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小説(笑)を掲載しています。良かったら見ていってください。

「…あれ? おかしいな…。何で…?」

あたり一面砂漠。そこで一人で立つ女性の周りには怪しい薬がたくさん転がっていた。そして、男性の

死体。

「私が望んだ世界は…、こんなんじゃない。これが私の…、本当の…?」

泣きながら笑っている。この状態が10分も続いた。

和室。そこには小さな牢獄があった。中には血まみれの死体が2つほどある。そして、それを座りながら

見つめる女性。

「…、何で…?」

涙を流しながら上を向く。

「!?」

見上げた瞬間。ナイフを持った女性の姿が見えた。あわてて逃げようとするがすでに遅かった。

「やめっ…」

グシャァッ‼ ナイフが急所に刺さった。そこには新たな血が流れる。

「み、や…ま……君。たす…」

言葉を言う終わる前に、女性は意識をなくした。和室には、それを笑いながら見つめるもう一人の女性

の姿があった。


日本でたった一つ。他の県とは違ったシステムを取り入れている県があった。そこは「市」ではなく「地

区」というものを8つに分けていたそれらの地区はA~Hまでの大文字で明記されていた。

そして、A地区にあるとある学校。そこには一人ぼっちの中学2年生がいた。

彼はいつも一人で家に閉じこもり、「ネットゲーム」をしていた。彼には将来も何もない。

学校ではいつも携帯でゲームをしていた。そして、下校の時を待つ。

今日も、ホームルームの途中にも関わらず下を向いて携帯ゲームをしていた。

「最近、地区の住民が行方不明になる事件が多発しているから気をつけるように。では、ホームルーム

はこれで終わり。気をつけて帰るように」

教卓に上に手をのせて、前かがみで喋っていた教師が教室から出て行った。その瞬間から教室の雰

囲気がガラリと変わる。

「今はお前の家に集合な。途中まで一緒に帰ろうぜ」

彼らが背を向けた瞬間、睨みつけながら立ち上がる。

(あんな奴ら。ぼくは大嫌いだ)

彼らのようなものを見るとこう思ってしまう。『宮間 大機(みやまだいき)』。彼はいつもどおりに一人で下

校した。


家に帰ると、彼は自分の部屋にすぐに向かい、バッグを勉強机に置いた。そして勉強机の隣に置かれ

ているデスクトップの電源を入れてベットに転がった。

「…、そろそろいいかな?」

5分。その間ずっとベットに転がっていた。立ち上がると椅子をデスクトップの前に置いて座った。

カタカタ…、パチン。インターネットでとあるサイトを検索しログインした。

それはネットゲーム。彼はそのゲームに莫大なお金を入れている。

(……、僕にはこれしかないんだ。…ん?)

メニュー画面に表示されているメッセージが点滅していた。クリックするとそこには知らないアドレスが明

記されていた。

(…、迷惑設定を…)

しようとしたが、どんな内容かが気になったため文章を読んだ。

「『リアル。こう言えば、あなたもゲーム参加者』…? …、面白そうだし言ってみようかな」

立ち上がると部屋の中央まで移動して、呟くようにして

「リアル」

呟いたはいいが、この後何も起きない。いや、起きるわけがない。

(…、期待した僕が馬鹿だったな)

少し照れながら再び椅子に座り、ゲームの世界へと戻って行った。


翌朝。机の上に置いていた携帯を持って画面を見ると見たことのない項目ができていた。

「『マップ』…? 何だこれ?」

開いてみると、自分の住むA地区の全体マップが表示された。ボタン操作で、拡大、縮小もできる。

「な、何これ…? あれ、これも見たことないな…」

マップの下に『エターナル』という項目がある。早速開いてみると『パワーアップ』という文字の下に半角

数字がたくさん表示されている。

「……まあいいか」

とりあえず携帯をポケットに入れて1階のキッチンへ向かった。

レトルト食品を手順の通りに調理し終わり、それをテーブルに運んだ。椅子に座ってテレビをつける。

(またこのニュース…)

ニュースの内容。それは1ヶ月前から頻繁におきている『連続強盗事件』。他人の携帯を盗んで逃亡す

るそうだ。

(携帯なんか盗んでどうするんだろう…? どっちにしろ、俺には関係ないよね)

レトルト食品をスプーンですくい、口に入れた。


登校中。携帯に表示されているマップを見ながら、

(しかし、このマップ…、すごい正確だな…まるで上空からこの地区を見ているみたいだ…、…あれ?)

気になったところを拡大してよく見る。人が動いているのが見えるのだ。

(ま、まさかリアルタイムで…?)

自分の現在地を表示させ拡大させる。マップをよく見てから周囲を見る。全く同じ光景がマップからでも

見える。

(な、何で…、もしかして、昨日の…? だとすると、ゲームが…? まさかな)

携帯を閉じてバッグにしまう。ため息をついて再び足を動かし始めた。

教室。授業中はいつもノートに落書きをしていた。

(マップ、エターナル…、何なんだろう?)

しばらく考え込んでいると、北の方向から視線を感じた。睨みつけるようにしてみると、自分の前の席に

座っている女がこちらを顔を傾けニッコリと笑ってきた。

(なっ…っ!?)

相手が前を向いた後もしばらく見ていると彼女は筆箱から四角いキューブを取り出して遊び始めた。他

の生徒が問題を解いている途中。担任の教師は見て回っていた。そしてタイミング良くそれを見て、

「瓜島(うりしま)…、お前問題はどうしたんだ?」

あきれた顔で言う教師に対して彼女は、

「問題が解き終わったので頭の体操をしているんです。前に先生が頭の体操になるものは持ってきても

いと言っていたので」

キューブをガチャガチャと色があうようにやりながら答える。教師はため息をついて見周りを再開した

(瓜島 マイカ。成績が優秀で、学校中の憧れの的。…、この差は何なんだろう。今の自分が残念に思

えてくる…)

自分のノートを見てため息をついた。


放課後。一人下駄箱へ向かっている大機。しかし、

(…誰かに後をつけられている気がする。…、マップを見ればわかるかも?)

携帯を開いて自分の現在位置を表示させた。少し操作すれば建物の中まで見れることに大機は驚い

ていた。

(中まで見れるのか。一体どうすれば中まで見れるんだかね)

自分から後ろの方向が見えるようにマップを表示させると、やはりつけられていた。しかし、

(うっ、瓜島 マイカッ!? じょっ、冗談だろォっ‼)

心の中で叫ぶと走って下駄箱まで向かった。

靴をはいて、外に出た彼は急いで自宅へ向かった。

(な、何で今日はこんなに…ッ。最悪だぁ…)

少し涙を流しながらも大機は走っている。マップを先程から見ているが、まだつけられている。後ろを振

り返れば、隠れもせずに一直線に走ってくる瓜島 マイカの姿が見えた。

(つ、ついたっ‼ 速く入ろう…‼)

自宅の敷地内に入り、急いでドアを開けて入る。

ガチャリッ

(鍵は閉めたし…、これで安心だよな…?)

ピンポーン。インターホンの音がした。そして、

「宮間君ーっ。ちょっと話したいことがあるんだけど?」

出たら殺される。誰もが普通ならこう思うだろうが、

(は、話すだけなら…)

鍵を開けてドアを開けた。前には瓜島 マイカが後ろに手を組んで立っていた。

「こんにちは。さっきはごめんなさい。でも急いで伝えないとあなたが危ないから…」

「お、俺が危ない…? ど、どうしてさ…?」

マイカはポケットから携帯を取り出して大機に見せた。

「こ、これ…」

自分の携帯にあるマップと同じものがそこには表示されていた。

「やっぱりそうなのね。やっぱりあなたも参加者なのね」

「さ、参加者…? い、一体何の…?」

「今は説明している暇はないの。今すぐ逃げたほうがいい状況だから」

携帯をこちらに見せながら操作をする。画面に表示されるマップが西側にずれて拡大した。

「こ、これがどうしたのさ…?」

「ここを見て」

彼女が指をさしたのは近くに植えてある木。そこにはニット帽を深くかぶり、マスクをしてナイフを持つ不

審者と思われる男性の姿があった。

「こいつもマップ所有者。エネミー2よ」

「え、エネミー…?」

「とにかく狙われてるから逃げるのよ」

携帯をしまうと、大機の右手を握った。

(えっ…)

そして、

自宅の敷地内から猛スピードで飛び出して今は使われなくなったビルがある東の方向へ向かった。

「今は使われていないビルの屋上に逃げるわよ。あそこなら多少時間を稼げるはずだから」

「じ、時間は稼げてもどうせ死ぬんだろぉっ‼?」

走りながら泣く大機。マイカは後ろを見て微笑んだ。

「大丈夫よ。あいつは私が『殺す』から」

「こ、殺すって…、それじゃあやってることは一緒じゃないかッ‼」

「これはゲームよ。生き残るのは2人まで。このままじゃ最初の脱落者は私たちよ」

再び前を見るとスピードを上げて走る。

(さ、さっきから何を言ってるんだ…? ゲームとか、エネミーとか…、やっぱり昨日のあれが駄目だった

のかな…)

おそらくこの事態を招いてしまった原因は大機地震にある。機能のあのメッセージ。あれを開いてなけ

れればこんなことにはならなかった。涙がたまっている両目を左手でこすりながら思っていた。

「そろそろつくわ。エレベーターに乗って屋上まで行くわよ」

突然の出来事に宮間 大機はついていけてなかった。体も、心も。


屋上。そこは広々として風が気持ちいい場所だった。しかし、今はその風にあたっている暇はない。二

人の死のカウントダウンはすでに始まっていた。

「こ、こんなところに来てどうするんだよッ!? 今日初めて喋った人と共倒れなんて俺はゴメッ」

「そうね。でも、まだ死ぬときまったわけではないわ。…あなたの持つ『エターナル』。それなら簡単にエ

ネミー3をゲームオーバーにできる」

大機は携帯をポケットから取り出して、エターナルを表示させる。

「…、『パワーアップ』…」

「これを使って」

マイカが屋上の入り口に立っている大機に近づいてあるものを手渡しする。

「弾…?」

それから少し時間がたって。例の不審者が屋上に来た。周りを見渡して2人を探し始める。

(チャンスは…一度! マイカが合図を出したら…、これを相手に投げつける…)

大機はもう一度、マイカが先程言っていた言葉を思い出す。

「マップが保存されてる携帯を壊せばいい。もちろん、急所を狙ってもいいわ」

柵の向こう側に隠れながらマイカの合図を待つ。そして、

ガンッ‼ 力強い音がなった。それと同時に大機は立ち上がり、弾を投げた。すると、

ビュンッ‼ 手で投げたとは思えないほどの力と速さを持った弾はそのまま相手の頭を直撃した。

「あ…」

大機はエネミー2をただ見ていた。相手は頭に手を当てようとするがその前に倒れてしまった。マイカも柵を乗り越えエネミー2を見る。

「…、そろそろかな」

マイカが死体を見ながら言った。すると、

グルンッ、この音がなると同時にエネミー3は流れた血と一緒に一瞬にして消えてしまった。

「こんだけ?」

何かに期待していたマイカは背伸びをする。大機は何が起こったのか全く分からずにいた。とりあえず、

柵を乗り越えエネミー2が立っていた場所まで移動した。

「ほ、本当に跡形もなく消えた…。こ、こんなことって…」

「これがこのサバイバルゲームなの」

微笑みながら言った。大機は冷や汗をかきながらマイカを見た。

「サバイバル…、ゲーム…?」

「そう。2人だけが生き残れるサバイバルゲーム。私たち以外のエネミーを『殺して』勝者になろう?」

「何で…、簡単に『殺す』とか言えるのさ…?」

大機は脅えていた。これからの事にも、『瓜島 マイカ』にも。


その日の夜。大機はベットに寝転びながら改めて『マップ』と『エターナル』を確認する。

「…、サバイバルゲーム。生き残りをかけた…、お互いを殺しあう…」

ため息をついて起き上った時。

ピピッ。携帯にメールが入った。確認すると、アドレスは先日の妙なメッセージのものと一緒だった。

「…、『本日、このサバイバルゲームについて改めてルール説明をさせていただくべく、説明の場を作ら

せていただきました。場所は『空間24 大聖堂』。お待ちしております』…? 一体どうしろ…、」

言葉が途切れた。次に瞬きした時には全く違う風景に変わっていた。周りを見渡すと、中央の謎の物体

を囲うようにそれぞれの足場が作られていた。

「ほう、君がエネミー1か」

声が聞こえたほうを振り向くと、シルエットに包まれた人がいた。おそらく成人男性だ。

「エネミー1。丁度、お前の話をしていたところだ」

中央の謎の物体から声が聞こえる。大機は声がです、ただ驚きながら周りを見ることしかできなかっ

た。

「それでは、全員揃ったところで話をしよう。自己紹介が遅れたな。ゲーム支配人の『リアル』だ。それ

では、早速ルールの説明といこうか」

一度言葉をきり、説明を始めた。

「このゲームは2人だけが生き残れる『サバイバルゲーム』だ。ルールは特にない。互いの持つマップと

エターナルをうまく使い、相手を殺せ。質問等が有るやつは…、む! ではエネミー10(エネミーテン)」

大機が周りを見ると、一人手をあげている人物がいた。

「マップについてなのだが、これは何の意味がある?」

「このマップは、リアルタイムで自分の住む地区を見ることができる。なお、エネミーが地区に侵入した

場合、左下に赤い点が表示される」

「相手の地区に侵入すると、その地区に住むエネミーに監視されることになるのか」

「うまくやらなければならないな」

他の参加者が言う。

「マップの説明をしたならば、『エターナル』についても説明しよう。エターナルはそれぞれ違った力を持つ。参加者10人にあわせ、10個のエターナルを作りそれをランダムに送った」

「マップとエターナルをうまく使って、勝利すると。でも、殺されたらどうするんだよ?」

大機がリアルに聞いた。リアルはこの県の全体地図を出した。

「これを見ろ。エネミー3の住んでいた地区Bがなくなっているだろう?」

遠くから見ても分かるぐらい、そこだけえぐられてしまったかのようになっている。

「殺された場合は、エネミーと持っているマップの地区をこのゲームがないこの世界と全く同じ環境の別

次元へと移動させる。そして、…、来たようだな」

マップが光り出したと思ったら、えぐられてなくなっていた地区Bがそこにはあった。

「入れ替えた次元のものをこちらへ移動させる。説明は以上なる」

大機は何が起こったかさっぱりだった。頭の中がゴチャゴチャしているようで気持ちが悪かった。

「では、最後まで生き残った2名は、願いをなんでも叶えてやろう! 死ぬか、生きるか、どちらかの道は

必ず通るであろう。 では、お開きだ」

次に瞬きした時には、自室にいた。周りを見渡して、時刻を確認する。時間は10分ほどすぎていた。

(…、感覚的には5分。一体…?)

その晩、大機は寝れずにずっと携帯を見ていた。

(マップ。自分の命のようなもの…・破壊されれば地区ごと別次元へ飛ばされる。…、明日からどうすれ

ばいいんだよぉ…)

自室のベットに寝転びながら涙を流していた。大機は不安でしょうがなかった。


あとがき

皆様、大変長らくお待たせいたしました。いよいよ、

「エネミー」の第1話の公開です! 「Custom Computer」の終了からとても長い時間があいてしまいま

した。中には「疾走乙」とか思っていた方もいたのではないでしょうか? するとでも思ったの?

で、ストーリとか展開がどっかのアニメに似ているとか突っ込まない方針でお願いします。これを作成し

ていた時は影響されまくってたんですよ(笑)

それで、次の更新なのですが未定です。次いつ更新できるかは分かりませんが気長に待ってもらえるとうれしいです。

では、また次回お会いしましょう。



二人が武器を向けた場所、そこは『ヘイト・リターン』の本体となっているどす黒い円だ。しかし、

ガギィンッ! 当たらない。おそらく、

「『X(エックス)』の、完全防御コード…!?」

その後の反射で飛ばされた。立ち上がり、周りを見ればいつの間にか過去に『X』の戦った場所と同じ

風景となっている。

「こ、これは…?」

「『X』の記憶データを私に向けて一斉に展開させた。余計なものはすべて省いたが…、電脳が影響を

受けたのだろうなァ。それで、まだやるのか?」

二人に対して余裕を見せる。シャープマンはそれを見て、

「な、舐めるなァァァああああああああああッ!!」

自分の力をオーバーロードさせ、その力をソードに集中させながら突っ込んでいく。

「馬鹿めッ! その程度の力では完全防御コードを破壊するのが精一杯だッ」

「それでもいい。後は…」

勢いをつけてヘイトにぶつける。

ガギィンッ! 電脳に爆音が響く。それでもシャープマンは突き破るようにしている。

「フリーズマン」

ビキッ… ひびが入った瞬間、言葉が聞こえた。

「後は、たのッ…」

完全防御コードが破棄された時、爆風がおこった。シャープマンを軽々と爆風に飛ばされて倒れこんだ。

「無駄なことを…、フリーズマン。あれが無駄死にというものだ」

「き、貴様ァァああああああああああああああッ!」

フリーズマンの左拳が光りはじめた。そして、そのまま本体に向けて突っ込んでいく。

ドォンッ! その後も爆音が止むことはなかった。

「ふん、その程度…、何ッ!?」

本体にひびが入り始めた。相手はあわてているが、

「今頃遅いんだよォォォおおおおおおおおおおおッ‼」

バリンッ。『ヘイト・リターン』はデリートされた。


アバターをゲートアウトさせた二人はネットワークの復旧のため、サーバを操作していた。

「…、よし。これでネットワークは元通りのはずだ」

桐谷が開放された感を出して床に座り込んだ。しかし、上谷はまだサーバを操作し続けている。

「? どうした?」

「いや…、このサーバーに他の者のアドレスが保存されていて…。あ、後、『メモリー』ってファイルもあるな」

「…、とりあえずそのファイルを展開してみたらどうだ? きっと何か分かると思うが」

上谷は言われるがままにファイルを開いた。

「テキストファイルみたいだ。読んでみる。…、『リターン。それは人工的に作り上げられた世界の管理、そして

バランスを保つために存在する、私にとっての『神』だ。しかし、私は後悔している。なぜならリターンが私の知ら

ないところで何かを企んでいるからだ。今すぐにデリートしようかと思った。でも、手が動かない。仕方ないの

で、これからは彼を見守りつつ、野望を防いでくれるものが出てくるのを待ってみよう。そして、すべてが終わっ

たら罪を償おう』。…、だってさ」

桐谷は立ちあがって、上谷の肩に手を置くと

「返ろう。それを書いた人も自首するだろうし」

「…そうだ…ね」

こうしてすべてが終わった。上谷と桐谷に普段通りの生活が戻ってきた。


その後、リターンを作り上げたと思われるものは自首したそうだ。報道もされた。彼は素直にすべて答えている

ようでよかった。

それと、上谷と桐谷が帰り途中にループを確認したところシンボルのデータが消えていた。少し不安にはなった

が気にしないことにした。

そして、あの事件から1ヶ月後。

「大介。お前は相変わらず休みに入ると引きこもり状態だな」

二人はいつものようにお互いの悪いところを見つけあって言いあっていた。

「お前に言われたくないね。ろくに友達もいないくせにさ」

タイピングをしながら言った。フリーズマンは少し間を空けて、何かを言うとした時だ。

ピコンッ。ループがメールを受信した。デスクトップから目を離して受信したメールを開く。そして、内容を見た瞬

間に大介は笑った。それを見たフリーズマンが

「どうした?」

「…なんでもない」

メール画面を閉じて再びタイピングを始めた。

(…、今度はいつまで続くのかな、この日常が。いや、今は今を楽しもう。その時は、また考えればいい)

窓から外の風景を見ながら思っていた。いつもより、外の風景が奇麗に感じた。


Custom Computer 完


あとがき

少し短いですが、本日をもちまして「Custom Computer」シリーズは終了とさせていただきます。本日までありがとうございました。

そして、次に掲載するものは、

秘密です。楽しみにしていてください。

それではまた次回作でお会いしましょう。

その後。上谷はベットのうえで寝転び泣いていた。

「…、何でいつも…」

「上谷。お前少し考えすぎではないか?」

フリーズマンも説得しようとするがそれに耳を向けずに、上谷はただ泣き続ける。

そして、

ガチャリ。リビングのドアの音が開く音がした。起き上るがそこには誰にもいない。

(空耳…?)

気のせいかと思いベットに再び横たわる時。上谷 大介は見た。斧を振り貸さず男の姿を。

「お、おま…ッ‼」

グシャァ‼ 鈍い音が室内に響き渡った。血を大量に流してベットの上に倒れる上谷。


公園近く。腕から血を流しながら逃げていた。

「な、何だよ!? いきなり斧で斬りつけられるとか…。…? どうした? フリーズマン?」

先程から黙っているフリーズマンに声をかける。

「え? あっ、いや…なんでもない…」

フリーズマンは少し考え事をしていた。

(…もし俺の推理が正しければ…、あいつは俺の…)

「姿からしてNO.5(ナンバーファイブ)のシルエットと一致何だが…まさかあいつ…!」

途中で急ブレーキをかけて後ろを振り返り、桐谷から事前に貰っていた銃を取り出す。そして、

「NO.4とNO.7。ただの雑魚だったな。お前はそうじゃないといいが?」

日本刀を片手に持って顔には血が付いている。おそらく、NO.4かNO.7を殺した時についた血だ。

「ま、まさか…、二人とも、お前が殺したのか…?」

「そのまさかだ。気付いたか? 俺が『NO.5』だ」

微笑みながら説明をし、自分の正体を明かした。今度こそ、本当に死ぬ。上谷はそう思った。冷や汗を

大量にかいて足が震えている。

「こ、こんな奴と戦って…、勝てるわけ…」

立て膝をついて絶望した。もう、どうすることできなかった。

「俺のために死ね。NO.1」

急に目つきを変えたNO.5がこちらに近づいてくるのが見えてなくても伝わってきた。彼と上谷の距離が0

になる時が、上谷の寿命。そして、0になった。

「さようなら」

刀を勢いをつけ頭に斬りつけようとした。しかし、

ガンッ‼ 当たる直前に刃先に何かの弾が当たりぶれた。動きを止めて、背後を振り返る。そして、そこには

「NO.2…!」

「上谷 香気(かみや こうき)…、まさかお前がNO.5だったのはな。できれば俺達と関係のある人物を殺

したくはないのだが?」

銃を構えてNO.5を睨みつける桐谷の姿がそこにあった。上谷は急いで離れて立ち上がる。

「か、上谷…? ま、まさかな…」

そうあってはならないのだ。だが、現実は甘くなかった。

「『上谷 未来』の息子。そうだよな? フリーズマン?」

「えっ!?」

NO.5が驚きを隠せずに上谷を見る。上谷も驚きを隠せずにループを取り出してフリーズマンを見る。

「お、お前…、そうなのか…?」

「…、そうだ。あいつは俺の息子だ。だが、俺はあいつが生まれる前に死んだ。だから、あいつは俺のこ

とを知らない…」

ループをしまってNO.5を見る。

「…。息子ってことは、それなりの事を知っているんだろうな?」

「し、知っているさ! …、『FREEZE.exe(フリーズエグゼ)』。そのアバターは俺の父親なんだろう?」

彼は涙目になっていた。もう会えないと思っていたかけがえのない人に出会えたのだから。

「フリーズマン。一回ぐらい顔を…」

ループを取り出して画面を見せつける。NO.5は顔を見た瞬間、涙を流した。

「お、お父さん…」

自分のループを力強く握りしめていた。そして、徐々にループにひびが入っていく。

「な、何をしているんだッ!? ループが壊れたら、お前は…!」

フリーズマンがNO.5に言った。しかし、

「お母さん、去年急死した。だから、もう一人ぼっちなんだよ…。だから…、もうお父さんに会えただけで

いい。だから…、NO.1と一緒に幸せになって…! 俺の分まで…!」

バリンッ。NO.5のループが割れたのと同時に彼は倒れてしまった。これで、残る人数は2人。上谷と桐

谷のみだ。

「き、桐谷…」

「上谷。明日の明け方にヨシノシティに行くぞ」

突然言われた。ヨシノシティ。そこは上谷の両親が暮らす街だ。

「ど、どうして…?」

「ヨシノシティにヘイトのサーバーがあることが分かった。あと、これは関係ないがリターンがこのゲーム

の行った理由。それは、『ヘイトデータ』を集めるためだそうだ。そして、その集めたヘイトデータで攻撃用プログラム『ヘイト』を作り上げ、自分に取りこむ…」

「そ、それだけのために何でこんなに人が…」

明かされた一部の真実。彼らは明け方に、すべてが始まったヨシノシティに向かう。


シンボルの電脳。『リターン』が中央にいる。そして、その隣にはブレスマンがいた。

「そろそろ、ここもダメだ。移動するぞ」

「移動? どこへ?」

リターンがブレスマンの目の前にとある町のマップを表示させた。そして、西側に赤い点がある。

「ここは確か、ヘイトの本サーバーが…」

「ここに移るぞ。世界は、終焉の時を迎える…。『ヘイトデータ』によってな!」

笑い声だけが電脳世界に響いた。


ヨシノシティ。相変わらずのどかな町だと改めて感じた。しかし、その風景を満喫するために来たわけで

はない。

とあるビルの最層階で上谷 大介と桐谷 宗助はサーバーを見つけ出していた。

「これが、ヘイトのサーバー…」

「…ゲートインはできるようだな。多分、この中にリターンがいる」

二人はループをり出してアバターをゲートインさせた。現在は、過去とは違って音声を認識させなくとも

ゲートインが可能となっている。

電脳内部。ずっと奥まで一本道が続いている。周りの風景にはよくわからない文字が浮いている。

「フリーズマン。先に何かがいるから気をつけることだな」

シャープマンがフリーズマンに忠告をした。シャープマンは右手を『シャープソード』と呼ばれる剣に変形

させて走って進んでいった。フリーズマンも後を追いかけるようにして進んでいく。

「シャープ、この先に何がいるっていうんだよ?」

「1つは『リターン』と断言できる。しかし、もう一つは…、多分アバターだとは思うんだが? 何か思い

当たるアバターいたりしないか?」

フリーズマンと上谷には思い当たるアバターがいた。ショッピングモールで戦った『ブレスマン』だ。そも

そも最初にヘイトという言葉を聞いたのはブレスマンとの戦闘時だ。

「いるぞ。『ブレスマン』、多分こいつだな」

走りながらデータを桐谷のループに転送した。シャープマンと桐谷はそれぞれ送られてきたデータを見

る。

「ブレスマン、か。…確かこいつは…。気のせいか」

シャープマンが独り言のように呟くとデータをループに保存させた。フリーズマンはシャープマンの言葉

を少し気にしていた。


最深部。予想通り『リターン』と『ブレスマン』がいた。

「ブレスマン…!」

「久しぶりだな。でも、今日お前たちが戦うのは俺ではない」

リターンがよく見えるように端で移動すると背後からリターンが前へ移動してきた。

「やはり、お前たちか…。上谷 未来。上谷 由来」

「なっ…」

何故知っているのか。この事はごく一部の科学者の間でしか知られていないことだ。

「まあいい。こちらもお前たちを生きて帰すわけにはいかないのだからな」

丸い円の頭上にどす黒いものを浮かべて何かを始めた・

「何をする気だ!?」

「そんなもの、決まっているだろう!」

徐々にリターンとどす黒いものが合体していく。そして、それと同時に強い突風が始まった。フリーズマ

ンとシャープマンはギリギリ耐えている中、ブレスマンは耐えきれずに、

「ぐっ、がぁぁぁああああああああああッ!!」

吸いこまれてしまった。

「ブレスマン。お前も我が力の一部となるのだァァァああああああッ!」

大笑いしながら合体していき、そして、

グォンッ。どす黒い玉からどす黒い羽が出ており、左右には大きめの槍がついている。

「こ、これはッ…!」

「これが私の真の姿…、『ヘイト・リターン』だ! これで世界は私のもの! まずは手始めにこの日

本を壊滅状態にしてくれるッ!」

槍を中央であわせて何かを始めた。フリーズマンとシャープマンは警戒しながら、

「な、何を始めた!?」

「このサーバーを通じて日本各地のネットワークを麻痺させてやるッ! すべてがネットワークで管理さ

れている日本は混乱状態だな!」

現実世界では、本当にネットワークが麻痺しつつあった。日本各地のサーバーが処理しきれずにバグを

起こし、それをインターネット中にばらまいている光景がループに映し出された。

そして、これを終わらせるためには、『ヘイト・リターン』をデリートしなければならない。

「こいつをデリートしない限り、このネットワーク社会は終わってしまう!」

「フリーズマン。行くぞ」

二人のアバターは再び過去に使ったチップデータを展開させてフルパワー状態になった。

「それって…」

「0,01%をなくす…。これならッ!」

お互い戦う構えをとる相手は笑いながら二人の姿を見た。

「そんなもので、神を止めるなど不可能! やるだけ無駄だ!」

「そんなもの、やってみなきゃ…」

「なら私を倒してみろ。それが証明の証となる」

上谷と桐谷も顔を見合わせてうなづく。そして、

「「ゲートバトル!」」
フリーズマンとシャープマンが高く飛んでお互いの武器を『ヘイト・リターン』に向けた。

「「オペレーション!」」

最後の戦いが始まった。

双子のシンボル所有者に勝利してから1週間が過ぎようとしている。あらためて、時間が過ぎるのは速

いと感じてしまう。いまだに大学の校舎は直らずにいる状態で、このままだと最低でも2カ月はかかるそ

うだ。この間、上谷 大介は自分の趣味に没頭している。

「大介。勉強しないのか?」

充電台にセットさせれているループから「フリーズマン」の声が聞こえる。最近、上谷の勉強をしている

姿をあまり見ていないので、心配して声をかけているのだ。

「してるだろ? 最低限だけど…」

一応している。しかし、最低限しかしないのだ。これでは、彼の今後が心配だ。フリーズマンはため息を

ついて説得する前に話すことをやめた。上谷も、ループを見てため息をつくとデスクトップの前に置かれてい

る椅子に座り掲示板を閲覧した。

「…、何だこれ?」

途中、とあるサイトで気になるニュースを見つけた。URLが貼られていたので早速クリックして、ニュースの本文

を見る。内容は、「サーバー」の乗っ取りだ。

「えっと…、『最近、各地のサーバーをハックし、そのサーバーに保存されているデータやアクセスしているルー

プの端末情報を盗み出すという事が頻繁に起こっている。ループをサーバーにアクセスすることは極力控える

ように』…? フリーズマン、これどう思う?」

「…、控えたほうがいいと思うぞ。シンボル所有者が起こしている事件の可能性も高いし」

「考えすぎじゃないか?」

「俺は忠告したからな」

まるで怒っているかのような口調で強く言い付けるとそのまま黙ってしまった。

(何で、すぐこうなるんだか…)

ため息をついて、ループから目をはなした。これは午前の出来事だ。


ハックされたサーバーが設置してある路地裏。今、そこには一人の学生が変装をして見に来ていた。桐谷 宗助

だ。右手に手帳を、左手にペンを持ってメモをとっている。

(やはり、あいつか…。『サーバーハック』の持ち主、『NO.10(ナンバーテン)』…!)

来る前から予想はできていた。そして、それを確認するためにここへ来た。桐谷はループを取り出して上谷にメ

ールを送ろうとする。しかし、

(…いや、上谷とあいつは…)

どうするか迷っていた。


午後。上谷は病院にいた。何故、病院にいるか。それは『友人』が入院しているからだ。105室の前で深呼吸をし

て、中に入るとそこには予想もしていなかったことがおこっていた。

「え…?」

扉をあけると床には大量の血が流れており、何人もの看護士が死んでいた。窓ガラスは割れ、2つのベットはめ

ちゃくちゃになっている。

「…な、何で…? 曾根田は? 壮太は? ハハッ…、ハハハ…」

膝を床について、泣きながら笑う。笑っているのは、人間の防衛本能によるものだ。そして、入院していたのは

『曾根田』と『壮太』だったのだ。

「何で、俺はこんな…。3年前もそうだ。GATE壊滅後にやっとすべて終わったと思ったら事故で…、やっぱり俺

のまわりにいる人はみんな消えていく。最初から、誰ともかかわらなければみんなまだ生きていたかもしれな

い…」

上谷は自分に責任を感じてしまっていたのだ。

事の始まりは3年前。上谷、壮太、曾根田で3人でキャンプに行っていた日のことだ。キャンプ中、GATEの元メ

ンバーにさされたのだ。そして、その男は逮捕された。

しばらく茫然としていると、

「NO.8は壮太、NO.9は曾根田でした」

カチャリ、何者かが上谷の頭に銃を突きつけてきた。後ろを振り返ろうとするが、相手の力が強く振り返ることが

できない。

「お、お前が…!」

「だったらどうした? 私はゲームに勝ちたいから殺した。ゲームに参加するということはこういうことなんだよ」

声からして、おそらく男。さらに大人だ。

「な、何で入ってこれて…」

「サーバーを乗っ取ればその建物は乗っ取ったもの同然。私の、この『サーバーハック』にセキュリティは通用

しない」

体のあちこちから冷や汗が出ている。「サーバーハック」。自分の持つアビリティの名前に似ていることから上谷

はすぐに推測した。この男は「シンボル所有者」だと。

「ま、まさ…」

「ここまで分かればいいだろう? じゃあな、NO.1」

このままでは、射殺される。もう駄目かと思い目をつぶる。しかし、

ガキンッ、頭が押さえつけられる感触がなくなるのと同時に後ろを振り返ると、右手を押さえて通路の右側を睨

みつけていて、頭にタオルを巻いている男性の姿が目に入った。腰には日本刀もある。

「NO.2…いや、桐谷 宗助!」

通路からは銃を右手に持って構えながら歩く桐谷の姿があった。

「NO.10。やはりお前がサーバーをハックしていたのか。できれば上谷とお前を会わせることを控えたかったが、

…、あいつを釣るにはこれしかないだろう?」

上谷には何の話かが全く分からないが、二人の間ではすでに何かがおきている。これぐらいは予想できた。

「チッ、いっきに二人脱落させようってか。ハハッ…、簡単に行くかよッ!?」

ジーパンのポケットからスイッチを取り出して押すと、病院中に警報音が鳴りだした。

「何をした!?」

「この病院はサーバーの暴走により、『dream(ドリーム)』に浸食され爆発する。やっぱりこのアビリティを引いて

正解だァ!!」

笑い声を共に、通路左側にある窓ガラスに突っ込み、NO.10は脱出した。それを見た桐谷は茫然としている上谷

に近寄り、

「何をしている!? 俺達も脱出するぞ!!」

「曾根田…、壮太…、何で、何で…」

いくら桐谷が声をかけても上谷は同じような内容の事を呟いて動こうとしない。桐谷は肩を揺さぶるのやめ、しゃ

がんで上谷をビンタした。

ほっぺを右手で押さえて桐谷を見る。

「いつまで過去を引きずる気だ。過去は捨てろ。そして、未来を見るんだ」

「み、らい…?」

「本当に責任を感じているんなら、お前はあいつらの分まで生きなければならない。…、分かったら立つことだ」

上谷は顔を横に振って立ち上がると走って出口を目指した。それを見た桐谷は微笑むと、上谷の後を追った。

(…、NO.10は許さない。絶対に殺す…)

上谷には、NO.10に向けての殺意が心の中に宿り始めていた。


病院から離れた場所にあるベンチに座って休憩している二人。先程病院は爆発し、跡形もなく消えた。

「桐谷。聞きたいことがある。NO.10のアビリティは何だ?」

「答えは『サーバーハック』だ。名の通り、サーバーにハッキングして操作するアビリティだ」

「で、教えなかった理由が…」

察しがはやい上谷はすぐに気がついた。

「お前とは相性が悪いからだ。それで、話は済んだろう? 俺は用事があるからこれで失礼する」

ベンチから立ち上がり駅のある方角へ行ってしまった。残った上谷は一人ベンチに座り続けている。

「どうする?   確かに、お前とあいつは…」

「そんなもん、決まってるだろ?」

ベンチを立ちあがり桐谷が向かった方角とは逆の方向へ歩き始めた。

「NO.10は俺が殺す」

もう誰にも止められない状態だった。しかし、NO.10の居場所が分からない限り殺害は不可能だ。

「そんなこと言ったって、場所が分からなければ…」

「場所は特定できる。しかも、リアルタイムで」

ループを手に持つとタッチ操作でマップの画像を表示させる。

「これは?」

「さっき、見つからないようにハッキングした。あと、気付かれた時のために足に小さな発信器を1つ…、ね」

再びタッチ操作でマップ画像を閉じるとループをしまって歩き始めた。

「お前、今自分が何をやっているのか分かって…」

「分かってるさ。…でも、」

突然下を向いて涙を流し始めた。フリーズマンは様子をうかがうためしばらく黙ることにした。

「自分でも止められないんだ。考えるより先に、体が勝手に動くんだよ!」

腕で涙をふくと正面を向いて自宅へ向かった。


夜。上谷は夜の商店街を隠れながら進んでいく。片手にはループを持って、たびたび画面をチェックしている。

(NO.10…、あいつどこへ!?)

今上谷がやっていること。それはNO.10の見張りだ。上谷の作戦では人混みが少なくなった場所でループを破

壊。そうすれば、証拠を残さず殺害が可能。こう信じていた。

ようやく人混みの少ない裏通りに入ることができた。

(おそらく、抜け道…)

抜け道として裏通りを通ったNO.10はそのまま裏通りを抜けて瓦礫だらけのビルの中へはいって行った。上谷も

あと追って中へ侵入する。

足場のバランスが悪い場所で立ち止まるとループを操作して銃を構えた。

「そこにいるのは分かっている。NO.1。隠れてないで出てきたらどうだ?」

上谷は言われたとおりにはせず、しばらく様子見をするために隠れ続けた。

「隠れているのは別にかまわないが、ここのサーバーをオーバーロードさせてビルごと飛ばすこともできるん

だ」

それを聞いた上谷は懐に隠し持っていた銃を取り出してNO.10の前に姿を見せた。それが、相手の思惑通りだと

しても。

「ようやく出てきたか。それで、何の用だ?」

上谷は両手で銃を持ってNO.10の向けて構えた。そして、

「…、お前を殺す」

「復讐か。暇な奴だな。でも、そのうち戦うことになるんだったら…、今やっても別にいいよなァ!?」

相手も銃を構えた。そして、始まるかと思ったその瞬間。NO.10が腰に持っていたループが突然爆発した。

「「え…?」」

お互い何がおきたのか全く分からなかった。相手はただ呆然としながら倒れた。上谷が警戒しているとNO.10の

背後から銃を持った男が歩いてきた。そして、NO.10が持っていた刀を奪うと銃をしまって刀を片手で持った。

「お前は…?」

「はじめまして。俺の名前は『鵜原 綾西(うばら りょうせい)』。NO.7だ。そして、そのアビリティの正体は…?」

ループを取り出して上谷に画面が見えるように見せつける。

「俺と、同じ…?」

どう見ても上谷のアビリティの画面と同じなのだ。そしてすぐに答えが出た。

「『コピー』。相手のアビリティをコピーして自ら強化させる。ゲーム内では最強と言われているかもね」

笑顔で言いながらもNO.10の死体を力強く踏みつけている。見た目では何も感じないが、やっていることを見ると

とても凶悪ということがわかる。

(このままじゃ…、殺される…!)

相手は刀を持っている。できるだけ遠距離で戦わなければあの刀の餌食だ。銃を再び相手に向けて構える。

「別に殺す気はないさ。でも、いつかお前を殺すことにはなる」

NO.10の目の前にある穴に向かって蹴飛ばすと、背を向けてどこかへ行こうとしてしまう。今なら撃てる。そう思

っていた。だが、撃てない。手が震えて撃てないのだ。そして、ただ相手がいなくなるのを見ていることしかでき

なかった。

「やっぱり、俺は無力だ…。何もできない。ただの…!」

改めて自分の無力さを実感した。今日だけでも、3人のゲーム参加者が殺害された。残る人数は後5人(双子を

一人として数える)。上谷には生き残れる自信はなかった。


鵜原 綾西こと、「NO.7」は瓦礫だらけのビルから出て自宅へ帰ろうとしていた。

「お前だな? NO.10を殺害したのは?」

目の前から声がした。しばらく声が聞こえた方向を見ていると人影が見え始めた。

「さっきの奴と似ている…? いや、でもあいつはまだあのビルの中に…」

「質問に答えてもらおうか。お前がやったのか?」

相手は声が聞こえた方向とは逆の方向に立って頭に銃を突きつけてきた。

「…、そうだ。俺が殺した」

「そうか。じゃあ感謝しなければな」

「何故だ?」

「『上谷 大介』にとって奴は邪魔でしかなかったからだ」

「…あー、さっきの奴『上谷 大介』って言うのか。さ、質問には答えたしそろそろその銃をおろして…」

言葉が途切れた。いつの間にか頭に突き付けられた銃の感覚がなくなっているのだ。あたりを見渡すが相手は

どこにもいない。

(…音? まさか!?)

上を見上げると、上空から相手が降ってきた。横に避けて相手がどうなるかを見た。しかし、相手は片手で地面

について態勢を立て直した。

「…お前。ゲーム参加者だな? 誰だ?」

相手は背伸びをしてからNO.7を睨みつけながら答えた。

「鋭いな、NO.7。そうだ。俺は参加者だ。だが、正体までは言えないな」

「俺の事を知っているのか。ならばそちらも教えてはもらえないかな? これでは不平等だとは思わないか?」

「不平等?」

下を向いて鼻で笑う。NO.7は舌打ちをして相手のアビリティをコピーしようとした。しかし、

「!? 何故ハッキングできない!?」

何度を操作しなおすがどうやってもハッキングすることができない。

「お、お前…、一体…?」

「アビリティで最も多いものは最初にハッキングをするもの。それぐらい対策しているんだよ」

これではNO.7のアビリティはコピーしなければ何もできない。

「くそッ‼」

ポケットから閃光玉を取り出して相手に向けて投げつけた。一瞬光で前が見えなくなったせいで取り逃してしま

った。

「あれ、桐谷じゃないか?」

振り向くと、後ろには上谷 大介が立っていた。

「お前、何してるんだよ?」

「いや、…、何でもない」

上谷に背を向けてどこかへ行ってしまった。上谷は桐谷の姿が見えなくなるまでその場に立っていた。


シンボルの電脳内部。すでに5人の参加者がゲームオーバーになっている。中央の玉からいつも通り声が聞こ

え始めた。

「残っているのは、NO.1、NO.2、NO.4、NO.5、NO.7だ。バルカマンはNO.6となっている。さあ、いよいよゲームは

終盤を迎えた。果たして、生き残るの誰か。楽しみだなァ」

そして集会は終わった。それを部屋で見ていた桐谷は、

(…そういうことか。このゲームのほんとうの目的。それは…)

ゲームの本当の目的を調べていた。そして、それがたった今分かったのだ。

(やはり、ヘイトはこのゲームに関係している)

最近活動をしていないと思われていたヘイトはこのゲームに関係している可能性があると裏ではすでに言われ

ていたのだ。

ヘイト。一体何が目的か。それはまだ分かっていない。


シンボルの電脳内部。ようやく小さい体を手に入れた自称神、「リターン」。

「ヘイトデータ…。この集合体に攻撃用プログラムを組み込み…私に取りこむとき、私はこの世界を支配する本

当の神になる…。この押さえられた力では…、何もできない…!」

リターンもまた、何かを隠していた。ヘイトデータ。謎に包まれたこのデータは何のために作られたのか。

トップサーバーの電脳内部。トルネマンとフリーズマンの実力差は異常だった。圧倒的な力の前に、フ

リーズマンは何もできない。

(このままじゃ、シンボルを破壊される…! まだ…)

「まだやるか? 結果は見えている」

両手をドリルに変えて、すぐにでも終わらせようとする。フリーズマンも、拳をバスターに変えて構える。

「やってみなければ、分からない」

「…、なら私を倒してみろ。そして、ゲームに勝利しろ」

ドリルの高速回転させる。ギギィーッ、と音を立てている。1回でも当たってしまったら一瞬でデリートで

きるほどだろう。

始まった。トルネマンが両方のドリルを地面につけて、崩れた床を自分の体の周りでまわして、一斉に

飛ばした。それを見て、バスターを連射する。すべて破壊できたように見えたが、1つだけ大きな岩が残

っていた。それを拳で砕くと、そのまま走ってトルネマンに直接攻撃しようとする。

ビュンッ! 勢いをつけて、腹にパンチをしようとするが右手で軽々と押さえられる。力を入れて飛ばそうとする

が、それでもビクともしない。

「…ッ!」

フリーズマンの拳をひねって、転ばせると、首をつかんで持ち上げた。手をはなそうと相手の手首をつかんで力

を入れるが、やはりビクともしない。

「終わりだ…ッ!」

左のドリルが腹に当たろうとした。

ピピッ。音がなった瞬間、トルネマンのドリルが止まった。そして、首をつかんだまま、フリーズマンを投げ飛ば

すと、データを展開して閲覧し始めた。

「フリーズマン。今日はここまでだ」

言い残すと、ゲートアウトしてしまった。フリーズマンは頭をふって立ち上がると、一回周囲を見渡す。

「…、異常はないな」

オールも解除して、何も問題がなくなった電脳からゲートアウトした。


倉庫の置いてある細い通路。爆発音が止んだため、お互いおかしいと思っていた。

「チッ。オールを解除されたか。…、だがここまでは想定内。トルネマン。起爆スイッチを作動させて。10秒後に

丸ごと爆破よ」

(いつの間にアバターをゲートアウトさせていたのか!? フリーズマンは…?)

ループの画面を確認すると、いつの間にかフリーズマンが戻ってきていた。

「オールは?」

「解除した。でもこのままだとここが丸ごと消し飛ぶ」

ピッ。ヒロミのループから音が聞こえた。相手は、横に転がっていたスピーカーのスイッチを入れて、

『えー、この大学は私、ヒロミが乗っ取らせていただきました。10分後に爆発するように起爆スイッチが入ってい

ます。死にたくなけばその場を動かないように。ここにいる全員が、私の人質だァァァあああああああッ!』

「止めるッ!」

相手がスピーカーを捨てた瞬間に動いた。ループを操作して周囲の機械をハックすると、オーバーロードさせ

た。

「この熱気…。貴様ッ! 何をした!?」

「周囲にある機器をすべてオーバーロードさせた。どうせ起爆スイッチが入っているんだ。何をしたって同じさ」

「こいつッ…!」

ループとマシンガンを再び接続させると両手で持って連射を始めた。

(…かかったな)

ガガッ! いつも通りの威力だった。

「な、何故だッ!?」

「サイバーハック。ループのような特殊な携帯情報端末機のハックは無理だが、機械を接続させることのできる

ような機械はハックできる」

さらにループを操作する。そして、5秒後。ヒロミが手に持っているマシンガンが爆発した。なんとか瞬時に気づ

いて空中に投げたが近くで爆発したため欠片などが上から降ってくる。

ガンッ、少し大きめの欠片が肩に刺さり、うめき声をあげる。

「ウゥガァ…ッ」

その瞬間に、近くによって、相手が落とした手榴弾を手に持って見せつけた。

「終わりだ。どの方法で死にたいか?」

「なァァァああああああああッ、舐めるなァァァああああああああああああッ!」

叫んだ瞬間、周囲に埋めてあった爆弾が同時に爆発した。煙の中、上谷がひるんだ瞬間に相手は脱出経路を

確保して逃げてしまった。

「上谷ッ! 逃げられたぞ…」

「くそッ…!」


その後、大学はしばらく休校になることが決定した。事件を引き起こした女性の名前は『水沢 ヒロミ』。最近日本

に潜入捜査のために来たテロリストらしく、現在全国に指名手配をして捜索しているらしい。上谷 大介はこっそ

りを大学を抜けてきたが、多分いつかはばれることだろう。

現在は、シンボルの電脳で定期的に行われる集会最中だ。

「貴様ら4人には伝えなければなないことがある」

突然改まって言う。

「このゲームに、新しく5人の追加メンバーが入った。それでは、出てもらおう」

パチンという音とともに、電脳内の風景が一瞬にして変わった。いつの間にか、自分が立っている場所が中に浮

いている謎の円盤になっている。

「そこに立っている5人が追加メンバーだ」

声が言っている方向はフリーズマンから見て左側。2人ほど見たことのある姿をしていたが、特に気にしなかっ

た。

「では、ゲームのルールを再度説明しよう。このゲームは10人で行うサバイバルゲームだ。でも、すでに一人殺

されている」

バルカマン。ゲーム開始初日にトルネマンにデリートされた。

「それで、今から説明することが新ルールだ。参加者はループにシンボルに連動している『アビリティ』という特

殊なプログラムを持ってもらう。それを使って現実世界で殺しあえ。アバターは、ループだけでは処理ができな

いことがある。それを補助しろ。何か質問はあるか?」

「その『アビリティ』って言うのは一体どういうものなんだ?」

追加メンバーの一人が言う。こちらからは黒く見えているので特徴をとらえることができない。

「それぞれの得意分野を生かしたものとなっている。例えば、武器の扱いが得意な者には武器の強化や補助を

行うプログラムだ」

「ゲームには関係ないが、お前の名前は何だ?」

見たことのあるシルエットのアバターが言う。

「私か? 名は『リターン』。この世界を管理する神だ」

「神? 何を言っているんだ。そんなことを信じられるわけ…」

「では、これならどうかな」

言葉の途中で言った瞬時、
ゴゴゴッ、突然電脳が崩れ始めた。5秒後。その揺れは止んだ。

「今のは…?」

「アバターが存在しない世界を作ろうとすると、こうなるのだよ。アバターがいなければ、今のインターネットや電

脳は存在しない。どうだ? これで信じてもらえたかな?」

質問したアバターは下を向いて黙ってしまった。

「では、これからも定期的に集会を行う。その時、また会おうではないか。では、今日はお開きだ」

「次はお前だ」

一人、誰かに向かって言いはなったこの言葉。上谷は、自分に言われた気がしていた。

「増えたな。これからどうするか…」

「……」

フリーズマンは無言のままゲートアウトした。


「どういうことだ、リターン!? 『ヘイト』から依頼された…」

「私は最初から裏切るつもりだった」

組織のアバターに軽い口調で言った。組織のアバターは、手にソードを持って構える。

「姿を見せろ。貴様を排除させて…」

ブォンッ! 言葉が途切れた。気づけば体を真っ二つに斬られたアバターが転がっている。

「リターン。それで、これからヘイトをどうするつもりだ?」

電脳の隅に立っていたアバターが親しげに話しかける。

「壊滅させるとしよう。こうやってな」

パチンと音を立てた。しかし、ここからでは何が変わったのかまるでわからない。

「何をしたんだ?」

「消滅させた、とでも言っておこう」

「空想の神だったはずなのに、現実になってしまうとはな」

あきれた顔で謎のアバターが言うとゲートアウトしてしまった。誰もいない空間を見守るリターン。

(そろそろ、体が必要だな)


一夜明けて。寝る前に久しぶりに桐谷からメールが来ていた。内容は、

『久しぶりに会いたい。明日の11時喫茶店で待ち合わせだ』

と書かれていた。珍しく早起きしていた上谷は、時間に余裕を持つため少し早めに家を出た。

「上谷。分かっているだろうが桐谷はシンボル所有者だ。気をつけろ」

「大丈夫さ。『こんにちはそして死ね』、なんて展開はないよ」

冗談を言うとそのまま喫茶店へ向かった。

喫茶店前。周りを見渡していると、桐谷がいつの間にか隣にいた。

「…、いるんなら言ってくれ」

「すまない。では中に入ろうか」

二人とも同じ飲み物を頼むと、いつも通り一番奥の席に座って話を進めた。

「それでだな。シンボル所有者のうち追加メンバーの一人が双子ということが判明した。それで、そいつは『二人で一人』、つまり両方殺さなければゲームオーバーにできないようなんだ」

「それって、先に一人やっちゃえばあとはお茶の子さいさい、っと…」

言葉を途中で区切り飲み物を口に含む。

「そういうわけにはいかないだろうな。多分、アビリティが厄介なものだから簡単にはいかないな」

桐谷も同じく言葉の最後でコップを手に取り、口に含む。

「で、俺に協力しろと?」

「分かってるな。一対2では不利だ。だからお前に頼んでるんだ」

上谷は下を向いてどうするか考えた。そして、考えた結果は、

「悪いが、俺には人を殺すなんて…」

「昨日、所有者を殺そうとしたのはどこのどなたですか?」

(な、何で…!?)

「裏を舐めないでほしい。このぐらいの事を特定するのは簡単さ。協力しなければ、情報をもらす」


「……、わかったよ。で、俺はどうすればいいんだ?」

ため息をついて、あきれた顔をする。桐谷はニヤリと笑って説明を始めた。

「双子はこの近くで同居している。明日、外出してレストランへ向かうらしいからそこで店ごと爆破だ。それでも無理だ

ったら、自分の手で殺せ」

(何で、『殺す』とか普通に言えるんだよ…?)

改めて裏の恐怖を実感した。裏のやり方は、狙った獲物はどんなことをしようが必ず抹消する、だそうだ。

「じゃあ、明日の午後6時に『サカイ公園』に集合だ」

そういうと、席を立って店を出て行った。

(金払わないで出て行った。…、また俺が払うのか)

ため息をついて、ポケットから財布を取り出すと席を立ってカウンターへ向かった。上谷は明日の事が心配でならな

かった。


サカイ公園中央部。噴水の前に立っている学生、上谷 大介と桐谷 宗助はお互いにループに表示されているデ

ータを見てリモート爆弾の配置を確認している。さらに桐谷はループの他にもまた別の端末も見ている。映し出

されているのはレストラン店内の映像。双子のシンボル所有者の行動を見るためだ。

「次、席を立つ瞬間に爆破だ。一度爆発させたらどんどん爆発させていけ」

桐谷が慣れた手付きで操作しながら指示を飛ばす。上谷は、ただ言われるがままにやるしかなかった。自分の

ために、これは必要なことだと思い込ませていた。

映像では、飲み物を口に含んでいる様子が映されている。コップを置いたのと同時にループを取り出して画面を

確認している。そして、次の瞬間。

片方の男がこちらを睨んできた。そして席を立ちあがろうとする。

「ばれている…!? …、今すぐ爆破だ」

タッチ操作でリモート爆弾を爆破させた。

ドゴォンッ、という音が端末から聞こえた。今は煙が邪魔で確認ができない。
「おそらく相手はまだ生きている。続けろ」

冷静に指示を出す。上谷はループを素早く操作して次々に爆弾を爆破していく。端末に映し出されていた映像

はそれと同時に接続が切れてしまった。

「…? 大介。異常な電波が…」

ループ内部から電波を感じ取ったフリーズマンが伝える。上谷は周囲を見渡し警戒する。

「…、ぐっ!?」

頭に激痛がはしり倒れこんでしまう。一方桐谷は平気そうな顔をして西側をじっと見ている。

「桐谷。来たぞ」

「シャープマン。今からアビリティに集中しろ」

そのまま会話が終わる。そして、西側から二人の男性がゆっくりと近づいてくるのが上谷にも見えた。走って向

かってくる二人の男性はループには一切手を触れずに腰につけているだけだ。

「厄介なアビリティを持っているな、NO.3。いや、『安部 ケイ』、『安部 レイ』」

「そうだな。ところで、何故お前は倒れていない?」

殺意を感じる会話を始める。上谷は聞いているので精一杯で今どうなっているのかを確認できない。

「そうか。片方は人間に害のある電波を出し、片方は出された電波を制御する。一人では自分にも電波の影響

が出てしまうみたいだな」

「そこまで分かっているのなら、ここで始末するしかないな」

二人は同時にポケットからナイフを取り出す。一方、桐谷は何も出さずにただ立っているだけだ。

「何も出さない? 何を考えている」

「他に狙いがあることは分かっている」

歯ぎしりが聞こえた瞬間に始まった。2対1では桐谷が不利かと思えた。しかし、二人の連携的な攻撃を軽々と

避けて双子の兄、ケイに蹴りを加えた後、ポケットからカッターを取り出して手首を切りつけようとした。しかし、素早く動いていた双子の弟、レイが桐谷の背後から迫りナイフで背中を切ろうとするが、今度は横に避けられ

た。

「こいつ…!」

「俺の前では、その電波も通用しない。さあ、どうする?」

「…こうなったらッ」

桐谷から離れると、全く別の方向へ走り始めた。向かった先は、上谷が倒れている場所だ。首をつかんで、無

理やり持ちあげると、ナイフを持って桐谷を脅しにかかる。

「こいつがどうなってもいいのか? ダメというのなら、貴様のループを俺に差し出せ」

双子の質問に対して、無言で下を向いている。そして、

「…、嫌だね。そいつがどうなろうと俺には関係ない」

「!? は、ははっ、じゃあこいつを殺して…」

ピピッ。上谷の腹のあたりから音が聞こえた。そこを見ようとした瞬間、後ろにある噴水が爆発した。双子は上谷

の首をつかんだまま前に飛ばされてしまう。

「い、一体何が…」

「上谷を甘く見すぎたようだな。終わるのは、お前らのほうだ。自らの電波で一生を終えるがいいさ」

腰から小型の銃を取り出して弟のほうを撃った。弟のアビリティは「電波制御」。つまり、

「がァァァああああああああああああッ!」

制御できなくなった電波を出しているループを所持している兄をケイは頭をつかんでフラフラとする。上谷も一

緒になって苦しむかと思いきや、 桐谷が手で触れた瞬間に平気そうな顔をした。

「俺のアビリティは『無差別演算』。演算をし、自分の身を守るための力に変えたり、自らを守る力にしたりでき

る。ただ、これにもデメリットがあってな。演算する対象が無差別なために自分で演算対象を決めることはでき

ない。最高で5個までの演算が可能だ」

上谷が立ち上がるのに合わせて手を触れさせている。一方、相手はまだ苦しんでいる。フラフラと進んでいるう

ちに気に腰をぶつけてループを落としてしまった。

「ループ、どこだァッ!?」

頭を手で押さえながら言うが、あまりの痛さに周囲を見渡す余裕はなく、ただフラフラすることしかできなかっ

た。

グシャンッ。鈍い音がした。痛みが消えて、下を向く。すると、足の下には壊れた自分のループがあった。

「は、ははっ…」

口から血を吐いてそのまま倒れてしまった。

午後11時12分。安部 ケイは死亡した。


午前12時。シンボルの電脳内部で再び集会が行われていた。ゲーム参加者が、中央の円盤を囲うようにして並

んでおり、中央円盤には数字に囲まれている玉が浮かんでいる。この玉からリターンの音声が出ている。

「このゲームでは、参加者をNO(ナンバー)で呼んでいる。貴様ら立っている後ろに自分のNOが掘られている。

確認することだな」

フリーズマンがループにNOを映す。上谷のNOは『1』だ。

「そして、現時点ではNO.2が一人、NO.4が一人を殺したという結果になっている」

NO.4はヒロミの事だ。そして、NO.2とは、おそらく桐谷 宗助の事だ。ゲーム参加者全員のアバターがNO.2のア

バター、シャープマンを注目するが本人はそれに全く動じず、ただ目をつぶって下を向いているだけだ。

「ゲーム参加者の正体が全員に知れた時、隠す必要がなくなる。その時は、電脳内部でも全員の姿がしっかり

見えるようにしよう。では、解散だ」

もとの電脳の風景に戻るのと同時にすべてのアバターがゲートアウトした。

上谷 大介はベットで転がりながらそれを見ていた。

「そういえば、あのテロリスト。今どうしてるんだろうな?」

「敵の心配をしてどうする? まずは自分の心配をしろ。そうそう、言い忘れたが…」

突然喋り方を変えて上谷に言い始めた。不思議に思いながらも聞くことにした。

「このゲームでは全員が敵。つまり誰も信用できない状態だ。もちろん、『桐谷』と『シャープマン』にも言えること

だ。お前は、その甘さを捨てろ。そして、このくだらないゲームを早く終わらせるために、桐谷を利用しろ。じゃな

いと、次に死ぬのはお前になるぞ」

今まで聞いた言葉の中でも、一番嫌な言い方だ。このゲームでは、だれも信用できない。利用して、利用され

て、このような状況が続いている。

(誰も、信じられない…)

今までは仲間とともに戦ってきた。お互いに信用しあい、支え合い、しかしこのゲームでそれは通用しない。たと

え、親しき中の友人でも信じられないのだ。ただ一人で戦い抜くこのゲーム。今の上谷では、桐谷を利用しなけ

れば死ぬ。

「さあ、どうする? 死ぬか、生きるか。選ぶのはお前だ」

「俺は…ッ!」

このゲームの重みを改めて感じた。そして、答えを出すことはなかった。