三津田信三さんの「魔偶の如き齎すもの」を読みました
刀城言耶シリーズの短編集です
既発表の3作は、いずれも「大胆なトリック」という点で共通していました
その中で個人的に好きなのは「妖服の如き切るもの」
坂道に沿ってABCDと並ぶ四軒の家のA家とD家で連続殺人が発生します
坂の上のA家で、被害者二人分の血液型が検出された凶器のカミソリが見つかったため、犯人はまずD家で被害者を殺害してから続いてA家で被害者を殺害したものと思われます
警察は動機からA家とD家の息子たちが連携して殺人を実行したものとにらみますが、坂の途中のB家とC家の住人が犯行時刻にずっと家の前で話をしており、A家とD家の息子たちが坂を上り下りしたところはみていないと断言します
二人はどうやって凶器を受け渡したのか?
A家とD家はもともと母屋と離れであったため、坂道に面していない裏手に電話線が引かれているという設定がうまい
それをリフトのようにして凶器を運んだのではないかという推理はすぐ浮かぶのですが、凶器の運搬が上から下ではなく下から上であるところがその推理を否定にかかります
実際のトリックはもっともっと大胆極まりないもので、非常に好みでした
なお、タイトル作は書下ろしで、三津田ファン向けの作品で、一度しか使えないネタを楽しめました
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