米澤穂信さんの新作短編集「Iの悲劇」を読みました
主人公は、南はかま市の公務員をしている若い男性
複数の村が合併されて南はかま市が誕生した経緯もあって、二代目市長は先代市長の施策をことごとく否定し、自らの肝いりで住民が誰もいなくなった蓑石地区に新たな住民を募ります
そう、本作の「I」とは「Iターン」の「I」なのです
出世コースにいたはずの主人公は、やる気がまるで感じられない昼行灯みたいな課長と公務員らしくない新人女性しかいない明らかにハズレと思われる「甦り課」にまわされながらも、プロジェクトに懸命に取り組みます
しかし、新しい住民同士のトラブルが続いて、せっかく移住してきた住民は、すぐに次々と去っていきます
本作に収められた短編は、ラストを除いて住民同士の日常の謎を含んだトラブルとその解決を描いた内容となっているのですが、米澤さんの作品としてはそれほどパッとしない感じです
養殖していた鯉があっという間にいなくなってしまう話と毒キノコを狙った者だけに食べさせるマジシャンズセレクトの話はまあまあなのですが、米澤さんへの期待はどうしてもハードルが高くなるので・・・
必ず狙いがあるはずと思いながら読んでいたのですが、やはりラストに切れ味抜群の見事な伏線回収が!
皮肉極まりないラストのタイトルや都会で暮らす弟との問答がこの上なく苦い味に変わるのも米澤さんの真骨頂
さすがの業にとても満足しました!
![]() | Iの悲劇 1,650円 Amazon |