管総理が自民党谷垣総裁に入閣を要請し、谷垣総裁側はこれを拒否したそうだ。 内閣では原発、被災地復興、被災者支援の3つの緊急対策ポストを用意するつもりのようだ。
 これによって、民主党内部にはなかなかに頭がキレており、それでいて非情なまでにしたたかな輩が存在することがわかる。なぜならこうした動きは、この度の震災に託けた、極度に政治的な戦術と評して差し支えないからである。
 例えば谷垣総裁が入閣を了承した場合、民主党にとってはまったく都合のいいことだらけだ。まず内閣は、超党的にこの度の震災に向けて対策を採っていることを猛烈にアピールすることが出来る。表面的には党派を超えた政策をとる準備があるという、民主党の懐の深さを見せつけることが可能だ。さらに民主党は自民党に対して、大きな「貸し」を作ることになる(弱みを握る、という表現も可能だ)。民主党はこの緊急事態に対して、自民党もともに活動していることを宣伝する「場」を提供することになる。加えて内閣における重要ポストという「役」といった特典つきで、である。民主党は長期的戦略的視点も鑑みている。現在来年度予算案成立に向けて、民主党の提案している多数の予算案が未決の状態であるが、事実上の民主・自民大連立体制を成立させることにより、こうした今後の与野党折衝の必要がある懸案について、スムーズに解決していくことが可能であると考えられる。これはこの度の震災に便乗した、長期的政治戦略と銘打っても異論は無かろう。民主党にとってはこういったメリットがあるものの、自民党にとってはそうでもないように思える。総じて、上述したような「借り」を民主党に対して作ってしまうというところだ。自民党および谷垣総裁の今回の拒否という判断は、上述のようなメリットとデメリットの計算の結果ではないだろうか。
 しかしより注意したい点が以下にある。谷垣総裁入閣の打診という政略が恐ろしいのは、よしんば『谷垣側がこれを拒否した場合』における効果にある。なんと拒否した場合であっても民主党が得をし、自民党が損をするという構図が、このシナリオには書き込まれているのである。
 拒否をした谷垣総裁は、表向きには緊急の震災対策に参加しない、という立場をとったことになる(当然、事実はそうではないが)。おそらく、谷垣総裁はマスコミに対して「自民党はこれからも内閣に協力して、今回の震災に対応していく」といった趣旨のコメントをするだろうが、事実だけを見た場合は、結局不利な見られ方をされてしまうのが関の山である。一方管総理側は、せっかく超党的緊急体制を採ろうとしたのに、むげに断られた、という立場になる(これも事実とは異なるが)。結果、民主党は評価され、自民党は批判される、といった流れになるのではないかと予測する。
 打診をした民主党は、ここまでのシナリオを組み上げた上で情報をマスコミに流したと考えられる。そしてそれは、谷垣総裁拒否のシナリオパターンとなり、民主党は最低限のメリットを獲得する。冒頭でも述べたが、私はこれを極度に政治的な戦術としか見ることが出来ない。未曾有の震災に乗じた謀略ともいえる。
 所詮、政治とはこうしたものであるのが現実であるし、現在の日本の政治システムはこうしたことをも了承するようにできている(ただし、了解はしないが)。これに対して責めるつもりはないし、批判するつもりも無い。重要なのは、政治とは常にこうした冷酷な動きをするものであることを理解しておくことである。震災という緊急事態など簡単に食い物とし、己の保身と躍進の糧とするのである。これは現実であり、ある程度受け入れておくべきことである。この現実を受け入れられないのであれば、目を閉じ、口をつぐみ、孤独に暮らすより他は無い。それも出来なければ、クーデターを起こしたらよい。