定年後再雇用の給与についてご質問はありますか?
今回は「定年後再雇用の給与についてご質問はありますか?」を解説します。
正社員と非正規雇用労働者との労働条件の格差がいろいろな場面で問題となっています。
平成30年6月1日、最高裁で判断された長澤運輸事件では、定年前と定年後で同じ業務に従事している従業員の賃金減額が2割程度減額となった状態で、裁判では容認されています。
この判決後に「これが基準となりますか?」「もっと減額されているケースを知っていますが、違法ですか?」「定年前と後の給与水準の違いはどの程度認められるのですか?」等のご相談をお受けしており、現在も続いています。
確かに、定年後の働き方については個人毎に考え方も違い、一概に賃金だけの問題ではありません。
実際に定年後の再雇用契約について、契約の内容は双方の合意によって定められるのです。
だから、賃金が〇%ダウンだから合法、違法と言う話ではありません。
しかし、多くの社長から「何%ダウンなら法的にОKですか?」と質問をお受けします。
これに関する裁判があります。
<日本ビューホテル事件 東京地裁 平成30年11月21日>
〇社員Aは支配人となり、55歳で役職定年、60歳で定年退職となった。
〇Aは定年後再雇用として会社の有期嘱託社員となった(その後、賃金は段々と下がっていった)。
〇賃金は定年前の約50%となった。
〇Aは、有期労働契約である嘱託・臨時社員の賃金額と無期労働契約である定年退職前の正社員の賃金額との相違は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違であると主張した。
〇Aは労働契約法20条に違反するとして、会社に対し、不法行為による損害賠償請求として定年退職前後の賃金の差額相当額約688万円等の支払いを求めて、訴えを提起した。
そして、裁判所は以下の判断をしたのです。
〇Aの定年退職時の年俸の月額と嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給の月額との相違が不合理であると認めることはできない。
この裁判を詳しくみていきましょう。
労契法20条は、有期契約労働者と比較対照すべき無期契約労働者を限定しておらず、比較対照し、他の正社員の業務内容や賃金額等は、その他の事情として総合的に考慮するのが相当としたのです。
役職定年後かつ定年退職前のAの業務は、人事考課等に影響する 売上目標を課せられるという状況で営業活動業務に加え、非ラインの管理職として支配人等のラインの管理職を補佐する地位であった。
そして、顧客からのクレーム対応などの相応の責任を伴う業務もその内容となっていた。
一方で、定年退職後の業務は、営業活動業務のみに限定され、しかも売上目標が達成できない場合には人事考課等に影響するという人事上の負担が正社員よりも軽減されていたのです。
つまり、業務内容及びその責任の程度は大きく異なっていました。
さらに、託社員及び臨時社員については、配転の実績がなかったのです。
定年前後の賃金について、単に割合だけの問題ではなく、内容もポイントとなるのです。