In the Court of the Crimson King / King Crimson | 音楽見聞録

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クリムゾン・キングの宮殿 (ファイナル・ヴァージョン)(紙ジャケット仕様)/キング・クリムゾン
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「クリムゾン・キングの宮殿」
 これからも長期間、恐らくは語り継がれて行くであろうプログレ界の名盤として、やはりこのアルバムを紹介する事になってしまいました。


 今更、個々のメンバーの出自等を紹介しても仕方ないのでインプレッションのみになります。


 まずねえ。ジャケット。手にとるのを一瞬ためらうようなこのインパクト。苦悶に満ちた崩れゆくような男(?そもそも人間なのか?)の表情が強烈に迫って来ます。何だかわからないけど苦しそ~う!これはCDサイズではなくやはりLPジャケット・サイズで体験して欲しいです。これだけで内容を知らない聴き手に本当に色々なイメージを抱かせてしまう作品です。良いのか悪いのか・・・・


 初めてこのアルバムを聴いた時、まず1曲目の「21世紀・・」での歪んだヴォーカル、歪んだギター、歪んだサックス。それと見事なまでのジャズっぽいドラミング、中間部のスピード感あふれる展開、怒濤のユニゾン・フレーズなどに耳を奪われ、「いや~クリムゾンって叙情味のあるプログレとはちょっと違うな~」と感心していた所・・・間髪置かずに2曲目が。

 イアン・マクドナルド大活躍の「風に語りて」になだれ込む。マクドナルドの甘美なかゆい所に手が届くようなフルート、フリップのトーンを絞った甘い音色のギターが正に聴き手を包みこむような印象。夢幻的な、これぞブリティッシュのプログレ!という曲。どこかにトラディショナル・フォークそれにクラッシックの要素を感じる。

 この2曲の対比、コントラスト、目も眩むような展開にまずヤられました。動から静へのつなげ方が見事。


 で、続いてとどめが来ます。メロトロンが溢れかえるいかにも大風呂敷なプログレらしい「エピタフ」へと繋がる充実のA面。わかっちゃいるけど引き込まれてしまう。ここまで文句ないです。


 B面に入るとまずは子守歌のような「ムーン・チャイルド」。この曲の旋律、実はとても好きです。ただその後展開される本曲の大部分を占めるインプロビゼーション・パート。これはもう少し短くても良かったと思う。やるな!とは言わないが。なぜならこの第一期クリムゾンは旋律が命であると考えているから。「太陽と戦慄」以降のクリムゾンとは明らかに異なるグループであり、あまりに枠をとっぱらったインタープレイはとにかく似合わない・・ような気がします。このメンバーではアドリブはあくまでも一定の構成の中でこそ光るプレイが生まれる印象がある。


 そして終曲はタイトルでもある華やかな「宮殿」。この曲も中間部の展開に少々無理があるような気もしますが、間違いなく単なる雰囲気以上のものを伝えてくる。ジャイルズのドラミングがとにかく凄まじい。

 ・・・・このように隙が無い5曲で構成されたアルバム。


 ピート・シンフィールドの「プログレ」コンセプトが圧倒的な演奏力に裏打ちされている。これだから強い。下手なミュージシャンが雰囲気だけをマネしようとしても無理。それは正に雰囲気だけで終わってしまうだろう。


 特筆すべきは全ての音と音の間から醸し出されている「緊張感」ではないだろうか。本当に危ういバランスの上でかろうじて成り立っている感じがする。少々のふらつきで全てが壊れてしまうような。計画して出来たというより、メンバーお互いが触媒となった結果がたまたまこういう形になった、という作品なのでは?


 ジャケットの紙質の独特の手触りはLPを所持していない今でもしっかり憶えている。

 メンバーを変えてほんとに全く同じコンセプトで作った2枚目「ポセイドン」。それなりの完成度は誇るが、やはり緊張感や演奏から感じる意欲は明らか~に低下している。どこか演じているみたい。

 宮殿の時のメンバー間の発言力を考えてみる。それ以降のフリップ独裁状態から考えると、この時期はシンフィールドも入れた5人が5人とも同等の発言力を持っていたような気がする。誰かに束ねられるのではなくそれぞれの意志で動いたバンド。作曲面で光っているのはマクドナルドだし、ジャイルズのドラムと合わせて演奏面でも彼が一番表面に出てきている。

 
 それ故長続きさせる事は当初から難しいバンドだったんでしょうね。思えばフリップのこの後の活動はこのアルバムを異なる方法論で再現しようとしていただけなのかもしれません。 太陽と戦慄~暗黒の世界~レッド、で螺旋を上り詰めるまでは。