興味を持たれる方は少ないかもしれませんが。
前回の記事で英国のバンド、BIG BIG TRAINのヴォーカリストである David Longdon が昨年急逝したことをお伝えしました。
しばらくは、故人を偲ぶというわけではありませんが、なんとなくバンドの過去のアルバムを聴いたりしています。
Longdon がバンドに合流した2009年以降、それなりの数の作品が世に出されていますが、その中でも特に素晴らしいと感じるのが、2013年9月にリリースされた「English Electric: Full Power」という2枚組のアルバムです。
このアルバムは2012年9月リリースの「English Electric Part One」と
2013年3月リリースの「English Electric Part Two」という2枚のアルバムの全ての曲と新曲4曲を合計19曲を曲順を入れ替えて一つの作品として再構成したものです。
かなりボリューミーな作品ですが、内容はとてつもなく充実しており、バンド史上でも最上の部類に入る素晴らしいアルバムだと思っています。
この時期のメンバーは以下の6名となります。
Nick D'Virgilio – drums, backing vocals
Dave Gregory – electric guitar, banjo, mellotron
David Longdon – lead vocals, flute, acoustic guitar
Danny Manners - keyboards, piano, double bass
Andy Poole – keyboards, acoustic guitar, mandolin, backing vocals
Gregory Spawton – bass guitar, electric guitar, backing vocals, acoustic guitar, keyboards
ギターのDave Gregory(元XTC)やキーボードのDanny Mannersが
正式にメンバーとして加わり、正に鉄壁の布陣で、演奏には全く隙がありません。
長尺の曲をこなす演奏力と構成力、どこをとっても一流品と感じます。
収録曲はこれぞまさに英国という感じ。
リリカルなのに、ある種、影がある感じ、全体を覆う湿気(褒め言葉です、、)は米国音楽には見られない魅力です。
なお、バンドには録音時もライブ時も基本、トロンボーン、トランペット、
フレンチホルン、ユーフォニウム、チューバの5人で構成されたホーンセクションが加わるのですが、このメンバーも音楽的にかなり貢献していると思います。
叙情表現なら絶対にストリングス系でしょう?と思いきや、ホーンセクションが醸し出すアンサンブルは素晴らしく、リスナーを煽ります。
個人的には何といってもDave Gregoryーのギターですね。
この人本当に「適切な」プレイヤーなのです。
楽曲における自身の役割をきっちり理解しており、過剰に弾くことはないけれど、要所要所を埋め、ある時は楽曲を引っ張る役割もこなす。
こういうミュージシャンが真に「上手い」プレイヤーなのだと思います。
このアルバムの後、創設者の一人であるマルチプレイヤーのAndy Pooleが脱退してしまいますが、2014年にRikard Sjöblom (guitars, keyboards, backing vocals)とRachel Hall (violin, viola, cello, vocals) が加入してまたバンドは充実します。
しかしながら、更に数作を経た後、昨年の頭までにDave Gregory、Rachel Hall、Danny Manners の3名が去り、バンドは核とも言える存在のGreg Spawtonと、David Longdon、Nick D'Virgilio(drums, vocals, percussion)、Rikard Sjöblomの4人体制になります。
このメンバーにゲストを加えて昨年夏前には新しいメンツでアルバムを出しました。ここでは試行錯誤段階という感じでした。
そんな中、昨年11月末にLongdonが急逝。
なんとか続いて欲しいバンドではありますが、この先、どうなって行くのかわかりません。
さて、アルバム「English Electric: Full Power」から数曲紹介します。個人的には名曲が目白押しです。
ちょっと長いビデオもありますが興味のある方は是非!
損はしないと思います。
「East Coast Racer」
長尺の曲ですがこれは是非LIVEで!
この曲は1938年7月3日、蒸気機関車として世界最高の時速203kmを記録したマラード号のことを歌っていると思われます。
歌詞に出てくる「青いロケット」はマラード号の流線形の印象的なブルー・ボディだし、「ジョーとトミー」の2人とは機関士のJoseph Duddingtonと機関助士のThomas Brayのことなのでしょう。
最高速度へ至る迄の緊迫した感じと伝説へ飛翔する様子が見事に楽曲になっています。後半の盛り上がりが素晴らしい。
ホーンセクションも効いてます。バンドの核であるSpawtonの作曲です。
「Uncle Jack」
ギターの音とコーラスが印象的な曲。ホント良いメロディラインですー。
Longdonの作品です。ジャックおじさん。英国の田舎の風景が目に浮かぶような。
歌詞に出てくる「Hedgerow」(生垣)という単語は他の曲にもよく出てきますね。後半の畳みかけるような単語の羅列が重い。
スイカズラは「Honeysuckle」なんですね、、、
「Keeper of Abbeys」
修道院の番人。これ、以前にも紹介しましたが、かなり好きな曲です。間奏のエレクトリック・シタールはビザール・ギターが大好きのDave Gregoryなのでコーラル製のものでしょうね。Spawton作曲。
「Swan Hunter」
LongdonとSpawtonの共作。
恐らくSwan Hunterは造船会社のことだと思います。一時期の高い失業率と閉鎖される造船所。歌詞に出てくるTyneはタイン川のことか。Swan Hueterで働く父と息子の物語なのでしょう。
英国の歴史や足跡を淡々と辿って曲にすることはBIG BIG TRAINの特徴です。1曲がそれぞれ一遍の物語です。
これもLIVEのテイクでどうぞ。
「Curator of Butterflies」
蝶のキュレータの女性が主人公の歌。これもSpawtonの作品です。
彼女が踏み出そうとしている一歩とは、どこに向かってのものなのか非常に気になるところですが、、、これまた物語なのです。
やっぱり良い曲が多いと思います。