今朝は、雨がしとしとと降っていた。
木々に囲まれたキャンパスの雨の日は、雨が全ての音を吸収しているようで、ひっそりとしている。
しかし、今日は一段と静けさに包まれていた。
その静けさに気がついてしまった時、本当に卒業してしまったんだと思った。
道ゆく生徒の顔はみんな泣き腫らしていて、お互いに少し悲しげな笑顔を返して慰め合う。泣き疲れて起きられなかったのか、普段朝ごはんに来る人まで来なかったから、朝食は両手に入るほどの人数でがらんとしていた。これから、靴箱に靴が入らず溢れかえってしまうことも、ランチやディナーのために長い列を作って並ぶことも、もうない。
授業も活気がなく、誰一人として雑談をする元気など残されていない。そんな生徒たちを先生方は温かく見守り、今日の授業は全体的にゆったりとしたものにしてくれた。あまりに悲しむ生徒を哀れに思ったのか、以前インフルエンザでみんなが倒れても延期されなかった、コンピュータサイエンスの課題の締め切りでさえ伸びてしまうほどだった。(これは、コンピュータサイエンスを取っている身としては大変助かった。)
約2年間共に暮らした先輩方には大変お世話になった。
入学初日に学校を案内してくれた時に、ISAKの裏話をたくさん教えてくれたこと。2時間つきっきりで、コードの不具合を直すのを手伝ってくれたこと。ディナーから入寮時間まで、時間を忘れて人間関係や価値観について語り合ったこと。プロジェクトで、背中を押してくれ、新しい自分を見つけられたこと。彼らと過ごす毎日は、当たり前の日常だった。
その日常が思い出へと移り変わっていく今、どれだけ心の支えになっていたかに気づかされる。私たちの人生は出逢いと別れの連続だ。今この瞬間も二度と訪れることはないという点では、常に別れを経験していると言えるだろう。しかし、その出逢いと別れに気を留めること、認識することでさえほとんどない。ただ、淡々と前へと進んでいく時間の流れの中で、振り返ることのできるような思い出のある出逢いを経験できたこと、そして、その別れを惜しむことで日常のありがたさに気づくことはできたのは、とても素晴らしいことであると思う。
もうISAKで見送ることはない。昨日、最後列で卒業証書授与を見守る中、次は私があの場所に立つのかと、しみじみと感じた。
私の卒業式の2025年5月18日まで、一年を切っている。
送られる立場で、後悔がないように、ISAKで仲間と共に過ごす1日1日を大切にしていきたい。
そして、後輩たちが泣いてくれる慕われる先輩になるために、ちゃんと後輩をテイクケアしようと思う。(笑)
卒業生の皆さんへ
この度は、ご卒業誠におめでとうございます。
私たちとの出逢いは、皆さんのこれから数々の出逢いに溢れる人生の中で、数としては数%のものかもしれません。しかし、今日、そして将来でも、数字で測りきれない影響を持つものです。そのような素敵な関係を築くような時間をISAKで過ごせたことに感謝します。
いつかISAKというお家に帰ってきた時に、それぞれの夢に向かって、道を切り拓いている皆さんの姿を見るのを楽しみにしています。
皆さんのこれからの人生が素敵な出逢いで溢れるものでありますように。
でも、まずは、試験とパッキングと手紙書きで寝不足の体を休めてくださいね。
紅葉