ヘザー・ヤングさんの「円周率の日に先生は死んだ(The Distant Dead)」(不二淑子訳)を読みました
昨年話題になった「われら闇より天を見る」に似た設定(貧困と差別にさらされる孤独な子どもがサバイブする)の長編です
主人公のサルは、ネヴァダ州のとても小さな集落に住む少年で、最近母をODで亡くしています
母の兄たちはいずれも村でもはみ出し者ですが、サルは彼らとの生活を余儀なくされます
その上、下のおじにはクスリの売買の手伝いをさせられる始末
学校でも居場所のない彼について、新任の数学のマークル先生が何かと目をかけてくれます
その先生は都会の大学で数学の教授をしていたというのですが、なんらか深刻な理由があって、この学校にきたらしいのです
マークル先生は、思慮深くて思いやりに満ちた人物のように見えるのですが、かつての教え子であるルーカスによれば「お前の特別なものを彼に近づけるな。あいつはそれに毒を塗ろうとする」らしいのです
確かに、その後の展開は、救いがなくてやりきれない方向に進んでいきます
「われら闇より天を見る」がちょっとあざといくらいに読者を引き込もうとするテクニックを駆使してくるのに対して、本作はちょっと地味ですし、最後は読者を突き放してきます
それだけに評判もある程度限られたものになると思いますが、個人的には十分満足しました