不倫の文化に大革命! | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

すでに大きく報道されていますが、本日最高裁第三小法廷がこれまでの不貞行為を巡る実務をひっくり返す革命的な判決を出しました

 

不貞行為が認定されれば、された側は当然配偶者とその相手に慰謝料を請求できます

 

それは今後も変わりません(1円も請求できなくなったというのは大いなる誤解です!)

 

しかし、不貞に関する慰謝料には以下の2種類があります

(1)不貞行為そのものに関する慰謝料

(2)その結果離婚するに至ったことにまで及ぶ慰謝料

 

これまでの実務では、不貞があっても離婚にまで至らなかった場合の慰謝料はやや低額となり、離婚した場合の慰謝料は高額となることを前提に、不貞行為に及んだ配偶者とその相手はどちらの場合であっても連帯して慰謝料を負担することとされてきました

 

これからは、上記(1)の場合にはこれまでどおりですが、(2)の場合には不貞の相手方は原則として(1)の部分を超えた慰謝料は負担しないということになります

 

たとえば、(1)不貞行為に及んだが離婚はしない場合の慰謝料が100万円であって、(2)同じシチュエーションで離婚までした場合の慰謝料が200万円であると仮定した場合、(1)では不貞をされた当事者は、今後も配偶者とその相手に合計で100万円を請求できます

 

一方から満額とってもいいし、半分ずつとってもよく、あとの帳尻は不貞をした二人の中で合わせることになります(一方から100万円回収した場合には、その者は不貞の相手に50万円を請求して帳尻を取る)

 

これに対して、離婚にまで至った場合、不貞された者は配偶者に対してはこれまでどおり200万円請求できますが、その不貞の相手方に対しては原則として100万円までしか請求できないことになったわけです

 

配偶者に対してはこれまでと同じ額を請求できるので表面的には問題ないわけですが、一般的には不貞の相手にたくさん請求してやりたいと考えるのが人情ですから、不倫の文化的には大革命といえるでしょう

 

なお、第三小法廷は5名の裁判官から構成されていますが、うち2名が女性です


あとは時効について大きな違いが生じます


不貞発覚から離婚に至るまでかなりの時間が経過する例は少なくないところ、これまでは離婚してから3年は不貞行為に及んだ配偶者の相手に対して問題なく慰謝料を請求できました


しかし、これからは不貞発覚から3年が経過すると、不貞行為に及んだ配偶者の相手からは時効が主張されうることになります


これまでは不貞行為と離婚との因果関係として争われていた部分が、時効で簡単に処理されうることになったわけですね