正社員と契約社員で異なる休暇制度は問題ですか?
今回は「正社員と契約社員で異なる休暇制度は問題ですか?」を解説します。
働き方改革法、目玉の1つである「同一労働同一賃金」は大企業が2020年4月からですが、中小企業は2021年4月からの施行となりました。
しかし、正社員と契約社員とで「手当」「休暇」等に「差」がある場合で、裁判となると否定されてしまう可能性が高いのです。
「同一労働同一賃金にかかる労働条件、正社員と契約社員の処遇が異なる差を考えるのは先で問題ない」と思っている会社は危険です。
なぜなら、現在、このような条件差が問題となり、多くの裁判が起こっているのです。
法改正はしばらく先でも、訴えられたら即対応しないといけない状況が皆さんの会社でも可能性があるかもしれないのです。
参考となる裁判が以下です。
<日本郵便(佐賀)事件 福岡高裁 平成30年5月24日>
〇正社員と契約社員の労働条件の差が不当として裁判となった。
〇正社員と契約社員は勤務日数、勤務時間でほぼ同様であった。
〇就業規則は正社員用、契約社員用として別で運用されていた。
〇正社員は特別休暇(夏期、冬期)が認められていたが、契約社員は認められていなかった。
〇正社員と契約社員では基本給、各種手当の取り扱い相違があった。
〇第1審では、手当、特別休暇とも違法ではないと判断された。
→裁判は高裁まで進んだ
そして、高裁は以下の判断を下したのです。
〇特別休暇については不合理な相違である。
→第1審の判断を覆して、特別休暇の部分は違法と判断した
この裁判を詳しくみてみましょう。
夏期及び冬期休暇が、お盆や年末年始の慣習を背景にしたものであることに照らすと、休暇が正社員に対し定年までの長期にわたり会社に貢献するというインセンティブを与えることです。
そして、このような時期に同様に就労している正社員と契約社員との間で休暇の有無に相違があることについて、その職務内容等の違いを理由にその相違を説明することはできません。
契約社員は、正社員と異なりお盆や年末年始の期間が当然に勤務日となっているわけではなく、勤務日と指定されたとしても、期間中にその全てが正社員と同じ日数の勤務に従事するとは限りません。
ただし、休暇が設けられた趣旨を考えれば、契約社員もこの期間中の実際の勤務の有無や、平均的な勤務日数などの要件を付加した上で、一定割合の日数を付与するという方法も考えられます。
当該期間中に実際に勤務したにもかかわらず、正社員と異なり、特別休暇が得られないというのは不合理な相違と考えられます。
しかし、これだけでは不合理性を否定することはできないと考えらえます。
そして、契約社員が正社員と同程度の勤務日数、勤務時間で就労していたとので契約社員に対し、同程度の休暇を付与するのが、相当と考えられます。