早坂吝さんの「アリス・ザ・ワンダーキラー」を読みました
「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」は、ミステリにおける「見立て」と相性が良いこともあって、多くの作品で設定が利用されています
本作もその1つなのですが、なかなかのデキでした
アリスという少女が、10歳の誕生日に名探偵の父から贈られたというバーチャルリアリティセットで推理ゲームに挑みます
「私の前に不思議はない」というモハメド・アリっぽい決め台詞で、アリスは、ルイス・キャロルの「アリス」のエピソードをうまく利用した5つの謎を解いていきます
どの謎も論理性が強く、よくできたパズルになっていますが、個人的に好みだったのは、ダイイングメッセージの話
ルイス・キャロルの「アリス」における「カラスと書き物机はなぜ似ているか?」というエピソードを利用して、床に血文字で以下のようなダイイングメッセージがあったというケースを設けます
R D
A E
V S
E K
N
容疑者は、アッシュ・イングリッシュ、ヴァイオレット・スミス、エメラルド・キッドマンの3人で、いずれもイニシャルが上記の血文字に含まれています
ここからどうやって1人に絞り込むのか? という謎です
全体を通じて、アリスが会話の一部分だけを聞くという設定がうまく使われているところや、本作のタイトル自体がダブルミーニングになっていたりするところも非常に好みでした
昔から好きななぞなぞに、「父親が交通事故にあったわが子を病院に連れて行ったところ、そこの医師が『なぜわが子がこんなことに!』と言いだした。なぜか?」というのがあります(今だとなぞなぞになりにくいかも)
本作は、それに少し似た構造も持っており、そこも良かったですね
早坂さんについては、今後の作品も楽しみです
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