委託契約と労働契約の差はどこですか?
今回は「委託契約と労働契約の差はどこですか?」を解説します。
「残業時間が多いので、委託契約で外注として仕事をしてもらいたい」というご要望が多くありますが、契約のタイトルを「業務委託契約」に変更すれば良い、ということではありません。
業務委託契約は雇用契約と異なり、「使用者」と「労働者」というような主従の関係にない独立した事業者間の契約であるということです。
では、雇用契約のポイントは何なのでしょうか?雇用契約における「労働者」であるか、契約の形式のいかんにかかわらず、実質的な「使用従属性」をもって判断しなければならないのです。
会社と従業員の契約に「使用従属性」が認められれば、契約のタイトルは別として「労働者」として労働法上の適用があるのです。
この「使用従属性」が認められやすくなる具体的な要素をみてみましょう。
〇仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由がない
〇業務遂行上の指揮監督の程度が強い
〇勤務場所・勤務時間が拘束されている
〇報酬の労務対償性がある
〇機械・器具が会社負担によって用意されている
〇報酬の額が一般従業員と同一である
〇就業規則・服務規律の適用がある
〇給与所得として源泉徴収されている
〇退職金制度、福利厚生制度の適用を受けることができる等
これらの項目に該当すればするほど「使用従属性」が認められ、契約が「業務委託」でも、労働者として判断される可能性が高くなるのです。
逆に言えば、上記の項目に該当しない場合は「使用従属性」が認められず、「業務委託」と判断されることになるのです。
これに関する裁判があります。
<岡地事件 東京地裁令和2年1月15日>
〇Aは商品先物取引業の外務員として、会社と「登録外務員雇用契約」を締結し勤務していた。
〇外務員が取り扱った委託者に関し、未収金が発生し、それが完済されなければ外務員が弁済しなければならなかった。
〇Aは契約が終了した時点で約397万円の保証積立金があり、未収金が約189万円あり、会社はこれを除いた金額を返還し
た。
〇Aはこれを受け、「契約は雇用契約と主張」し、未収金の約189万円の返還を求めて裁判を起こした。
そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。
〇Aの請求を棄却する(会社の主張が認められた)。Aは「委託契約」であり、雇用契約ではないので、労働者ではないとしたのです。
この裁判のポイントをみてみましょう。
歩合外務員の指揮監督について、組織体系もとられていなかった。勤務場所、勤務時間の拘束性もなかった。報酬の労務対償性も欠勤控除等もなく、売上に一部連動されていたので、労務対償性が強いとは評価できない。
しかし、契約書のタイトルが「登録外務員雇用契約書」となっていましたが、これは実態で判断されました。
このように労働契約か?業務委託か?は「契約の形式」だけで判断されず、「実態」で判断されるので注意が必要となります。