存在すら意識されない仕事 | UWC ISAK 生活日記

UWC ISAK 生活日記

UWC ISAK Japanの生徒による非公式ブログです。
「一度しかない人生。自分の個性を生かして思い切り生き、自らの立つ場所から世界を変える。(UWC ISAK Japan Webより)」

 ISAKという学校は、生徒主体で運営されているとよく言われます。この「生徒主体」というのは、学校の意思決定(運営)が生徒主体というよりかは、クラブや寮生活といった個別具体的な場面において生徒の主体性が試されてるということです。

 そんなISAKでは、多くの生徒が、クラブに入ったり、プロジェクトを立ち上げたり、イベントを企画したりして、個性を発揮しています。それぞれが、好きなことを存分に楽しむことで、いわゆる「ISAKのキラキラした日常」が形作られていきます。こういった日常の様子は、ISAKのHPや、Instagram、ISAK生活日記などを通して垣間見ることができます。

 これらのプロジェクトの活動や、年間行事、クラブ活動などは、生徒からも(ISAK外からも)見えやすい存在です。これ以外にも、生徒を代表して活動する SNOW(いわゆる生徒会) や、Promenadeや、Gratitude dinnerなどのイベントを企画するICEといった組織があります。今日も、ICE主催で、Sports Day的なイベントがありました。こういったイベントを企画する ICE などは、比較的表に出る活動内容が多くなります。そして、これらの華やかで、「これこそISAK」みたいな感じのイベントを通して、ISAKの「非日常の連続みたいな日々」が作られていきます。

 しかし、何か特別でない、普段の日々でも、ISAKは生徒の主体性によって支えられています。少しひねくれた言い方をすれば、ISAKには、多くの「普段、生徒から見えていても、当たり前すぎて感謝されない仕事」もあります。代表的なものとしては、寮のリーダー的な存在の “RA” という役職があります。毎週、RAは先生とミーティグをして、ハウスメイトに向けて、プレゼンテーションをしてくれます。内容は、日本のルール・マナーに関するものから性教育までさまざまで、毎週のようにプレゼンテーションをやってくれる彼らには感謝しかありません。

 さらに、ISAKには、「人の目に触れることもなく、存在すら意識されにくい仕事」もまたあります。前置きがかなり長くなりましたが、今回は、生徒からも意識されることが少ない仕事、"Tech Crew" と、"Lock up crew" のお話です。

 Tech Crewは、イベントや演劇などで、ライトや音響機器の準備をし、それらの操作を行う役職です。ISAKのイベントは、大抵、大音量の音楽が流れるので、Tech Crewはイベントに必須な存在です。しかし、彼らがイベントの主役になることは、まずありません。当たり前です。多くの観客の注目は、Tech Crewよりも、舞台で踊るダンサーや、アクターに向きます。それでも、Tech Crewは、イベント前に、主役や観客よりもずっと前に準備を始め、イベントの成功のためにひたむきに働き続け、終了後は最後まで片付けます。そして、Tech Crewは、毎週の Assembly から、Theater、コンサートまで、ISAKで行われるほぼすべてのイベントで仕事を持っています。このように、ISAKのイベントは、Tech Crew という欠かせない縁の下の力持ちによって支え続けられているのです。

 ある生徒は、リーダーシップの概念をスポットライトに例えて説明します。舞台には、ダンサーやアクターといった、スポットライトを当てられるような存在だけではなく、スポットライトを照らす存在も必要であると。「スポットライトがなければ、ダンサーは真っ暗な舞台で踊らなければいけなくなる。」そんなことを考えながら、Tech Crewの働きを見ると、彼らは、そんなスポットライトを照らし続けてくれる存在なのだと、イベント毎に実感させられます。

 次は、"Lock up crew" のお話です。正直この仕事は、ISAKで最も地味な仕事だと思います。現役の生徒の中でも、Lock up crewの存在を知らない人もいるんじゃないかな。ISAKでは、夜間の校舎の施錠を、Lock up crew の生徒が行っています。平日と日曜日は、21:30、金曜日と土曜日は、22:30に設定されている門限に合わせて、4つの校舎を施錠します。このときに、Lock up crewは、担当する校舎の窓が全て閉め、窓の鍵を確認し、すべての教室の電気が消えているか、ヒーターは消えているかを確認して、最後にフロントドアを閉めます。ちなみに、ときどきなくしものを探したり、忘れ物を届けたりもします。これらの作業を、雪の日だろうが、雨の日だろうが、氷点下の寒さだろうが、毎日続けます。そして、これら、Lock up crewの仕事は、門限ギリギリで行われるため、他の生徒の目に触れることはほぼありません。

 そして、Lock up crew や、Tech Crew を含めて、ISAKの生徒の仕事は完全にボランティアです。これらの仕事につくことで、なにか特権があるわけではありませんし、成績(内申)が上がるとかもありません。そんなメリットなんかほぼないボランティアですが、どの仕事も、ISAKの当たり前の日常を形作る上で、欠かせない存在です。しかし、彼らのボランティアは、ISAKの日常にとって当たり前の存在すぎて人々から存在を意識されない故に、人々から感謝されることはあまりありません。ただ、人々から感謝されないことが悪いことかと言えば、そうでもない気がします。「いちいち感謝されないほど、当たり前に日常が続いている」、これってコミュニティとして素敵なことだなと、私は思います。

 ISAKのHPにいけば、一般的な日本の学校にない「非日常の連続みたいな学校生活」を垣間見ることができるでしょう。これらは、素晴らしい個性と才能を持った "プリンシパル" (生徒)が、ISAKという舞台で、全力で踊り続けた結果です。これこそ、ISAKのアイデンティティ(校風)そのものかもしれません。

 しかし、私は、「当たり前の日常」を維持するために、自分の時間を使って働いてくれる人たちのことを忘れたくはありません。

 私が書いた仕事以外にも、ISAKには、コミュニティを支える、小さなリーダーシップがたくさんあるでしょう。そんな「意識されない仕事」を探し出して、彼らのコミュニティへの貢献に感謝できる、私もそんな人になりたいな。

 でも、まずはとりあえず、自分が見える範囲に...

 RA, Tech Crew, Lock up crew の人員に感謝を込めて

 Thank you very much for your work!!

時雨