ジル・マゴーンさんの「騙し絵の檻(The Stalking Horse)」(中村有希訳)を読みました
2000年代の海外ミステリナンバーワンの呼び声高い作品だそうですが、このたび文庫が新装版となるまで全く知りませんでした
主人公は16年前に無実の罪で収監され、ようやく仮釈放をもらえたビル・ホルト
そう、本作は巌窟王ものなのです
冤罪被害の当事者ですから、19年前の殺人を追いかけていく「スリーピング・マーダー」のように「掘り返さない方がいい」というわけにはいきません
ホルトは、従姉妹のキャッシー、隣家のアリソンと兄妹同然に育っていて、将来はアリソンと結婚するのではないかと思われていました
しかし、アリソンは若くして、その父がトップを務める大企業の重役と結婚してしまい、ホルトも別の女性と結婚します
ある日、アリソンから自宅に招かれたホルトは、急に激しく誘惑されて初めて関係を持ってしまいますが、彼女がその場で夫に電話して「あなたの友だちと寝た」と言い出したために、あわてて逃げ出します
その直後にアリソンが自宅で絞殺され、アリソンの夫から依頼されて彼女の浮気を調査していた探偵も、その後に殺害されます
ホルトは、その探偵から手紙をもらってノコノコと彼の家に行ってしまったこともあり、あえなく2人を殺したとして有罪に
苛酷な刑務所生活を経たホルトは、真犯人を見つけるべく当時の関係者に聞き込みをしていきます
美貌のアリソンが、誰彼かまわず誘惑していた妖婦だったのかという点をつぶす事情は、女性作家ならではの巧さ
ホルトに協力する女性記者に対するアレも、現代の男性作家なら書けないだろうなあ
関係者がひき逃げされたところに居合わせた盲目の人物が「助手席から人が降りてきたから、二人乗っていたと思う」と証言するところも面白い
全体的にごちゃごちゃした感じがあって、やや読みにくかったところもありましたが、満足できました
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