1983年に発表された泡坂妻夫さんの「妖女のねむり」を読みました
米澤屋書店銘柄です
主人公の柱田真一は廃品回収のアルバイトをしている大学生
あるとき目白台の家から回収した紙の山から、樋口一葉が書いたのではないか思われる未発表の小説の一部が出てきます
そのことを調査するために諏訪に向かった真一は、あずさ号の中で長谷屋麻芸という美女と出会います
どこかで会ったことがある気がした真一でしたが、麻芸の方はもっとで、あなたの前世と私の前世は愛し合っていたのだけれど、最後は悲劇的な結末になったのだと言い出します
ここだけだと麻芸は単なるイタい人物のようですが、こうなるにはちゃんと訳があるのです
樋口一葉の調査と並行して、生まれ変わりの調査もすることになった真一ですが、これらがきれいに1本の筋に収れんしてきます
「人の入れ替わり」はミステリの基本ですが、まさかこういう見せ方があるとは
読者が没入してきた中盤で物語をあっと言わせるような展開に持って行くところや、真一の既視感の正体を種明かしするところは本当に見事です
奇想が爆発するようなタイプの作品だけに、どうしても動機が強引な感じにならざるをえないところはありましたが、本作の世界観の中では気になりません
真一と麻芸の誕生日が同一であることについても、しっかり説明しようとするところは誠実です
泡坂さんは言わずと知れた高名な作家なのですが、これまであまり読む機会がありませんでした(さすがに「しあわせの書」は読みましたが)
今後はできるだけ追いかけていきたいと思います