ライトスタッフ | 音楽見聞録

音楽見聞録

単なるリスナーが好きな音楽について勝手きままに書き散らかし。
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ライトスタッフ/サム・シェパード



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 1983年公開の映画



 原作はトム・ウルフのノンフィクションのルポルタージュ形式のものでした。原作を先に読みましたが一体これをどうやって映画にするんだろう?単なるドキュメンタリーっぽい記録映画にするつもりなのか?という先入観がありました。


 日本で公開された時も上映時間が約40分近くカットされた短縮版だったのでこの作品の全貌を見る事が出来たのはDVD(当時はLDでした・・・)化されてからです。いや、たまりません。大好きです。この映画



 舞台は1940年台後半の米国。どちらが先に人間を宇宙空間へ送るかと言った米ソの宇宙開発競争に翻弄されるパイロットやその周囲の人々。

 過酷な試験の末選ばれる7名の宇宙飛行士たち。彼らが持っているのがいわゆる「ライト・スタッフ」と呼ばれるもの。「正しい素質」もしくは「本物の資質」を持つ男たち。


「翻弄される」と書いたが彼らに主体性が無いわけじゃない。却って未知なるものに挑戦したいという正にこれまでアメリカを支えて来たフロンティア・スピリット、限りない願望ゆえに彼らはパイロットへ志願したと言えます。このあたりの微妙なナショナリズムっぽさが鼻につく人にはあまりおすすめできない映画かもしれません。が、私には「男」の映画だと思える。



 一方、華やかな舞台に立つマーキュリー計画の宇宙飛行士とは異なり、とりつかれたように自らのジェット機での速度記録更新に挑み続ける男「チャック・イエーガー」。彼は人類で初めて音速の壁を越えた男である。それ以降もマッハ2、3の世界を目指して彼は飛ぶ。ひたすら飛ぶ。見えないその先を目指して。

 イエーガーにとってこれは自分が自分であるための存在理由。



 「彼の一匹オオカミ的存在が宇宙飛行士たちと対比して描かれている」、という評論を良く聞く。対比して描かれてはいるが、確実にイエーガーが宇宙飛行士たちに寄せる思い(決して口にはしませんがね)は強くあるし、反対に宇宙飛行士が抱き続けるイエーガーというパイロットへの尊敬の念も確実にある。一切語らないがお互いのリスペクトがひしひしと伝わってくる。これらが見事に一本の筋となって彼ら双方にある「ライト・スタッフ」を証明している。



 TV中継などで時の人にまで上りつめる宇宙飛行士たち。脚光を浴びるその影でふと我にかえるとそこにあるのは飛ぶことに対する熱い思い。馳せるこの思いは結局のところイエーガーと何ら変わるところはない。飛ぶ場所や環境が異なるだけ。活躍する場が違えどもお互いの「ライト・スタッフ」を認め合っている男達の絆。これがこの映画の魅力だと思ってます。



 映画、最後の場面でのイエーガーの飛行と帰還。大気圏高く上昇したイエーガーが一瞬垣間見るその先の「宇宙」。あの時の憧れにも見えるイエーガーの一瞬の表情。彼ももしかしたら宇宙へ行きたかったのかもしれない。或いは未知のものに対する押さえ切れない思いが・・・。

 その後起きた事故の詳細を小説版で知っていたためイエーガーがその足で帰還する場面には余計に感動を覚えました。誰に賞賛される訳でもないスポットライトを浴びる事の無い挑戦。しかも米国はもはや大気圏内でのスピード競争にこれ以上経費を割くつもりはない。



 そして画面はイエーガーからバトンタッチされた思いを引き継ぐように発射される若手宇宙飛行士の駆るロケットが地球周回飛行へ・・・いや~見事な構成です。



 アカデミー賞は「編集」、「作曲」、「音響」、「音響効果」の4部門を受賞している。

特に音楽が良い。ホルストを目一杯引用していますが、かつてロッキーのテーマで一世を風靡したビル・コンティの本作品はもしかしたら彼の最高傑作かもしれない。



 また、イエーガーを演じるサム・シェパードがむちゃくちゃカッコ良いんだよね。


<追記>

 こんなに久しぶりに追記を書くとは思いませんでした・・・先日、とあるクイズ番組でマーキュリー計画でション・グレンの搭乗した宇宙船の名前は?(うろ覚えですみません)という類の問題が出て、正解者はいませんでした。私はすぐに「フレンドシップ7号」だと思ったのですが、正解はマーキュリー6号(正確にはマーキュリー・アトラス6号)。でもねえ。正解はあくまでも計画に付けられた名称でNASAの誰も、またパイロットも皆通称の「フレンドシップ7」と呼んでいるみたいですね。

 そういう意味ではアラン・シェパードの乗った「マーキュリ3」は「フリーダム7」だし、ガスの乗った「マーキュリー4」は「リバティベル7」、スコットの「マーキュリー7」は「オーロラ7」、シラーの「マーキュリー8」は「シグマ7」、クーパーの「マーキュリー9」は「フェイス7」とほぼ全ての計画に通称があり、その通称の名称の後ろには「7」が。これは宇宙飛行士が7名いたこととラッキー7のげんかつぎがあるのかもしれません。

 それにしてもあのクイズ、「フレンドシップ7」と答えた私は果たして不正解だったのか気になるところです。(2010.9.10記)