残業手当の計算方法について | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

残業手当の計算方法について

今回は「残業手当の計算方法について」を解説します。

 

法定労働時間を超えたら、時間外割増賃金を支払わなければならないことは法律で定められております。

 

当たり前のことですが、これは労働基準法第37条に定められており、「何をいまさら」とお感じになるでしょう。

 

具体的な計算方法については、労働基準法施行規則19条で定められており、時間単価の計算方法を規定しています。

 

よって、年俸でも月給でも時間単価を計算して割増率を掛けて算出された割増賃金を支払わなければなりません。

 

また、基本給の他に役職手当等の名称で手当を支給されている場合も基本給にプラスして時間単価の計算に含めないといけません。

 

例えば、基本給32万円、役職手当5万円、家族手当3万円で、年間所定労働時間2,080時間(1日8時間、年間所定労働日数260時間)で計算してみましょう。

 

32万円(基本給)+5万円(役職手当)×12月÷2,080時間→2,134.6円(時間単価)

 

そして、残業時間が30時間とすると計算式は以下となります。

 

2,134.6円(時間単価)×30時間×1.25(割増率)→80,048円(残業手当総額)

 

労働基準法では、上記以上の割増賃金を支払わなければならないことになっているのです。

 

上記の計算で「家族手当」が算定の基礎となっていないのは労働基準法37条および同法施行規則21条は次の手当について時間単価の算定の基礎に算入しなくてもよいと規定されています。

 

ここで、上記の計算式通りに計算しないのか?とのご質問をお受けすることがあります。

 

しかし、あくまでも「労働基準法37条の規定で計算される額」以上の金額を支払えば、問題ないといえます。

 

これに関する裁判が以下です。

 

<国際自動車事件 最高裁 平成29年2月28日> 

 

〇会社は賃金規則上、形式的には時間外手当が支給されていた。

 

→発生した時間外手当分、歩合給を減額して合算しており実質的に時間外手当が支払われていないとされる。

 

→残業代がいくらになっても合計支払額が変わらない

 

〇同社運転手14名はこのような賃金体系は労基法に違反し無効であるとして提訴した。

 

〇1審、2審は労働基準法37条の趣旨に反し無効とし社員側が勝訴した。

 

そして、裁判は最高裁までいき、結論は以下となりました。

 

〇無効とまでは言えず審理不十分として差し戻した(会社の主張が通り、勝訴した)。

 

この裁判の判断は、「最高裁は残業分を歩合給から控除する通常の賃金分の算定方法は 無効とまでは言えない」としたのです。

 

そして、「通常の賃金と割増部分を明確に判別できるか?否か」「できる場合に労働基準法所定の割増額を下回らないか」この点がポイントとなっています。

 

つまり、時間外割増賃金を計算するにあたり、労働基準法37条の計算された額を下回らない額の割増賃金を支払えば、「違法ではない」としたのです。