復職の判断基準が難しい・・・
今回は「復職の判断基準が難しい・・・」を解説します。
復職に関しては、ケガ、病気で判断に迷うことがあります。
このような場合、どのような対応をしたらよいか?ご相談を受けることがあります。
病気やケガが治る時期がわからないと休職期間満了で退職となる可能性が高くなります。
そこで、診断書を何とかして「復職可能」と記載してもらうように主治医に頼むことはよくあります。
これに関する裁判があります。
<名港陸運事件 名古屋地裁 平成30年1月31日>
〇社員Aはトレーラードライバーと定めて期間を定めずに雇用され労務を提供してきた。
〇Aは、病院で胃癌を宣告され、胃の全摘出手術を受けた。
〇会社はAに対し、私傷病休職に付することを通知し、休職命令を発した。
〇Aは病院に検査目的で入院した後、症状に特に変化がなかったため、退院した。
〇主治医は、診断書を作成し、それには病名を「胃癌術後」とし、「向後22日間安静加療を要す。以降仕事に復帰可能です」と記載されていた。
〇そして、Aは取締役と面談し、「産業医が休職満了時まで、復職できるといえば、休職命令を解除できる」といった。
〇これを受け、産業医は「術後1年も経過していれば、症状は安定しているので就労はできると思う」と取締役に述べた。
〇Aは労働組合を通じて会社に職場復帰の時期、所属部署、業務について説明するよう求めた書面を送付した。
〇会社は休職期間満了通知をAに送付した。
〇それには「復帰は不可能」と結論を出し、休職期間満了日をもって退職と通知した。
〇会社は「業務遂行可能性について医師が100%の保障まで、できない」として復帰不可を判断したのでAは本訴を行った。
そして、裁判所の判断が以下となったのです。
〇主治医の診断書(復職可能)は有力な資料となる
→主治医は「本人の強い希望で復職に沿って可能と記載」
〇主治医の診断書のみならず、産業医や会社の指定医等の再受診を命じなかった会社の対応は手続きの相当性を欠く。
〇休職事由は消滅していたと考えられる。
→会社側の主張が通らなかった
この事件では休職満了時にAが治癒していたか?が争点となりました。
治癒の根拠となるべき主治医の診断書がAの希望により作成されたとのことで、治癒している証明が「意図的」と考えられ、会社はそれで休職満了で退職という判断に踏み切りました。
しかし、実際は休職満了時前に治癒していると主治医も裁判で発言し、また、会社もAに対し、産業医や会社指定医の再受診命令も出さずに、そのまま休職期間満了で退職としてしまったのです。
会社は、従業員の休職期間について、満了となりそうな場合、本人とコミュニケーションを密にして、症状などの検証を徹底的に行うべきなのです。