賃金体系を変えて、減額するにはどうすれば良いでしょうか? | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

賃金体系を変えて、減額するにはどうすれば良いでしょうか?

今回は「賃金体系を変えて、減額するにはどうすれば良いでしょうか?」を解説します。

 

 

賃金に対するご相談は途絶えることはありません。

 

〇給料の仕組みを変えたい

 

〇手当を廃止したい

 

〇月給を下げたい

 

等のご相談をお受けすることがあります。

 

 

しかし、賃金を含む労働条件を会社側が勝手に下げることは「不利益変更」となり、簡単に認められないのです。

 

変更するのは「それなり」の合理性が必要となるのです。

 

ただし、賃金カットは何%まで、程度までなら可能かということに明確な基準があるわけではありません。

 

手がかりとなるのは、まず賃金カットの必要性がどれだけあるかということになるのです。

 

これに関する裁判があります。

 

<シオン学園事件 東京高裁 平成26年2月26日>

 

〇会社は自動車教習所を経営していた。

 

〇自動車教習業は構造的不況業種のため、賃金体系を変えて従業員の賃金を減額し、黒字化を目指すこととした。

 

→入所者数の減少、教習料の値下げ競争

 

〇会社と労働組合は賃金改定についての話し合いを持った。

 

→3年間で合計20回以上にわたり団体交渉を実施

 

〇給与規定を改定し、労働基準監督署に届け出て、賃金改定(減額)を実行した。

 

〇教習指導員らは、給与規定等の変更は「不利益変更」であり、無効を主張し、裁判となった。

 

そして、高裁の判断は以下となった。

 

〇平均約8.1%の賃金減額は、不利益の程度が小さいとは言えない。

 

〇自動車教習業は構造的不況業種である。 

 

〇減額後も県内の同業他社より会社は高額の賃金であった。

 

〇労働組合と団体交渉が3年間で計20回以上実施されていた。

 

〇規程等の変更で、従業員代表から意見なし。

 

〇変更についての合理性を認め、会社の主張が通った。

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

まず、減額の幅については「不利益の程度は小さいとはいえない」と判断したのですが、同業他社との比較で、減額後も他より高額としています(同業他社:23~26万円、減額後39万円)。

 

変更の必要性については、業種が後続的に不況としました。

 

これは、入所者数が平成14年度では約2000名超でしたが、平成21年度では約1500名であった。

 

そして、新規採用の抑制、社長の報酬、管理職の賃金等も減額しており、車両11台も売却等をしたのです(これでも赤字は解消せず)。

 

さらに、労働組合との団体交渉も3年間で20回以上重ねており、以上の事情から賃金減額の合理性ありと判断されたのです。

 

もし、賃金体系を見直し、その後、従業員の賃金を減額せざるを得ない場合、プロセスを守り改定を行ってください。

 

就業規則だけを見直して、賃金の減額が実行できるということはありません。