ヴァシーム・カーン/チョプラ警部の思いがけない相続 | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

ヴァシーム・カーンさんの「チョプラ警部の思いがけない相続」(舩山むつみ訳)を読みました
 
舩山さんの担当される翻訳は中国系だけかと思っていたので、「え!まさかインド系もいけるの!」と驚いたのですが、原書は英語でした(それでもマルチですね!)
 
最近は、中国系だけでなく、インドやインド人が登場するミステリが翻訳されることも増えてきた印象です

 

 

 

 

 

本作の主人公は、50歳でムンバイの警察署長をしていたものの、激務のために心臓を患ったことから早期リタイアすることになったチョプラ警部です

 

汚職がはびこる腐敗したインド社会の中で、彼は高潔な立ち振る舞いができる人物

 

物語のメインの1つは、ちょうど退職の日に彼のところに運ばれてきた青年の溺死体を巡る事件です

 

後任の署長が面倒くさがって捜査しようとしないので、チョプラ氏が「警部」を名乗って私的に捜査を続けます


黒幕はチョプラ氏が9年前に追い詰めた結果、火事にまかれて死んだと思われていたギャングの大物でした

 

青年の死の裏側には、いかにもインドでありそうな(偏見)闇の世界が広がっていたのです

 

あまりに無謀な尾行の結果、チョプラ氏は捕らわれて、今にもギャングの手下たちに溺死させられそうになりますが・・・

 

物語のメインには、タイトルからもわかるとおり、チョプラ氏が風変わりなおじから子象を贈られて困惑するという筋もあります

 

最初は何も食べようとせず、挙げ句の果てには洪水の際に溺れて死に瀕した子象でしたが、チョプラ氏とその妻の愛情が伝わって、驚くべき出来事を引き起こします


「象は忘れない」というのは、どこまで本当なのでしょうか?

 

子象については、愛情を伝え合う描写がもう少し丁寧になされてもよかったと思いますが、痛快だからよしとしましょう

 

さらには、チョプラ氏と妻との関係を巡る筋も展開されていて、なかなか欲張りなストーリーになっています

 

ところで、インドの刑事法がどうなっているのかは全く知りませんが、それでもチョプラ氏の行動がいろいろ違法であることは間違いないでしょう

 

ただ、舩山さんの解説によると、インドでは、武器を所持している犯罪者を捜査官がその場で射殺する「エンカウンター」が1990年代以降非常に多く起きているそうで、それは背後に有力者がいるために、正規の手続きを踏んだのではその犯罪者を有罪にすることが難しいからだというのです

 

簡易処刑か。。。

 

日本では考えられないその深刻な状況の中では、退職後に警部を名乗って無令状で強制捜査する程度なら、インドでは全然「あり」ですよね(偏見)

 

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