就業規則は周知しないと、効力が発生しません
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今回は「就業規則は周知しないと、効力が発生しません」を解説します。
皆さんの会社は就業規則を社員に周知していますか。
就業規則を作成しても、社員に周知していないと、その効果は法的には発揮されないのです。
特に、労働条件の処遇や賃金に関しては、周知し、説明をすることが重要です。
よくあるトラブルとして「残業は基本給に含まれている」、「残業代は営業手当として支払っている」などが多いです。
そして、従業員側からは「聞いていない」、「こじつけだ・・・」という声を実際に聞いたことがあります。
そして、会社側は「説明したはずだ・・・」となり、平行線をたどりトラブルへと発展していくのです。
賃金規定、労働契約書に記載があり、本人のサインでもあれば 話は変わってくるのですが、まずは、規定、契約書に書き込むことが大切です。
これに関する裁判があります。
<PMKメディカルラボ事件 東京地裁 平成30年4月18日>
○エステに転籍した社員が未払い残業を求めた
→賃金規定で、特殊手当23時間分、技術手当7時間分等と定めが記載されていた
○転籍した社員は労働組合を通じて、「固定残業の話は聞いていない」として支払いを求めた
○会社側は支払いに応じなかったため、社員は裁判所に訴えた
そして、裁判所は以下の判断をしたのです。
○賃金規定が周知されていない
○入社説明会で交付した書面に「手当が時間外労働に対する対価」として支給される記載が一切なかった
○各店舗に閲覧できる就業規則等がなかった
→本社から各店に郵送可能な承諾書はあった
○固定残業制度の周知がないため制度は無効
→会社側の主張は退けられた
この裁判を詳しくみてみましょう。
本件の争点は
○時間外労働時間の対価として、特殊勤務手当、技術手当、役職手当を支払うことが労働契約の内容として認められるか?
○この固定残業制度は有効か?
という点です。
そして、判決のポイントとして労働契約の内容として「認められるか?」という点は以下で認められないと判断されたのです。
○時間外労働の対価が各種手当とする記載が一切ないし、説明もなかった
○労働条件に関する書面が一切作成されていない
○労働契約の内容として合意されていたことを裏付ける証拠が存在しない
本件、就業規則は「時間外労働時間の対価」「固定残業制度は有効」と2つの条件をクリアしており、制度としては認められると判断されています。
しかし、そもそもの契約内容が「認められない」ということなので、制度が問題なくても、その運用されることへの説明、承認など何もない状態なので、これはそもそも無効という判断となったのです。