法の世界はピラミッド状になっていて、下位の法は上位の法が定める規範に反することはできません
そして、ピラミッドの最上位にあるのが憲法です
法律や条例は無条件で服従しなければならないものではありません
必ずしも正しいとは限らないからです
当初から社会的経済的政治的に合理的な背景的事実が存在しないままに、多数派の横暴で制定されてしまうこともありえますし、当初は合理的だったにもかかわらず、時の経過とともに不合理になってしまうこともありえます
そのような場合に、憲法はおかしな法律や条例から人々を救う役割を果たすことができます
憲法は、法律や条例とはそもそも質的に異なる存在なわけです
もちろん、いくらおかしな法律や条例であっても、勝手に守らなくてもいいのだとしてしまったら、世の中の秩序は崩壊してしまいます
まずは、具体的な事件を前提に裁判所に対して訴訟を提起して、その結果「問題となっている法律・条令の規定は憲法に違反しているから、効力は生じない」ということを認めてもらわなくてはなりません
裁判所が憲法違反であるとした法律や条例の規定は、その事件限りでは効力が認められないことになりますが、他の人々に対してまで広く無効になってしまうわけではありません
一律に変更するためには、最終的には議会で法律を改正してもらう必要があります
とはいえ、最高裁においてある法律・条令の規定が憲法違反であるとされれば、たとえその規定が改正されないままであっても、同じシチュエーションでは同じ司法上の救済が受けられることになるはずですから、世の中に対するインパクトは超絶大です
そのため裁判所としてはなかなか伝家の宝刀を抜こうとはしません
先ほど報道された夫婦別姓に関する事件についても、15人の最高裁裁判官全員で結論を下す大法廷(通常は5人ずつの小法廷で判断している)に回付されておきながら、結局合憲判断で終わらせてしまいました
ただ、このことをもって夫婦別姓を強制する民法の現行規定がいつまでも合憲と保障されたわけではありません
上記のとおり、社会的経済的政治的な事情が変わってくれば、当然今後において憲法違反になることはありえます
もう少し時間をおけば、次のチャレンジくらいでひっくり返ることは十分ありうるでしょう