佐藤究さんの 「幽玄F」を読みました
天才パイロットの数奇な運命を乾いた筆致で印象深く描いた長編小説です
主人公の易永透は、幼いころから空に魅入られており、将来超音速で空を飛ぶために生活のすべてを捧げていました
適性もあり、自衛隊の最年少ルートで戦闘機パイロットに上り詰めます
誰もが撃墜されてしまうAI との模擬戦で引き分けに持ち込むシーンなどは、手に汗握ります
天才の名をほしいままにしていた透でしたが、あるときプツリと超音速で飛ぶことができなくなります
失意の中、長くタイやバングラディッシュをさまよう透でしたが、運命はとてつもないエンディングを用意しているのでした
作者は、あとがきで、三島由紀夫のF104搭乗記にインスパイアされたところがあると述べていますが、個人的にはやはり「エリア88」を思い出してしまいます
空に裏切られた主人公がたどる劇的な人生
何の解説がなくても、STOVLという第3部のタイトルの意味がわかるのも当然です
以前の作品においても、ワールドワイドな舞台が描かれていましたが、本作のタイやバングラディッシュでの透の生活ぶりも違和感なく読むことができます
物語の構成が巧みで、最後まで気持ちを切らさずに楽しむことができました
「爆発物処理班の遭遇したスピン」や「テスカポリトカ」に続いて、またもや大当たりの作品がきたので、今後の作品も楽しみです
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