平石貴樹/松谷警部と三ノ輪の鏡 | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

平石貴樹さんの「松谷警部と三ノ輪の鏡(Water Hazard)」を読みました
 
松谷警部シリーズの第3作で、タイトルからわかるとおり今回のテーマはゴルフとなっており、章立てもいつもどおりきれいにゴルフ用語でまとめられています
 
内容としては、元プロゴルファーが自宅で後頭部をパターで殴られて絶命しているところを、元妻が発見します
 
被害者は女性にも金銭にも欲深いところがあり、元妻も浮気に耐えかねてかなり前に離婚して絶縁していたのですが、1人娘がゴルフを始めてプロを目指せそうなところまできたことから、最近はいろいろ相談する関係にまで戻っていたのです
 
この日も午後6時に被害者の自宅を訪ねることになっていたのですが、被害者から急に石井が訪ねて来ることになったから予定を遅らせてほしいと連絡されたために、午後8時くらいに訪ねたところ、被害者が死んでいたというのです
 
近所の人も、午後6時過ぎに「石井やめろ!」という被害者の大声を聞いていますし、被害者は床に「いしい」と読めるようなダイイングメッセージを残しているので、当初は石井なる人物の犯行とみられますが、もちろんそんなことはありません
 
前2作では、作中の探偵役である白石さんが捜査にあたって「動機は後回し」といっていただけあって、動機自体はいかにもフィクション的色彩の強いものにすぎませんでした
 
しかし、本作ではうってかわって、動機(犯行時における犯人の心の動き)が素晴らしかったです
 
プロゴルファーだった被害者の自宅には大きな鏡が設置されているのですが、そのことが本当にうまく生かされていました
 
また、本シリーズでは、これまで聞き違いや勘違いの取り扱いがとても巧みになされていたのですが、本作でもダイイングメッセージに対する犯人の勘違いは非常に優れていました
 
ダイイングメッセージ自体の物理トリック的工夫もさることながら、上記の心理的な工夫が重ねられていることによって、極めて非凡な印象を受けました
 
松谷警部シリーズも残すところはあと1作
 
全4作のシリーズものというと、ラストはどうしても例の展開が頭に浮かんでしまうのですが、本シリーズは果たして?
 
読むのがとても楽しみな気持ちが半分、あと1作しかないという残念な気持ちが半分ですね