大山誠一郎さんの「ワトソン力」を読みました
主人公の和戸宋志は、警視庁第一課に勤務する刑事ですが、生来的に半径20メートルにいる人の推理力を高めてしまう不思議な力を持っています
彼の何かの言動がきっかけになるわけでなく、とにかく自然と周りの頭が冴えてしまうという設定です
7つの短編はすべて既発表の作品なのですが、プロローグ・インタールード・エピローグは書下ろしになっており、プロローグでは、主人公はどこかのシェルターみたいな小部屋に監禁されているという状況からスタートします
「監禁したのはこれまで携わってきた事件の関係者なのではないか」という考えの下で、7つの事件が回想的に差し込まれていくという体裁になっているのです
7つの短編はいずれも軽めの話になっており、かつ、推理小説としては主人公の力が存在しなくても成立するような内容になっていました
しかし、エピローグで明かされる監禁犯の正体に至るプロセスには、7つのエピソードで示されたワトソン力がしっかりと意味を持っています
最初の短編が発表されたのが2013年で、最後の短編が2019年であることを考えると、連作短編をスタートさせる前からのたくらみではないのかもしれません
だからこそ、なかなかの工夫だと感じ入りました