みをつくし料理帳 / 高田 郁 | 音楽見聞録

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たまに時代小説も読みます。

山本周五郎、藤沢周平と言った大御所のものはもちろん面白いのですが今回紹介するのは高田郁(たかだかおる)さん。

中でも代表作たる「みをつくし料理帳」シリーズ。
2009年5月に第1作「八朔の雪」が発表され、2013年6月に発売された「残月」が第8作目になる現在進行形の文庫描き下ろしシリーズです。(年に2冊のペースです。)

基本的に1冊が短編4編で構成された連作。舞台が料理屋、主人公が女料理人なので毎回何がしかの料理が狂言回し役をつとめています。驚きなのは執筆前に作者が作中の料理を全て自分で実際に作っていること。
その体験に裏打ちされた料理の描写は格別に見事です。

とは言ってももちろん料理話ではありません。(しかし、巻末には各話に登場した料理の作り方が出ているというサービスぶり)
人情味あふれた江戸を舞台にした小説。

舞台である「つる屋」のある九段坂の俎板橋は私自身、昔良く通っていた場所なので、お~この坂をあのお方が上がって行くのねえ~などとなるほど感もひとしおです。(もちろん架空の店なのですが・・・)

ストーリーや設定は他所で調べていただくとして、高田郁さんのポイントは物語の運び方にあると思います。
藤沢周平の小説が冷徹な眼差しで語られる話が心に残る、ややハードボイルドなタッチであるのとは逆に、とことん人情味あふれる書きぶりです。(藤沢周平の場合は、ハードに書きながら人情味を感じさせると言う名人芸です)

人気作家の山本一力あたりもこの路線だと思いますが、私にとって彼の小説はちと息苦しい。直木賞をとった「あかね雲」もそうだったのですが、やや押しつけがましいストーリー展開を感じます。個人的な受け止め方の差だとは思いますがいくらなんでもやりすぎ?といつも読後に少しばかり違和感を憶えます。まあこの辺りは本当に好みの問題になってしまうと思います。

それに比べると高田郁の小説は実に肌に合います。良い加減で泣かせてくれるしそれだけじゃ終わらない突き放しもある。
元漫画原作者という異色の肩書でスタートした作家ですが今や時代小説家として確固たる地位を築いていると言えるでしょう。

このシリーズ、この先どんな展開になるのかわかりませんが、作者はきっちりラストまで考えてから書き出すタイプの方との事なので既にその「雲外蒼天」たる光景は準備されているのでしょう。

とにかく脇役に至るまで登場人物が皆魅力的に描かれています。

秋の夜長、何か面白い本ないかな、とお探しの方にはちょっとお薦めです。