相違なのでしょうか。
まあ、両作品ともとんでもなく面白いです。
なお、この作品、巻頭の辞でジョン、ポール、ジョージ、リンゴに捧げられています。
理由は読んでのお楽しみ!
読んで損はない作品です。
映画もそれなりに期待してます。
映画を見る前に本を読むつもりの人はこれ見ない方が良いです。

