リチャード・オスマン/木曜殺人クラブ・二度死んだ男 | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

リチャード・オスマンさんの「木曜殺人クラブ・二度死んだ男(The Man Who Died Twice)」(羽田詩津子訳)を読みました

 

これは前作からスーパージャンプアップした大傑作で、各種ミステリランキングが前年の11月から当該年の10月までに発行された作品を対象としていることから、今年の11月に発行された本作は直近のランキングでは対象外となっていますが、よほどのことがない限り来年はこれが1位となるべきです

 

前作には、クルクルと視点を変えるスタイルが思わせぶりなわりには、それが作品に全く生かされていないという弱点がありましたが、本作では目を見張るほど改善されていました

 

各キャラクターの個性が非常に深く描かれるようになっており、それが作品の展開にもしっかりと絡んできます

 

特に、前作ではただのおしゃべりなおばあちゃんだった元看護師のジョイスが、今回は元MI5の凄腕だったエリザベスが舌を巻くほどの活躍を見せてくれます


最後の鎮痛剤を巡る会話も、ジョイスをただのおしゃべりさんに留めていなくて最高

 

エリザベスとジョイスのコンビはとても魅力的です

 

また、作品中に張り巡らされた伏線はとても巧みですし、多重的なタイトル回収もとにかくお見事!

 

プロローグの着地点の工夫にも感嘆しました

 

イブラヒムをストリートで襲った若者にエリザベスたちが天誅を加えようとする話、警察官のクリスとドナが追っている地元の女ギャングを捕まえようとする話、エリザベスの前の夫が犯罪組織から2000万ポンドのダイヤモンドをくすねて命を狙われる話とやや盛り込み過ぎなところもあり、それらを一発で片付ける流れにはかなりの無理も感じましたが、ダイヤモンドをめぐるメインプロットの素晴らしさがなんといっても抜群なので、そこも気になりません

 

個人的に大好きな「操り」が含まれているところもよかったですね

 

すでにイギリスではシリーズ第三作「The Bullet That Missed」が刊行されているそうなので、翻訳されるのが今からとても楽しみです