休職期間が満了後、復職できない場合の対応について | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

休職期間が満了後、復職できない場合の対応について

 

今回は「休職期間が満了後、復職できない場合の対応について」を解説します。

 

社員の方が休職していて、満了の期間が迫っている場合の対応についてのご相談は多いです。

 

特に、精神疾患の場合は判断が難しく、また、「再発の可能性が高い」ので主治医の診断のみで判断できない場合も多くあるのです。 

 

復職に関する労務管理で一番心配なことは、「復職後の精神疾患の再発のリスク」についてです。

 

うつ病などの精神疾患の症状が再発してしまうと、「職場の人間関係の悪化」「休職を繰り返すことによる業務への悪影響」「会社責任として労災請求される」「 不当解雇などでの訴訟リスク」など、様々なトラブルに発展することもあります。

 

もし、「休職期間満了しても、厳しい」となった場合は「退職」となるのです。

 

これに関する裁判があります。

 

<東京電力パワーグリッド事件 東京地裁 平成29年11月30日>

 

〇社員Aは技術系社員として入社した。

 

〇現場部署に配属されるも記憶定着度が低く、手順の判断も弱かった。

 

〇Aは異動となり、社外折衝が少ない部署となったのですが、業務手順が理解できず、仕事で納期に間に合わない等が発覚した。

 

〇Aは産業医と面談し、人前で緊張するのが気になるので、産業医のすすめでクリニックに通院するようになった。

 

〇Aは心身の状況が悪化し、半分位しか出勤できなくなり療養休暇取得後、休職となった。

 

〇Aは「リハビリプログラム」への通所を開始したが、出席率が復帰可能な数値に足りず、休職に至る過程への自己分析も不足し

ている等から復職可能な状態にないと判断される。

 

→産業医面談で、Aは休職の原因が「逆流性食道炎である」と説明し、精神疾患の認識が欠如している

 

〇Aは主治医より、就労可能との意見書及び診断書を提出し、復職を申し入れた。

 

〇会社のメンタル専門医はAの病識の欠如が甚だしく、振り返りが不十分として復職不可とする意見書を提出し、産業医も、復職不可とする意見書を提出した。

 

〇Aは休職期間満了で退職となったため裁判を起こした。

 

そして、裁判所は以下の判断をしたのです。

 

〇休職事由は消滅しておらず、退職は有効である(会社側の主張が通った)。

 

この裁判では「休職の事由が消滅したか否か?」がポイントとなります。

 

Aの健康状態について、休職不良の原因が消化器系の疾患ではなく、精神疾患であるにもかかわらず、対人関係のリハビリプログラムの状況が悪かったのか確認されています。

 

また、休職期間満了時においても、休職の原因は精神疾患ではなく消化器系の疾患であると、自己認識に固執し、休職の原因となった病識が欠如していました。

 

そのため、自己のストレスの対処法について、十分な考察ができていないと判断されたのです。

 

また、他の部署への異動も厳しいと判断されています。

 

復職について、主治医の判断と産業医の判断が分かれても会社が総合的医判断し、結論を出すことがポイントです。