天藤真さんの「大誘拐」を読みました
米澤屋書店銘柄です
刑務所を出たばかりの3人が、社会復帰するための資金を作ろうと考え、和歌山の山林のほとんどを所有しているという82歳の「とし」の誘拐をもくろみます
入念に準備して決行した3人でしたが、身代金を5000万円にすると「とし」に告げたところから、話が大きく転がっていきます
「とし」は身代金を100億円にするように三人組に告げるとともに、三人組の計画をどんどん修正して、犯行をリードしていくようになるのです
「とし」の動機はすぐにピンときます
また、誘拐ものはどうやって身代金を確保するかが一番のポイントになるわけですが、そこには期待していたほどの驚きはありませんでした
しかし、たとえば筒井康隆さんの「おれに関する噂」を今の時点で陳腐と評することは許されないのであって(今でも陳腐でないのがすごいともいえますが)、1978年に発表されたことを前提に、あの独創性・先進性に驚愕しなければなりません
本作も1978年に発表されたものですから、その時点では、テレビ局による実況中継というアイデアは素晴らしく斬新なものだったと思います
また、実況中継そのものの中に仕組まれたトリックは、なかなかのものでした
なお、解説によると、誘拐された者が犯人たちをリードしていくというコメディ映画が出版の3年前に公開されていたために、本作については盗作騒ぎが持ち上がったとのことです
ミヤコ蝶々さん、森田健作さん、三木のり平さんというそうそうたるメンツが出演していたというのですから、本当に盗作だとしたらありえないくらいバレバレになりますので、盗作とは考えにくいですね
ミステリでは近い時期にどんかぶりの設定の作品が発表されることは珍しくないので、上記の騒ぎもきっとそれなのでしょう
設定かぶりについては↓