夕木春央さんの「サーカスから来た執達吏」を読みました
夕木さんの第二作ですが、デビュー作と同じく舞台は明治時代末期から大正時代です
絹川子爵が100万円を超えるほどの価値のある美術品を所有しているといううわさがあり、あるとき織原伯爵の庶子がそれを盗み出そうとします
本来は誰も傷つける予定ではなかったのですが、なりゆきから番人を手にかけてしまいます
それでも金庫破りを得意とする泥棒の手を借りて初志貫徹を試みますが、あと少しというところで鍵穴に差し込んだ道具が折れてしまい、同じ道具を用意するために2時間ほど2人で場を離れました
現場に戻ってみると、つい先ほどまでは部屋の中にたくさんあったはずの美術品類が跡形もなくすべて消失しています!
その後、絹川子爵は例の品のありかを暗号にしてこの世を去ります
他方で、没落していた樺谷子爵は、晴海商事の社長から借金の返済を求められるのですが、その際にはサーカスから逃げだしてきたというユリ子という一風変わった人物が社長の名代の借金取りとして樺谷家にやってきます
ユリ子は、天真爛漫でいて、誰もが驚くほど頭の回転が速い天才肌の18歳の女性です
ユリ子は、樺谷家の末娘である鞠子を借金のカタにすると宣言して、いっしょに上記の暗号を解くことによって、樺谷家の借金を返済させようとします
本作は、このユリ子と鞠子のバディものとしての側面がよくできていました
ユリ子はハイジ、鞠子はクララみたいなイメージもありますね
個人的には、暗号ものはそれほど好きではないのですが、本作は宝物消失の謎やさらなるひねりを加えることによって、単なる暗号の答えあわせでおしまいという展開にしていないところがよかったです
デビュー作より完成度が高まっているので、第三作目にも期待したいと思います