ついに大リーグボール3号は完成した
しかしその魔球は存在する事すら世間や相手選手は
認識しない謎の魔球だった
アトムズ戦での好投を見た川上監督は、次の大洋戦で
飛雄馬を先発させる
そして迎えた左門の打席、大リーグボール3号を初めて
打席で見た左門は、それが女番長お京の投げた
「捕球できないリンゴ」と同じだと直感した
マウンド上で飛雄馬とお京さんが揃って投げてちゃ
まあ打てません(笑)
左門にとっては大リーグボール3号ショックより
それがお京さんの投げたリンゴそのものだったのが
衝撃的だった
飛雄馬が大リーグボール3号を投げるたびに
お京さんがダブる、、、、
ボールもリンゴとダブって飛んでくる・・・・
ある意味消える魔球より厄介なのである
それを見た青田さん
「大リーグボール3号は、催眠術みたいなもんじゃ
ないのかねえ・・・」
と言い出す
「こんな球わしが今から打席に立っても打てそうな球ですよ
それがこうも当たらないのは催眠術としか思えません」
「・・・・・・・」
『うむむ、いちいち京子さんの投げたリンゴの事をば
思い出させるムカつくボールですたいっ!
しかし京子さんのリンゴなら、対処法ば
考えとりますっ!!』
『星君・・・・やはり今までのように燃えて投げとらん
ですけん・・・もしやわしの事を燃えるまでもないと
思っちょるのでは』
『力んではいかととです!
そーっとそーっと優しく包むように打てば・・・・』
「あっ」
左門が突然スローなスイングをしたのを見て
驚く飛雄馬
左門スロースイングは大リーグボール3号を
初めてバットに当てる事には成功
「おやっ、星投手打たれた瞬間まさかという顔してましたね
マウンドで一瞬声をあげましたよ」
「しかし左門も中途半端なバッティングでしたよ
あんな消極的な打ち方でヒットになるはずもないです」
『左門め・・・・あいつお京さんのリンゴの事を
思い出したな・・・・』
『大リーグボール3号の元ネタを知ってるのはあいつだけだ
左門にはこの後も気を付けないと・・・・』
「コラ左門っ、なんだ今のバッティングはっ!
あんな打ち方でヒットになると思っているのか」
「すんません・・・以後気を付けますけん」
左門、あえて反論はしなかった
『説明ばしたら、お京さんのリンゴの言ば話さねば
ならんけん、、、しかし妹弟たちにホームランば打つ
という約束をまた裏切るかもしれん。。。。
それが悔しか』
『そげんか作戦、すぐに通用しなくなるとです、、、
いくら待球してもファールもできんし、3つストライクゾーンに
来たらお手上げとです・・・』
左門の予言どおり、待球作戦が見破られると
ポンポンとストライクゾーンに投げ込まれ、あっという間に
追い込まれて凡退を繰り返した
大リーグボール3号ショックでプレッシャーを感じたか
平松、2点を失ってしまう
大洋打線はその後も大リーグボール3号をとらえる事は
できず、三振の山を積み重ねていく
しかし飛雄馬の方も、徐々に精神的疲労が蓄積したのか
3回表で早くもマウンド上で悲痛な表情が目立ち始めた
『3号かなんか知らんが、どーせう俺には
打てっこねーわ・・・・』
これには別当監督も首をかしげる
「なんでや・・・・なんでヒットになんねん・・・」
川上監督も大リーグボール3号をピッチャーに打たれた
のを見て顔色を変えた
「どうした星・・・・大リーグボール3号を
こともあろうにピッチャーに打たれるとは・・・」
「問題ありません・・・これは想定内です
大リーグボール3号はそういう球なんですよ・・・・」
「なんだと?」
「むしろピッチャーの平松さんがヒットを打った事で
他のバッターがその気になって大振りしてくれたら
こっちのもんです」
「おいおい、ピーに打たれるなんて大リーグボール3号も
メッキが剥がれたんじゃないのwww」
大洋の選手がヤジを飛ばすが・・・・
野手の方は相変わらずかする事すらもできず
またも三振を繰り返した
試合はその後飛雄馬と平松の投手戦となり
2回以降は両軍0が並ぶ
このまま試合は9回表、大洋最後の攻撃に
この回、ツーアウトから長田に四球を出してしまう
ここで川上監督、再びマウンドへ
「星、完封寸前だがここは交代しよう!
そろそろ限界のようだし」
「ま・・・待ってください監督っ
俺は完封なんてどうでもいいんです
でもここで交代はできません
投げさせてくださいっ」
「あいつですよ・・・・今ネクストバッターズサークル
にいるメガネのブタです」
「左門と勝負したいのか・・・・・」
「そうか・・・まあ気持ちはわかるが、わしも勝負師だ
左門までは続投させてやる、しかしもし1球でもボールに
なったら容赦なく代えるぞ」
「左門、ここはうちに回ってきた最後のチャンスや
なんぼ待球嫌や言うても、この打席だけはわしの
作戦に従ってもらうで」
「わかっとります!待球戦法ですな」
「・・・まあお前のプライドもあるやろうけどな
ここはもうその戦法しかないんや」
「うむむむ・・・・仕方なかとですな・・・」
『どっちにしろ今のわしに特に攻略法が
あるわけでもなかとよ、、、
勝負させてもらえるだけでもありがたいですっ』
パスッ
「スターーーーーーーイクツー!!」
ボール禁止の飛雄馬にあっという間に追い込まれる
『ストライクゾーンに3つ放られたら待球戦法など
意味がなか・・・・・さすがにバカなベンチもこれで
わかったと』
『バットに当たらん魔球に打てのサインも意味がなか・・・・
し・・・しかしスローなスイングならバットには当たるっ
スロースイングで、バットに当たった瞬間
強く打つしかなかっ』
「ああっ、左門空振り三振っっっっっ
星投手見事な完封勝利ですっ」
「なっ・・・・・なんでもないですよ・・・・」
「しっ・・・・しかし・・・・」
「久しぶりの勝利なんでね・・・・・ちょっと
喜び過ぎて足が宙に浮いちゃっただけです」
力なく笑う飛雄馬
『いつもは星君に打ち取られるたびにハラワタが
ねじくり返るくらいムカつくばってん、何故か今は
虚しさしか残らん・・・・・・いや、そんな事より・・・』
『あれは勝ち投手の顔ではなかとですっ
どけんしたとですかっ、星君っっっっっっっ』
巨人の星(栄光の星編)第171話 「かえってきたオズマ」
につづく