ピエール・ルメートル/その女アレックス | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

ピエール・ルメートルさんの「その女アレックス」を読みました

名だたるミステリランキングで六冠に輝くとか、101ページ以降の展開は誰にも話さないでくださいなどという売り文句にちょっと惹かれて読み始めたのですが、いつまでたっても面白くならず、半分を過ぎるころからイヤな予感がしました

そして、読み終えた瞬間は、その予感が見事的中した気がしました

グロいところとか悲惨なところはよく書けてるものの、それに寄りかかりすぎているように思えましたし、最高に残酷な復讐ってなんだろうと考えたとき、本作のアイデアには自分が極めて高く評価した最近の前例があるからなあと感じてしまったのです

しかし、改めて発表された年を確認すると、私が前例と考えていた作品よりも、本作の原著の方が先であり、独自性に関する感想は撤回する必要がありました

また、読み終えてしばらくしてから、内容を最初から思い出してみると、冒頭で誘拐・監禁されたアレックスの生への執着や許された生の意味するところの本当の姿が浮かびあがり、切なさがじわじわと募ってきました

そこで、改めて第1部を読み返してみると、なるほど、とても巧く組み立てられているし、小説としてレベルの高い作品だとも思います

ミステリーとしての純粋な驚きやトリックの破天荒さのような点で派手さはないものの、トータルとしては十分満足です