太宰治/人間失格 グッド・バイ 他一遍 | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

太宰治さんの「人間失格 グッド・バイ 他一遍」(岩波文庫)を読みました

 

太宰さんについては、これまで縁がなくて「走れメロス」や短編をほんの少ししか読んだことがありませんでした

 

決して「読まず『嫌い』」というわけではなく、本当にタイミングがあわないままだったのです

 

この6月に「津軽」を読む機会がありそうだったところ、結石による入院のせいで流れてしまって、やはり縁がないのかと考えていたのですが、このたび改めて読むことにしました

 

まずは有名な「人間失格」から

 

地方の大地主である旧家に生まれ、恵まれた状況にあるにもかかわらず、物心ついた時から人とどうやってかかわっていけばいいのかわからないという人物を主人公に据えていますが、いわずとしれた自伝的な作品です

 

文学史に置いたときの価値の高さは間違いないところですが、やはり前評判が良すぎたために、個人的にはもう1つ

 

冒頭と最後において第三者視点による客観化を図る工夫は施されているものの、どうしても「自伝」という色を意識してしまって、普遍的な何かをつかみにくかったのです

 

とはいえ、悪友のキャラクターはなかなか印象的でした

 

続いての「グッド・バイ」には強い衝撃を受けました

 

なぜなら、伊坂幸太郎さんの「バイバイ、ブラックバード」が本作を本歌取りした作品だったということを初めて知ったからです

 

「グッド・バイ」は太宰さんの絶筆で、あまり物語が進まないうちに未完となっている作品ですから、その設定を借りて新しい作品を紡いでいくのは非常に面白い試みですよね

 

そのような遊び心に全く気が付かないままで「バイバイ、ブラックバード」を読んでいた自分の頭に豆腐の角をぶつけたくなるほど情けない思いをしました

 

それはさておき、「グッド・バイ」は極めて生々しい雑ぶりが太宰さんの深い精神的荒廃をうかがわせますね

 

これは決して悪く言っているのではなく、文章の背後から立ち上がってくるような何かには強烈な印象を受けました

 

最後の「如是我聞」も亡くなったことにより途中で終了した随筆です

 

これも当時の文豪や東大仏文の学者たちに対して罵詈雑言を発して喧嘩を売りまくっており、精神的コンディションが露わになったところがあります


現代なら「炎上」必至の内容ですね

 

本書自体は少し期待外れだったというのが正直な感想ですが、最晩年における痛々しさの魅力は感じました


まだまだ他の作品も読んでみようと思います

 

 

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